森田季節 『ウタカイ』 (Yuri-Hime Novel)

ウタカイ (Yuri‐Hime Novel)

ウタカイ (Yuri‐Hime Novel)

この恋は大人のものじゃないから、問題だらけで間違いだらけだと思う。まわり道ならまだいいほうで、逆流したり、一種の自傷行為のようなものでさえあるかもしれない。それでも誠実さという点だけは負けない確信がある。不完全であるがゆえに私たちの恋は常に動き続け、熱を発し続ける。その熱が新たな運動を生み出して、私たちをより強いものに作り変えてくれる。
生まれ変わり続けるから、私たちの恋は永遠だ。

Amazon CAPTCHA

悪いこと繰り返してね君の罪許せる権利私だけある
永遠を作るとウソをついたから無間地獄で手をつなげてる

Amazon CAPTCHA

高校生一年生の登尾伊勢は歌人である.恋人でありライバルでもある朝良木鏡霞に勝利した伊勢は,歌聖高校の代表として全国短歌トーナメントである歌会に参加することになる.
周囲の環境を異質に変化させる「歌」を詠みあって戦う「歌会」を描いた百合小説.背徳感と爽やかさがうまいバランスで,なおかつ作者一流の変なユーモアもあって楽しくするする読めてしまう.歌人と歌は切り離せないもの,というスタンスは変わらないものの,主人公である伊勢の心持ちがくるくる変化するのに合わせるように,作中で「歌」が持つ意味もくるくる変わる.これがまさに少女の心持ちというか,目まぐるしくて翻弄される.歌会だけあって,物語中に次々と挿入される短歌も非常に良くて,否が応でも盛り上がる.読むぶんにはさらっと読めるのだけど,歌がダメだったらとたんに盛り下がっちゃうし,これは書くのが大変だったのではないかな.良いものでありました.