深見真 『ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック 2』 (ガガガ文庫)

「いい女だな、フランカは」
ソフィア少将が言った。馬首を並べて会話を交わす。
「僕にはすぎた恋人です」
「身分も違う。種族も違う。これから大変だぞ」
「なんとかします」
僕は力をこめて答えた。
「『なんとかする』か……」少将は、年の離れた親戚の子供を見守るように微笑んだ。「男の子はそうじゃなきゃ」

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大使館の駐在武官を務めていたリョウトに,新たな指令がくだされた.マルランダ王国に潜入し,独裁統治をする魔女こと女王フレデゴンドと主要な貴族の暗殺を目的とする非正規作戦(イレギュラー・オプス).作戦名は「ウイスキー・ハンティング」.
エルフ,ドワーフグリフォンなどのいる世界(どうやら現代文明の滅亡後に成立した新文明であるらしい)の「ミリタリファンタジー」.戦争や政治よりも,戦術を描くことに重きを置いている.ページの多くは,ニューマケドニア戦と,マルランダ王国戦という,ふたつの戦場で,リョウトたちがどのような行動を取り,どう勝利するか,に割かれる.それだけに,割と景気よく人死にが出る.主要キャラクターが直接手に掛けた人数で言えば,ライトノベル史上でもたぶん屈指.それでいて,物語に閉塞感がまったくないのが面白いところ.身分や種族違いの恋も前向きに考える(上記の引用部分)し,各々の戦士たちは持てる力を全力でぶつけあう.戦場とは,政治や謀略が影響を及ぼすことの出来ない,あくまで戦士たちのための居場所である,という,ある意味での理想を描いているとも言えるのかな.