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十七段雑記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017.4.27 (Thu)

石川ノボロヲ 『紙透トオルの汚れなき世界』 (講談社ラノベ文庫)

「願いを叶える代わりに、その願い以上の災いをもたらす――それが世間で知られているところの夢の木だけど、実際はそうじゃない。本物の夢の木は、災いをもたらしたりはしないんだ。夢の木はね、人の願いを叶える際、その人の本当の願望を実現させてしまうのさ

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夢の木は,なんでも夢を叶えてくれる代わりに,願いを越える大きな不幸をもたらすという.「変革委員会」の目的は,この街にあるという夢の木を使い,汚れなき世界を創造すること.

第4回講談社ラノベ文庫新人賞,大賞受賞作.いくらライトノベルとはいえ主人公がモテすぎではないかと思ってたら,実はリトくんは主人公でもありヒロインでもあるというあとがきを読んでなんとなく納得した.汚れなき世界の創造というテーマの割にはけれん味が足りない気がするのと,結局のところ続編を読まないとわからないことが多すぎるのが気になるかなあ.悪くはないけど,続きが気になるかと言うと微妙かもしれない.

2017.4.20 (Thu)

枯野瑛 『終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? #3』 (スニーカー文庫)

「救ってくれなんて、誰も言ってないのに」

――誰に聞かせるためのものでもなかったはずの、その一言。

それを受けて、フェオドールもまた、誰に届けるつもりもない言葉を、つぶやき返す。

「そんなことすら言葉にしないからめんどくさいんだよ、君たちは」

終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03 (角川スニーカー文庫) | 枯野 瑛, ue |本 | 通販 | Amazon

あれから10日が過ぎた.ひとりの少女が消え,ひとりの少女が意識を失うことで,〈獣〉を撃退したという事実は極秘事項とされたまま,街は少しずつ終わりを迎えようとしていた.フェオドールは長年の計画の実行を開始する.

先輩にあこがれていた少女は,もがいてもがいて,いつの間にか追いついていた.義兄の遺志を継ぐことを誓っていた少年の前に,少女が立ちはだかる.静かに,それでいて大きな転回を迎えるシリーズ三巻.そのわりには静かというか,もっというと地味な巻ではあるのだけど,大きな災いを経て,出会ったときとは別の立場に立つティアットとフェオドールがとても良い.それぞれ真正面からぶつかりつつ,揃って成長していく姿を率直に描いているのが本当に積み重ねになっていると思う.

2017.4.18 (Tue)

野々上大三郎 『棘道の英獣譚』 (ダッシュエックス文庫)

「ごめん、大丈夫、ありがとう」

ライザーは彼女の気遣いが嬉しくて、同時に少し寂しかった。

生身を捨て続けた身体では、少女の体温を感じ取ることができなかったのだ。

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世界を飲み込まんと拡大を続ける自然異産《棘の森》.超常への対策を使命とする組織,混沌狩りにとともに森に入った青年ライザー・ゲフォンは,仲間をかばい獣に襲われ意識を失う.目覚めた彼の右腕は樹木と化していた.

妹のため,森で出会った少女のため,世界を脅かす怪物を倒さんとする青年の孤独な鍛錬の日々を描く.第3回集英社ライトノベル新人賞,特別賞受賞作.樹木の右腕と龍の仮面を身に着け,徐々に人間ではなくなっていく主人公と,暴威を振るう世界樹《イルマンシル》のある種のライバル関係だったり,失って,手に入れて,戦ってと,一巻完結の少年漫画のような,キレのいい作品だと思う.逆に言うと,余計なものを削ぎ落としている感じもあるかな.努力と友情と勝利をすべて盛り込み,「頂きを目指すには努力しかない」という思想を,ちょっとやり過ぎなくらいにノリノリで書いているのが良いと思う.

2017.4.13 (Thu)

紙城境介 『遊者戦記 #君とリアルを取り戻すRPG』 (ダッシュエックス文庫)

「……張って、あったのか…………! 最初の最初に……伏線が、もう……!!」

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ぼっちゲーマーのリオは,後輩のサクラから世界初のVRMMORPG,PfC(ポストファンタジー・ストラグル)に誘われる.リアルとバーチャル,ARを組み合わせたまったく新しいゲームにのめり込むリオとサクラはたちまちトッププレイヤーに躍り出る.だが,ファンタジーと現実,ふたつの世界の関係にはある真実が隠されていた.

正義感や責任感を持った勇者ではなく,誰よりも「面白いこと」に貪欲な遊者こそが世界を救う.『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』(感想)に次ぐ作者の2作目.相変わらず,京都の作家らしい意地の悪さ(偏見)が見え隠れしている.舞台も京都だし.いろいろな意味で「ウィッチハント・カーテンコール」の変奏に見えるけど,ポジティブなメッセージが全開なのは読んでいて気持ちがいい.

現実,ゲーム,ARを組み合わせたゲーム小説であり,1500年前の世界を描いたファンタジー小説であるものを,ミステリの手法を使って話を進めるところも,「ウィッチハント・カーテンコール」に共通しているのかな.細かい仕掛けにもそれぞれ意味があり,すべてが解決するカタルシスがとても良かったと思う.それを台詞で言っちゃうのが新本格ミステリ的なところでもある,のかな? 届くべきところに届いてないように思えるし,もうちょっと読まれるといいなと思いました.

2017.4.10 (Mon)

阿部藍樹 『白翼のポラリス』 (講談社ラノベ文庫)

「商人のこころ構えのない者は、鉄火場に立てば商人ではなくなってしまうということだよ。私はいつだって、自分は商人でありたいと思っているがね。君はどうだ?」

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はるかな昔に大地のほぼすべてが海に没した世界.人々は,自走能力のない巨大な船上に都市国家を作って暮らしていた.少年シエル・ミグラテルは,父の遺品である水上機ポラリスに乗り,荷運びの“スワロー”を営んでいた.

海と空だけの世界で飛行機乗りの少年は少女と出会い,ふたつの国に起こる戦争を止めようとする.第6回講談社ラノベ文庫新人賞佳作受賞作.物語自体はヤングアダルト小説のようなファンタジーで,オーソドックスなボーイ・ミーツ・ガール.皮肉ではなく,純粋な物語だと思う.雄大さを十分に感じることのできる世界はとても良いと思う.しかし,細かい設定というか原理というか,突き詰めていない部分が多いのは気になる.特に「バイオコンパス」の曖昧さと,やたらあっさりと説明される「永久機関エンジン」には首を傾げた.SF好きでなければ気にならないところなのかなあ.