小林泰三 『百舌鳥魔先生のアトリエ』 (角川ホラー文庫)

わたしは少しずつ真実が見えてきた。醜い不完全な姿をしているのは彼等ではなく、人間の方だったのだ。わたしは自分が人間でいることに耐えられなくなってくるのをどうすることもできなかった。

南極に現れた海百合&不定形生物対人間とロボット軍団の,無慈悲で皮肉の効いた戦い「ショグゴス」.頭を切断されながら生き続けた男を愛した女の狂気「首なし」「密やかな趣味」はよくあるスプラッタSF……かと思ったら最後の一行で(文字通り)すべてがひっくり返ったのには仰天した.戦火から日本の史跡を守ろうとしたアメリカ人博士が成し遂げたもの「朱雀の池」冥王星上で兵器として生み出される妖怪の狂宴「試作品三号」.「玩具修理者」を彷彿とさせる「百舌鳥魔先生のアトリエ」は表題作を飾るにふさわしい短篇.
ということで書き下ろし二篇を含む七篇のホラー短篇集.読んでる作品の方が少ないのでなんだけど,心の底から楽しかったと言える小林泰三は久しくなかった気がする.恐ろしくレベルの高い短篇集なのではないでしょうか.