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kananaka日和

2009-12-23

雪ぶどうのマリアージュ。

 きのこと果物の美味い秋が過ぎ、季節は山眠る師走。本来この季節は、ジャム師にとって骨休めの時期である*1。次の本格始動の目安は、値を下げた苺、寒さが緩んでボケ始めた林檎が出回る晩冬〜早春。大量のジャム作りに備え、季節を問わず土鍋が登場する我が家でも、そろそろ土鍋が土鍋本来の調理器具に復職できる季節となったわけだ。


 そんなある日の昼休み、<カモ(またの名を本ブログの影の功労者・果樹園農家の後継氏*2。)>が<ネギ>を背負ってやって来た――もとい、いらっしゃった。


 「冬ぶどうがあるんだっけぇ*3。―――要る?」

 「要る!」


 いつものごとく、二つ返事で商談は成立。相手も心得たもので、すかさず<ネギ>を差し出て寄こす。いちいち喜びと驚きを隠さない(隠せない)私の反応が、最近彼の娯楽と化しているんだそうだが、そんなモンはジロジロ観察せんでヨロシイ(汗) いそいそ包みを覗き込んでみると、暗紫色に輝く立派な房が3つ横たわっていた。


 で、「冬ぶどう」って何よ、というのが今日のお話。




f:id:kananaka:20091222231546j:image 当地で「冬ぶどう」または「雪ぶどう」と呼ばれるこの果実、正式名称を「スチューベン」という。

 ニューヨークの農業試験場で誕生した生粋の外来種であり、日本へやってきたのは、時をさかのぼること1952年。温暖で乾燥した気候を好む通常品種と異なり、ふるさとと同じ冷涼な気候がお好みという変り種。

 そのため、現在国内で生産されるスチューベンの8割は津軽地方*4で生産されている。

 この残る2割の、さらにほんの微微たる一翼を狙い、数年前、試験的に数本の苗木を導入したのが、前出の<カモ>師なのである。

 葡萄といえば、8月の種なし葡萄「デラウェア」に始まり、9月頃より出回る「キャンベル」「ナイアガラ」と続き、国産葡萄が姿を消す10月中旬から翌年2月頃までが、真打ち「スチューベン」の独壇場となる。粒の大きさは「巨峰」より小さく、「デラウェア」よりは大きい中粒種。その中に、小さな種が2つ3つ入っているため、昨今人気の食べやすいタイプの葡萄とは到底言えない。「騙されたと思って、噛まずに(種ごと)飲め」というのが、<カモ>師からのアドバイス*5


 騙されるつもりもないが、さっそく頂いてみる。皮ごと食せる「ナガノパープルと異なり、さすがに果皮はしっかりとしている。そのまま口に放り込み、前歯と舌先で果肉をしごき出す。・・・甘い! 生葡萄にして、すでにシロップ漬けされていたかと見紛うような、トロリとした果汁と甘い香りが口中に広がる。粒は「キャンベル」に似ているが、食べてみれば違いは一目瞭然。甘さのレベルが違うのだ。


 それもそのはず、「スチューベン」の糖度はおよそ22度前後。参考までにちょっと調べてみたが、同じ葡萄族代表「巨峰」の糖度が18度前後、当地産「市田柿」の糖度が17度、同じく当地産「サンふじ」りんごが糖度13度前後、贈答品に選ばれる最高級メロンで15度前後、そして果物の王様「ドリアン」の糖度が、「スチューベン」と同程度の22度前後となる。この濃厚な甘さの理由は、国産葡萄の甘味成分のほとんどが「果糖」と「ブドウ糖」で構成されるのに対し、「スチューベン」にはそれ以外に「ショ糖」が大量に含まれる点にある。この高い糖度が頑丈な表皮に守られることで、長期の貯蔵に耐えられるのも同果の魅力である。実際、忙しさにかまけ、当家のキッチン(平均気温0〜4度)で2週間弱放置していたが、劣化は認められなかった。土地柄・季節柄のせいもあるが、これは足が早い普通の葡萄ではありえない事態である。




 あまりの美味さにそのままチュパチュパ食してしまいたい誘惑に駆られつ、しぶしぶ鍋を取りだすことにする。かろうじて本能の囁きに耐えたのは、毎回自分が提供した作物がどんな加工を施されて戻ってくるか心待ちにしている<カモ>師…ではなく、そのご家族の笑顔が頭によぎってしまったせいである^^;



■ぶどうの美味しさ直球勝負 -雪ぶどう100%生ジュース-


▽食材一覧


f:id:kananaka:20091222231601j:imageスチューベン2房(1.2kg)

グラニュー糖(160g)

無農薬レモン(1.5個)


▽レシピ


01葡萄を洗って水気をきり、房から外す。f:id:kananaka:20091222231602j:image
02f:id:kananaka:20091222231603j:image砂糖を加えて少し置き、火にかける。
03おたまで押して、水分を出しながら20分ほど炊く。f:id:kananaka:20091222231604j:image
04f:id:kananaka:20091222231605j:image葡萄の潰れ具合が芳しくなかったので、途中からマッシャーを使用。

ガーデンハックルベリージャム作成の際の応用也。
05炊いている間に、即席濾し器を作る。
ボールの上に裏ごし器を重ね、固く絞ったさらしの布を敷く。
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06f:id:kananaka:20091222231607j:image[04]で炊いた葡萄を[05]で作成した濾し器に移し、自然に果汁が落ちるのを一晩待つ。
急いでいるときは、鍋の中で十分に実を潰し果汁を出し切った上で4時間程度で終りにしてもよい。

このとき、無理に上から押し潰したり、絞ったりすると、果汁が濁ってしまうので注意。
07自然に滴り落ちた果汁をホーロー鍋に移す。f:id:kananaka:20091222231608j:image
08f:id:kananaka:20091222231609j:imageレモン汁を加え、再度炊いてゆく。
09沸騰させないよう注意しながら5分間火を入れ、煮沸消毒した瓶に詰める。

搾りかすは、引き続きジャム作りに使うので、捨てないように!
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f:id:kananaka:20091222231611j:image出来上がり。紫の色と芳醇な香りがすばらしい。

ひと口含めば、市販の葡萄ジュースとレベルが違うのがわかるはず。

冷蔵庫で保管し、早めに飲み切りましょう。

倍程度の氷水または炭酸水で希釈して頂く。リキュールで割って、カクテルグラスで楽しむのもオツ。

▽備考


 一般的な葡萄ジュースのレシピでは、あらかじめ水を足したうえで煮出すが、このレシピでは砂糖の浸透圧で沁みだした純粋ぶどう果汁100%のみで作るため、出来高は少なくともトロリと濃厚なジュースに仕上がる。なお、水を加えないレシピのもう一つメリットは、お砂糖の量を半分程度に抑えられる点。経済的にもお得なのだ。


 今回はスチューベンを使ったが、紫色の葡萄ならどの種類でも可。美しい発色のために、できるだけ皮の色が濃い品種のぶどうを使うとよい。なお、甘味の強いぶどう(スチューベン、巨峰、ピオーネなど)を使うときは砂糖の量を減らすか、レモン汁の量を増やすこと。今回は1.5個分のレモンを使っているが、キャンベルやベリーAなどで作るなら0.5個程度で十分かと思われる。


 基本「のんべ」の巣窟と化している我が家だが、時にお酒を飲めないお客様(運転者やお子様含む)がいらしたとき、このジュースをノンアルコールカクテルにして提供し、大変喜ばれている。


 ちなみに、このスチューベンの100%生ジュースは通販でも売っている。値段にして、一瓶千円と少しといったところか。



■ルージュの艶めき -雪ぶどうジャム-


▽食材一覧

スチューベン300g(1/2房)、葡萄ジュースの搾りかす463g(全量)

水(200cc)、グラニュー糖(150g)、無農薬レモン(1.5個)、赤ワイン(適量)なくても可


注:ここでは葡萄ジュースの搾りかすに既に砂糖が含まれているため、投入する砂糖は控えめに。
砂糖の総量が、生葡萄と搾りかすの合計の50〜70%程度になるよう調整する。

また、今回は甘味の強い品種を使用しているため、レモンの量をやや増やしている。


▽レシピ


01新たに追加する葡萄を洗って水気をきり、房から外す。

房から外れた葡萄の実は、濡れて漆黒に輝くジュエリーのよう。
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02f:id:kananaka:20091222231549j:image炊いた時に果汁をたっぷり出すため、手または木べらで軽く潰しておく。
03取り分けておいた、ジュースの搾りかす登場。f:id:kananaka:20091222231550j:image
04f:id:kananaka:20091222231551j:imageホーロー鍋に入れ、ジュースの搾りかすと水を加えて中火で加熱。

葡萄を潰しながら15分ほど炊いてゆく。
このとき、搾りかすにすでに砂糖が入っているので、焦がさないように気をつけること。
05この程度まで炊けば、火を止める。f:id:kananaka:20091222231552j:image
06f:id:kananaka:20091222231553j:imageメザルと木べらを使って、種と皮を取り除く。

ジュースの時と違い、それほど細かい目のものでなくて可。
07[06]でジューシー&ぷるぷるだった果肉も、裏ごしすれば、ここまでスカスカに。残るのは繊維と種のみ。

コレ、簡単そうに書いていますが、ここでの作業の緻密さが出来高に如実に反映するため、他のジャムに比べるとかなり骨が折れます^^;

ときどき休みながら、作業することをお勧めします。
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08f:id:kananaka:20091222231555j:imageこした汁と果肉を鍋に戻して加熱し、再度炊いてゆく。
09グラニュー糖とレモン汁を加え、焦がさないよう木べらで混ぜながらとろりとなるまで煮詰める。

なお、他の果実ジャムに比べ、グラニュー糖投入のタイミングが遅いのは、葡萄のようにペクチンが少ない果実の場合、果汁をしっかり煮つめたうえで砂糖を加えないと、とろみがゆるい仕上がりになってしまうためである。
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10f:id:kananaka:20091222231557j:image我が家では、ここで香りづけの赤ワインを投入(省略可)。

ジャムは火からおろすと冷えて固まるので、あまり煮詰め過ぎないこと。
11熱いうちに、煮沸消毒済みの保存瓶に入れ、再度沸騰したお湯に漬けて15分。これで脱気完了。

小ぶりのジャム瓶に2.5個分のジャムが取れた。
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f:id:kananaka:20091222231559j:imageヨーグルトやアイスクリームのソースは勿論、焼き菓子のフィリングにもお勧め。
パンにのばせば、ルージュのカンヴァスに。f:id:kananaka:20091222231600j:image


▽備考


 果実ジャムにアルコールを加えるレシピは日本ではまだそれほど普及していない*6が、一度知ると病みつきになる。これまで作った中で秀逸だったのは、オレンジマーマレード+ウィスキー、アンズジャム+白ワイン、ベリー系ジャム+赤ワインのマリアージュ(組合せ)。ときどきバニラビーンズをアクセントに加えることも。


 アルコールを加えることで、せっかくの果実の香りが飛ぶのではないかと不安になるかもしれないが、これがどうして、却って果実本来の風味が引き立ち、食感も見た目もワンランク上に変えてしまうのだから驚きだ。たとえばアンズ+白ワインの組合せでは、やわらかなテクスチャとなるため、ヨーグルトソースにぴったりの仕上がりになるし、今回のように赤ワインを差したジャムは、艶やかに光り輝く彩り効果が期待できる。また、ウィスキー入りオレンジマーマレードは、紅茶に落とすことでウィスキーの香りがふわりと立ち、ほっこり体も温まる極上のティータイムのお供になる。以前、このマーマレードの大瓶を職場の冷蔵庫に持ち込んで、使い方を説明の上「ご自由にどうぞ」と告げておいたところ、あっという間に完食されてしまい、憮然としたことがある^^; 最も大量に消費し(やがっ)たのがお酒を呑めない新入男子だったことからも、このリキュール入りジャムが上戸下戸の区別を問わないことは証明済である。


 なお、闇雲にアルコールを足せば良いというものでもなく、素材にぴったりのリキュール*7を見つけるところが調理者の腕の見せ所であり、果実とリキュールのマリアージュ(組合せ)研究は、我がライフワークともいえよう。


<あとがき>


 気づけば、日付も変って今日はクリスマスイブですね。なんのイベント性もないエントリになってしまって申し訳ないです(汗)

 ちなみにワタクシ、クリスマスも変らず山入りしています故(右画像は雪の下から顔を覗かせるキノコ。山眠る師走でも夕餉の食材は逞しく生きておるのです。)、ヒゲモジャのオッサンが乗ったトナカイでも見かけた折は、必ずや激撮し、エントリにするとお約束いたします^^;


 Big Christmas Hugs to ALL!!

Cheers, kanaka
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*1:狙うとすれば、柚子や花梨だろうか。実は先日、裏山にて野生の花梨の樹を見つけたため、ただ今せっせとツバをつけているところ。何に加工するかはただ今思案中である。いずれにしろ、近日中にまた木登りしなくちゃ…Σポキポキ(←指を鳴らす効果音)

*2:ただし、このカモは未だ喰ったことがない。見てくれがスマート過ぎて美味そうでないこともあるが、なにせ、彼は金の卵を産んでくれる大切なガチョウ故^^;

*3:「あるんだけど」という意味。

*4:同地は、ニューヨークのほぼ同緯度にあたる。

*5:果物の種が盲腸の原因というのは迷信ですので、ご安心を。

*6:私にジャム仕事の基礎を教えてくれたのは、仏人留学生である。彼女によると、巴里にはリキュール入りのジャムを売る小さなお店が沢山あるらしい。

*7:上では、単に赤ワインや白ワインと書いているが、産地やぶどうの種類などで出来が変る。