三島浩司 『ダイナミックフィギュア』 (早川書房)

ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ダイナミックフィギュア〈下〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ダイナミックフィギュア〈下〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

シキサイが桜吹雪の勇姿を見せつける。この瞬間、四国に春は上陸した。

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《今のあなたは神の近似。部分としてのアイドル》
《…………》
《いい? 大原則よ。これを守らなくては無作為に形を壊す自然になってしまうわ。あなたは神をさらに一段階進化させた神になるの。あなたの行為の先には、必ず調和が生まれなくてはならないわ。いいわね》
《心した。それで、神とはなんだ》
《悪を懲罰する存在。そして正義までをも懲罰することを許された唯一の存在。それが神よ》

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宇宙の彼方からやって来た渡来体カラスにより,STPF と呼ばれる特殊なリングが中間圏に形成された.続けてやってきた渡来体クラマとカラスとの宇宙戦争の最中,STPF の欠片が四国剣山へ墜落,その周辺にキッカイと呼ばれる存在が発生した.日本政府はキッカイ殲滅のため,二足歩行型特別攻撃機・ダイナミックフィギュアを開発,投入する.
ダイナミックフィギュアの従系パイロット,栂遊星を中心に描かれる「リアル・ロボットSF」.香川という一地方を舞台としていることもあって,導入部は「ガンパレ」に印象が近いかな.「概念」を学ぶ存在であるキッカイの殲滅作戦にはじまる物語は,混沌とした群像劇の様相を呈してゆく.正直あまり読みやすい話ではない.特に下巻では主語が分かりにくくどこに視点をおいて読んでいいのか,そもそも誰の物語なのか,分からなくなることもしばしばあった.しかし,いくつかの難点を差し置いてでも読まなければと思えるだけのパワーが立ち上っている.究極的忌避感と孤介時間,クラマとカラス,そして三機が揃えば世界を滅ぼすことができるというダイナミックフィギュア…….「すべてのアイデアを絞り出した」という著者の言葉に嘘はない.自分も読み落としている部分が多々ありそう.時間を置いていつか再読したい.