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十七段雑記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017.3.24 (Fri)

北山猛邦 『ダンガンロンパ霧切5』 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 5 (星海社FICTIONS)

ダンガンロンパ霧切 5 (星海社FICTIONS)

通常、『アイアンメイデン』といえば、文字通り乙女の姿を模している。形状としては、洋梨にたとえられるだろうか。その中に人が入ると、頭からつま先まで、全身がすっぽり鉄の乙女に包まれることになる。

けれど目の前のそれは、乙女の首から上の部分が存在しなかった。

つまり首なしの『アイアンメイデン』だ

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同時進行する12の密室殺人.犯罪被害者救済委員会による「密室十二宮」の解決編.ついこないだ「ニューダンガンロンパV3」をクリアしたばかりなのでよくわかるのだけど,ストーリーの方は全然関係ないものになっている.トリックの方は,ゲームにトリック協力で参加しているためか,わりとゲームに近いものになっている印象かな.まあ,新本格として好き勝手やっているのではないでしょうか.

2017.3.22 (Wed)

長谷敏司 『ストライクフォール』 (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

ストライクフォール (ガガガ文庫)

「これが宇宙か」

角度が変わったせいで、眼下に青い光が見えた。

大気が強い光をゆらめかせ、青い輪郭をぼやかしている。とてつもなく巨大なその球体のことを、彼らはみんなよく知っている。

「地球だ」

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《宇宙の王》を名乗る異邦人がもたらした万能の泥は,地球の歴史を大きく変えた.万能の道具を手にし,戦争を行う意味を失った人類は,擬似戦争としての競技,ストライクフォールをはじめる.

地球近傍を舞台に,ロボット競技のプロリーグにかける青春の物語.16歳でプロリーグデビューを控えた天才の弟と,一歩遅れを取って後を追う兄.読んだひとが揃って『タッチ』だと言ってたのだけど,確かに『タッチ』だった.タッチというかスペースタッチというか,ストレートな物語が長谷先生の独特の文体が妙にハマっている.宇宙でのスピード感やスケールだったり,はじめて軌道上から地球を見た主人公の視点だったり,SFとしての描写はさすが.眩しい.しかし,綺麗に話が終わっているので,ここからどう続けるのかが気になるところ.二巻も買ってあるのでゆっくり読ませていただきます.

2017.3.20 (Mon)

五月猫文 『かくて飛竜は涙を流す The Dragons' Tear』 (講談社ラノベ文庫)

「『惑星の声』ちゅうのは、そう、竜の声と同じ『波動』なんだけど、また違った特徴を持っている。なんというか、ものすごく大規模な雑音(ノイズ)、と言うのが良いかねぇ。この星のどこにいても混ざってくる雑音で、あたかも惑星自体が声を出し続けているようだ、ということでこの名前になった」

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帝国と連邦の間の戦争は終わった.帝国空軍のエースガンナーだったソウタ・カシワギは,連邦の竜騎兵を撃てなかった処分として除隊されることになった.船長と竜騎兵の少女シノに誘われたソウタは,ひとに害をなす竜を退治する〈ドラゴンスレイヤー〉の船に射手として同行することにする.

第5回講談社ラノベ文庫新人賞大賞受賞作.連邦と帝国,その二国に挟まれた公国の戦争と,この世界に存在する飛竜を描くファンタジー.導入のテキストが妙にぎこちなくて不安になったのだけど,飛竜の運用や,戦闘機と飛竜の連携といった描写に差し掛かると,俄然テキストが饒舌になってすらすら読めるようになる.オタクの早口を見ているようというとあれだけど,書きたいことがとてもはっきりしているのは好感が持てる.

資源というはっきりした目的のある戦争に飛竜を絡めた世界は画期的とは言わないけれど,とても丁寧に描いていると思う.竜神,〈黒の竜〉(ノワール),惑星の声といった神秘的なあれこれだったり,逆に飛竜のかわいさだったり.派手さはないけど,ひとつひとつをしっかり,とにかく堅実に描いている印象.それでいて読みやすく,なんだかんだと一気に読んでしまった.良い作品だったと思います.

2017.3.17 (Fri)

深沢仁 『英国幻視の少年たち4 ウィール・オブ・フォーチュン』 (ポプラ文庫ピュアフル)

「私がそのようなつまらない感情に囚われて人生の選択をするように思っていらっしゃるのなら、それは侮辱です。私は私の意志で、あなたの傍を自分の居場所にすることに決めました。あなたがなにを言おうと、変えるつもりはない」

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第二の目を持つ中学生鞠子.彼女はある老女との出会いからイギリスへの憧れをつのらせ,20歳で渡英することになる.リュートを奏でる青年グレンとの出会いから,鞠子は大きな運命の転変を迎える.

登場人物たちそれぞれの過去を掘り下げる,シリーズ第四巻.どこか性格の悪いキャラクターが多いシリーズなのだけど,その性格の悪さの原因が明らかになっていくのがやけに切ない.幽霊が見えてしまう少女,呪われた瞳を持つエルフ,いじめられっ子の孤児.居場所のない人物というところは共通していると言えるのかな(エルフもいるが).

基本的にとても静かな語りなのに,時々とても情熱的な表現が混ざるのが本当に良い.読むたびに同じことを言ってる気がするけど,独特の雰囲気を持っている.エルフの世界やエルフと人間社会のギャップの描き方もすごく面白いんだけど,これといった元ネタがあるようにも見えない.いろいろな伝承や創作物のミックスなのかな.先が楽しみな,良いシリーズになったと思います.

2017.3.15 (Wed)

岩沢藍 『キラプリおじさんと幼女先輩』 (電撃文庫)

「本当に、心配なんだよ……翔吾のこと。おとといの、あの屋上のあと、あたしも色々考えたんだけど……やっぱりわかんないよ……なんで、高校生で、男の子の翔吾が、女の子がやるゲームに夢中になってるの? ……おかしいよ」

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山口県下関市.この町で高校生の翔吾は女児向けアイドルゲーム「キラプリ」に情熱を燃やしていた.寂れた地方都市ゆえ他にプレイする人間も少なく,常にランキングでトップを走っていた翔吾だったが,ある日とつぜん現れた小学生,千鶴によってトップの座を奪われてしまう.

クラスメイトも幼なじみも顧みず,剣道を捨て女児向けゲームに没頭する高校生と,都会から越してきた少女の出会い.第23回電撃小説大賞銀賞.ストーリーの大枠はそれなりによく見るもの.この手の小説にはよくあることだけど,女児向けゲームを説明するのに,けっこうな地の文を使っていて,これがかなりテンポを損ねている.リアリティレベルがガタガタなのは意図的だろうからまだいい(北九州のひとは怒っていい)として,いちばん気になったのは主人公の情熱の源がいまいちわからないこと.これというポイントもないし,ちとつらいかなあ.