2010-10-17
ヌコにもマツタケ。
庭先でこぼれんばかりに咲き誇るキンモクセイの芳香が、秋の深まりを告げている。そういえば最近、澄み渡る秋の空を見ていない。理由は単純、頭上を木立に覆われたアカマツ林の中、筆者が足元ばかり見て歩いているせいである。
「花より団子」とはよく言ったもの、今年も山の手の我が家にキノコの季節がやってきた。盛夏を過ぎ、朝晩の最低気温が10度を下回り始めれば、山仲間たち(含・筆者)は一斉にそわそわ、「出るだろうか」「出たらしいぞ」の噂が飛び交い始める。何が「出た」かって?―――勿論、キノコの王様・マツタケである。
今年の夏は、気象庁もお墨付きの「異常気象」だった。七月の降水量こそ多かったものの、八月は連日の真夏日を記録。そして、肝心のキノコの生育に影響を及ぼす降水量は平年の三分の一程度しかなかった。近年稀に見るマツタケの凶作年となった昨年と比して、決して楽観できる状況ではない。
ところが待ちかねたシーズンが来てみれば、昨年と山の様子がまったく違うことに驚かされることになる。まず、キノコの絶対数が多い。そして昨年はお目にかかれなかったキノコが其処彼処で群生している。それらが連日、持て余すほど手に入るのだ。おかげで我が家の夕食は、連日の天然キノコづくしメニューである。あるときは主役として、あるときは脇役として、和洋中の別なく。あまりの天然モノの豊作ぶりに、活躍の座を譲らざるを得なかった市販の定番キノコたち(マイタケ、シメジ、エリンギ等)が、使い切れないまま冷蔵室で溶けてゆく…(生産者の方、ずびばせん…汗)
まだキノコ採り初心者の筆者、わずか一年にして自分の“キノコ眼力”が飛躍的に向上したかと、当初は能天気に喜んでいた。しかし、どうもそうではないらしい^^; 諸先輩に連れられ山に入れば、相変わらず圧倒的なまでのキノコ発見&同定能力の差を見せつけられる。南郷師匠が木立の中で啼くトリさんを、聴こえて来た声と方角、その習性を頼りに瞬時に見つけ出す*1のと同じで、キノコを見つけるのにも、彼らとの間にはまだまだ圧倒的な経験値の差がある。にもかかわらず、筆者のような初心者の目につきやすい場所にまでコロニーが進出し、採り残しが次の収穫へ結びつき、引きを切らない。それほどに今年はキノコの当り年と見える。
これまでのとらねこさんのきのこエントリでも既にご紹介済のものが多いとは思うが、筆者の記録を兼ねて幾つかの獲物をご紹介したい。
まずは常食キノコシリーズ。
![]() | サクラシメジ 「秋の桜」といえば秋桜(コスモス)だが、こちらは秋の桜菌?^^; ワイン色の美しいキノコで、人気の獲物。歯ごたえとコクのある味わいが特徴で、炒め物、汁ものと応用範囲が広い。 我が家では、下で紹介のウラベニホテイシメジと共にすき焼きでも使用した。 |
| ウラベニホテイシメジ 当地でイッポンシメジと呼ばれる、プリプリとした歯ごたえが魅力のキノコ。汁ものやホイル焼きで頂くと美味しい。 昨年は一本も見つけられなかったが、今年は大豊作。 | ![]() |
![]() | ムラサキアブラシメジモドキ 藤色の美しいキノコで、薄暗い林内でも目につく。 歯ごたえ・舌ざわり共に良いクセのないキノコ。 我が家では汁もの、パスタの具にもご登場願った。 |
| ハナビラニカワタケ くすんだ淡褐色または赤褐色のキノコで、クニュクニュとした食感が魅力。 | ![]() |
![]() | キンタケ キシメジとも呼ばれるレモン色のキノコ。 歯切れがよく、良い出汁が出るため、味噌汁や煮物に重宝する。 |
こちらは、貴重な獲物なので別枠でご紹介。
さて、冒頭の「出たらしいぞ」の噂が、「出たぞ」に変ったのは、神無月に入ってから。発見者は、最有望株と思われていたキノコ名人で鳴らす上司ではなく、当ブログの食材供給者として大変貢献頂いている果樹園農家の同僚であった。高齢による身体的ハンディ(膝が悪い)のため、連日の山入りが難しい名人上司が地団駄踏んで悔しがったことは言うまでもなく、マツタケ発見の噂はあっという間にクチコミで広まり、職場のOBまで駈けつける始末。余談だが、その上司、あまりに悔しかったようで、その日のうちに膝の水を抜いてもらい、翌朝には早速筆者を従えて山入りしている。結果は、無情にも空振りに終わったのだけれど^^;
そして、第一報から三日後の本日―――つ…ついに、出逢ってしまいましたッ! しかも一対一のご対面(つまり、ノーギャラリー=独り占めというシチュエーション)!!!
マツタケ(Tricholoma matsutake(S.Ito et Imai) Sing.)キシメジ科キシメジ属
![]() | ![]() |
| 草葉の蔭から、こにゃにゃちゎ! | このエリア内に合計6本のマツタケが隠れています。 落ち葉を片づけてみましたが、見分けられるでしょうか?^^; |
![]() | 一般的に筆者のような素人がマツタケを見つけるのが難しいのは、里山が荒れて林床環境の富栄養化が進み、マツタケの生育に適さなくなったこと、マツクイムシによる松枯れ、猛暑や少雨による天候不順による収穫量減少だけでなく、整備の行き届かない里山では、同キノコの環状コロニー(「シロ」と呼ばれる。)が落葉に埋もれて見つけにくい点にある。 上左画像中央部分、地面が白く変色しているのが判るだろうか。 これがマツタケの「シロ」である。 |
とはいえ、数日前から邂逅の予兆は確実にあった。
![]() | ![]() |
まずはマツタケ山の定番キノコ「ホウキタケ(左画像)」、それから「シロ」の近辺に頻出する「クロカワ(右画像)」(当地の呼び方で、別名「ウシベッタ」)と呼ばれるキノコと、今秋は幾度も顔を合わせていたからだ。その周辺を集中的に探索し続けた結果が、本命との逢瀬に繋がったと言える。
次回も迷わず来られるよう付近の地形をしっかり記憶し、一度にすべて採取せず、残りはそっと落ち葉の下に隠しておく。もちろん次に来たとき、彼らが待っていてくれる保証はない。マツタケ発見の噂を聞きつけた近隣住人が連日山入りしているため、あまり期待はしないことにする。自ら進んで場所を教えることはないものの、山の恵みは筆者だけのものでない、地域皆のものである。
下は、第一次収穫。
続いて、数日置いてからの第二次収穫。採取場所は殆ど同じ場所。
前回見つけたのが、かなりしっかりした「シロ」だったため期待していたのだが、果たしてわずか数日の間に更に増殖してくれていた。
画面上部に一部、ウラベニホテイシメジとジコボウが混じっている。
菌類に全く関心のない相棒*2を前に黙々と孤独に頂くのもつまらないので、自宅へ持ち帰る一部を除き、残りは給湯室で同僚に振舞うことに。調理担当は、毎度のごとく筆者の任務*3。当ブログでは洋食レシピの紹介エントリが多い筆者だが、今回は正統の和食で供することにした。
とびきり形の良さそうな精鋭は、東京在住の今は亡き恩師のお連れ合いS夫人へ宅送することに。当地で生まれ育ち、山の事情をよく知る彼女にも、これほどの豊作は珍しいと大変喜んで頂く。願わくば、N先生とご夫婦揃って舌鼓を打って頂きたかった。
ところで、「ネコに小判」とばかり思っていた、コナユキとマツタケの初対面。大して期待せず一本差しだしてみたところ、彼が想定外の大興奮状態に陥り、収拾がつかなくなりまして^^;
![]() | ![]() |
最後にはマツタケに抱きついて、匂いを堪能しておりました。この調子で訓練を積めば、<トリュフ豚>ならぬ<マツタケ猫>として、山で活躍してくれるようになる……かもしれません^^;

























