吉上亮 『パンツァークラウン フェイセズI』 (ハヤカワ文庫JA)

『それではゲームを始めましょう。ルールは簡単――、私を止めてください。都市の守護者として、人々を守る鋼鉄の英雄として。それができないなら……』
〈白奏〉=ピーターは白銀の指先で前方を指差した。
高速道路の向こう――天に伸び行く鋼と硝子の大樹といった〈ミハシラ〉と〈ベース・エール〉があった。
殺戮(ころ)します』

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イーヘヴン市.大災害から復興した東京は,すべての住人の行動履歴解析を行い,行動最適化を導く〈co-HAL〉によって商業空間に特化(ショッピングモーライゼーション)した都市に生まれ変わっていた.民間保安企業と契約し,世界中の戦地を巡っていた青年広江乗は,ある任務を帯びて三年ぶりに故郷であるイーヘヴンを訪れていた.
舞台は災害復興により大きく変貌した東京=ニューヘヴン市.主人公は〈英雄〉の役割を与えられ,漆黒の強化外骨格〈黒花〉(ブラックダリア)を身にまとう青年.ひとつの都市を舞台にした変身ヒーローものであり,ARを駆使した現代のサイバーパンクであり,記憶をなくした青年の贖罪と自分探しの旅でもあり.非常にごちゃっとしたイメージが詰め込まれており,率直に言ってあまり読みやすくないのはまあ仕方ないのだけど,現時点ではストーリーにもガジェットにもそれほど強く惹かれるポイントがないのだよなあ.とんがった部分がないというより,全体的に平均にとんがっていてどこを見たらいいのかよくわからん,みたいな.決して嫌いではないし,三ヶ月連続刊行三部作の第一弾だしということで,化ける要素は十二分にあるはず.とりあえずは追っていきたいところです.