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十七段雑記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017.5.24 (Wed)

周藤蓮 『賭博師は祈らない』 (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

賭博師は祈らない (電撃文庫)

僅か四文字を書くのが重たく感じる。

「良い言葉だぞ、これは。多分帝都で一番多く使われている言葉だ。永遠になくならないだろうし、覚えておけばどこでも使える」


(中略)


『斯くあれかし』(Amen)、だ」

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18世紀末のロンドン.賭博師として身を立てていたラザルス・“ペニー”・カインドは,ひょんなことから奴隷の少女,リーラを買うことになる.ラザルスは,喉を焼かれて声を出せず,読み書きすらできない褐色の少女を仕方なくメイドとして扱うことにする.

勝たず負けずをモットーとする賭博師と,言葉を話せない奴隷の少女のいっときの日々.第23回電撃小説大賞金賞受賞作.なかなか心を開かない少女と,「どうでもいい」が口癖の男が徐々に打ち解ける.クライマックスは,少女を救うため,チョコレートハウスでのヴァンテアン(ブラックジャック)対決.お約束の展開ではあるけど手を抜かずに描いており,とても熱い.

18世紀後半のロンドンという舞台を活かして,トリビアルなうんちくを好き勝手に解説付きで挟み込んでいるのがいちいち楽しい.コーヒーハウス,ロンドン塔ロンドンにおける古着の流通とメイド服の発祥,近代ボクシングの興りなどなど.作者の好きなこととかオタク性が存分に発揮されていてとても良いし,個人的には本筋以上に印象に残った.森薫をはじめて読んだときを思い出した.良い作品だったと思います.

2017.5.22 (Mon)

酒井田寛太郎 『ジャナ研の憂鬱な事件簿』 (ガガガ文庫)

しかし、状況は変わった。すでに第二週号の発刊は叶わない。我々の記事がついぞ読者の手に渡らなかったことは誠に残念ではあるが、事情を鑑みればやむを得ないだろう。沈黙もまた、一つのジャーナリズムだ。

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100年の伝統を誇る海新高校ジャーナリズム研究会,通称「ジャナ研」.唯一の部員である工藤啓介は,他人から好かれず嫌われずをモットーに,無難な高校生活を望んでいた.ところがある日,琥珀色の瞳を持つ先輩・白鳥真冬と出会うことで,彼はいくつもの事件に巻き込まれることになる.

残されたのは「Good Bye, Bloody Demon」という謎の言葉.第11回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作は,ガガガ文庫より創元推理文庫や角川文庫が似合いそうな正統派の青春ミステリ.ストーリーにはそれほど尖ったところはないと思うのだけど,その代わりというか,日常の描写は厚くなっている.キャラクターの心の機微だったり,ジャナ研の100年の伝統や,横浜を中心とした学園生活の描写は本当に丁寧.「真実なんて綺麗なものじゃない」という,ある意味ありふれた言葉にもしっかりした重みが出るというもの.そして何より,ヒロインで先輩でお嬢様である白鳥さんがとても可愛らしいのが素晴らしいことだと思うのですよ.身も蓋もないことを言ってしまうと,『氷菓』とか好きなひとは読んでみるといいかもしれない.

2017.5.21 (Sun)

シルヴァン・ヌーヴェル/佐田千織訳 『巨神計画』 (創元SF文庫)

――整理させてくれ。きみは現職の大統領に地球上のすべての国の上空を侵犯することを許可させて、その隅々まで放射性物質を撒くことができるようにさせたいというんだな。すべては巨大な地球外生命体のロボットのパーツが見つかるのを期待してのことだと。それで全部か?

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ひとりの少女が偶然見つけた,イリジウム製の巨大な手.それは,6000年前に何者かが地球に残していった人型巨大ロボットのパーツだった.ある人物の指揮のもと,全地球に散らばったパーツの回収プロジェクトが始まる.

地球にバラバラに埋められた6000年前の超兵器を,国際関係のもとで発掘し,組み上げ,操縦できるまで持っていく.「グレンダイザー」がアイデアのもとになったというロボットSF.読んだひとによっていろいろあるだろうけど,個人的には「のび太と鉄人兵団」を思い出した(鏡面世界は偉大なアイデアだと思いを新たにした).大半がインタビュー形式で進むので読みやすいし,同時に叙述ミステリのような不穏な空気までかもし出すことにも成功していると思う.ロボットの全貌が明らかになるにつれ,不穏さや登場人物の情緒不安定さが増していく一方で,カタルシスがかなり少なめなのはちょっと息苦しかった.実は三部作の一作目らしいので,とりあえず二作目の訳が出るのをお待ちしております.

2017.5.19 (Fri)

あざの耕平(GoRA) 『K R:B』 (講談社BOX)

K R:B (講談社BOX)

K R:B (講談社BOX)

「なあ、宗像。俺は、お前が、気にくわねえ」

「奇遇ですね、周防。まったくの同意見です」

「ひねり潰してやるよ」

「八つ裂きにして差し上げましょう」

「泣きっ面が、楽しみでならねえ」

「這いつくばる姿が、実に待ち遠しい」

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鎮目町で勢力を拡げる赤の王・周防尊.《セプター4》を掌握して秩序を司る青の王・宗像礼司.ふたりの王の邂逅が街に災厄をもたらす.

水と油の哲学を持つふたりが出会い,殴り合う.何冊か出ている『K』のノベライズの一冊.アニメの前日譚になるのかな.ストレートに言えば『スクライド』みたいな.自分のように原作を見ていなくてもわかるシンプルさ.と言っても,ストーリー自体にはならではの特徴もそれほどない.どちらかと言うとアニメのファン向けなのかな.

2017.5.12 (Fri)

神世希 『未来方程式 ―fate equation―』 (講談社BOX)

未来方程式-fate equation- (講談社BOX)

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「セカイの未来を護るため――」


最悪、初音未来は殺さなければならない。

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予知能力を持つ少女,初音未来.連続絞殺事件と秋葉原爆破事件を的中させた彼女をアキバ署と探偵が追う.

『神戯 ―DEBUG PROGRAM― Operation Phantom Proof』(感想),『DEUSLAYER』(感想)との三部作になるのかな.予言とタイムスリップ,セカイといった部分はけれん味が効いてて面白い.ただ,それ以外の部分が長くてなかなかダレる.前二作の内容をほぼ忘れているせいかもしれないけど,けれん味の密度がぜんぜん足りない.嫌いじゃないけど,こんなに厚くする必要もなかったのではという気はした.