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2010年04月20日

自己分析はするな-就活序盤の理想的な過ごし方を提案

結論

いわゆる就活を始めたての段階で「自己分析」「業界分析」「人脈作り」をするのは時間の浪費なのでしなくてよい。早くから就活をするのであれば、最初は経済と企業を分析するツールを一通り学び、次に1〜2日/1業界のハイペースで研究した後で、とにかく多くの社会人さんと食事をすることを推奨する。進む早期化に伴って長丁場となった就活では、付け焼刃の対策でなく、じっくり勉強した奴が勝つ


本文

この間、渋谷での用事ついでに、@SHUKATSU_witter主催の「2012卒向け就活スタートアップセミナー」を見てきました。早くも2012年就活生が30人以上集まっていて、良いスタートアップイベントだったと思います。しかし、どうしても違和感を感じる部分が一つあったので、それについて日記を書くことにしました。


※あらかじめ言っておきますが、就活バリューさんを個別に批判する意図は一切ありません。多くの、というよりほとんどの就活団体/就活本が、就活バリューさんと同じことを言っており、もし就活言論界隈みたいなものがあったとしたら僕が少数派です。


就活のスタートアップについて考えるために、まず、皆さんが「そろそろ就活を始めよう」と思い立ったとしましょう。きっと、「就活を始めよう。でも、まずは何をすればいいのか?」という疑問を持つのではないかと思います。この質問に対し、多くの就活本やセミナーは、「まずは自己分析と業界分析からだ」「この時期はとりあえず自己分析」「とにかくセミナーに参加して就活友達を作ろう」などと教えます。しかし、僕はこれらのアドバイスがおかしい、あるいは極めて非効率なのではないかと思っていますし、自分では「自己分析」も「業界分析」もほとんどやったことがありません。情報を交換し合う就活友達もほとんどいませんでした。この記事ではそのようなフワフワしたアドバイスでなく、就活の序盤に何を行うべきかについて、もう少し具体的な指針を提供していきたいと思います。



まず、自己分析について検討します。自己分析とは何を目的として行うのでしょうか?就活の文脈で語られた場合には、おそらくESや面接での質問に答えるためでしょう。例えばESを書くときに「あなたの強みと、それを発揮して成果を出した経験について教えてください(全角400文字以内)」という質問を与えられたとします。恐らく全ての人はこの質問に答えるために、以下のようなプロセスを踏むと思います。

1.まず、自分が行ってきた主な経験(部活、課外活動、研究…)の中で企業にアピールできるもの、すなわち困難であったり、他の学生がやっていなそうな経験を選び、

2.そこから、それを行うのに必要そうだと自分が感じる資質(粘り強さ、前向きな思考、努力…)を探し出して、自分の強みと認識し、

3.「私の強みは〜です。大学○年生の時、〜」というような文章ないしストーリーを組み立てる

この過程の中で、「自分の強み」が発見、あるいは定義されました。この意味で「自己」というのは始めからあるものではなく、ESでの質問があってはじめて現れる(人に納得してもらえるよう、自分の経験から帰納的に探される/作られる)ものです。それも多分に脚色された形で。この作業を自己分析と呼ぶのであれば、ESや面接の質問が与えられない状態から漠然と自己分析をしても、非常に効率が悪いでしょう。「志望動機」や「強み/弱み」などの必ず聞かれる問いの答えを考える時間が各1h/月づつ位あるのはよいと思いますが、例えば「4月〜5月は自己分析」のような形で大量の時間を使うのは、就活をやった気分ないし徒労感だけが残る浪費です。いくら分析したところで、始めからないものはないってば。

「自己分析」というのは「自分探し」と同じで、言葉が一人歩きしている気がします。僕が思うに、ESや面接を通過するために必要なのは、質問に合わせて自分の経験を棚おろしし、ストーリーを構築し、それをしっかりとした日本語で伝えること、ただそれだけです。最初(春〜夏)は、与えられたESの質問一つ一つを真剣に考えて答えるだけでよい。選考を何度も受け、様々な業界の人と実際に話してはじめて、自分のキャリア観(将来何をしたいか)や、「内定するために、企業にプレゼンしたい自分のイメージ」がぼんやりと定まってくると思いますので、自己分析的な作業はそれからで十分です。

僕の場合内定を貰ったのが12月で、そのような作業を始めたのは外資コンサルの個人面接が始まった11月頃でしょうか。ありもしない「自己」を、「分析」とか言いつつ後付けでデコレーションして正当化する作業に何ヶ月も割く暇があったら、社員さんとたくさんランチすべきです。



次に業界分析について。ダラダラとセミナーに出席したり業界本を読んで貴重な時間を浪費している人が多いように感じますが、これもあまり意味がないか非常に効率が悪い方法です。所詮我々学生の知識と想像力でわかることなんてたかが知れているので、失礼にならない程度の業界知識を自力で獲得(1〜2日でできる)した後、その業界で働いている人にどんどん会って質問をぶつけるのが一番の勉強法でしょう。僕が以下で業界分析の方法について書く時も、全て「あくまで分析は学生レベルでできる単純なものであり、分析の後でわからないことや出てきた疑問はどんどん社員さんに聞く」ということを前提としています。セミナーをとっかかりとして使ったり、特に興味がある分野について業界の人が書いたやや専門的な本(就活用の業界本ではなく)を読むのはいいと思いますが。

僕の場合について言えば、そのように業界の概要を数日で集中的に勉強→インターンで出会った社員さんに質問をぶつけまくるという方法で業界の雰囲気を掴んでいったので、業界本も読んでないし、セミナーにも行ってないし(1回だけ様子見で行ったけど)、OB訪問もしていませんでした。たまたま受けたのが外資系証券業界と外資系コンサル業界だけだったのでインターンで事足りましたが、もしもっとたくさんの業界を受けていたとしたら、短期集中で勉強→公式非公式両方のOB訪問+インターンで質問という形を取ったと思います。



また、他に就活の序盤でやると良いと言われていることで、他に「就活友達を作る」というのもありますが、就活ってサークル活動や仕事と違って基本孤独な個人ワークなので、別に必要ありません。余力があれば気分転換にするといいですが、特に時間が足りない時期にわざわざセミナーに通ってオトモダチ作りをするかは完全に趣味の範囲です。一応情報の漏れがないか相互に確認するために、大学ないしインターンで出会った優秀な友達数人がいればよいでしょう。僕の場合、各所で会った顔見知りやインターン友達は100人単位でいますが、メリットを与えあうような就活友達は3人位でした。十分。(ただし内定後の現在、時間があるのでせっせと外交活動中)



自己分析もしなくていい。業界分析もしなくていい。友達も作らなくてよい。では、せっかく4月からやる気を出してしまった2012年就活生は、ESの募集が始まるまでの約2ヵ月間何をすればいいのでしょうか。そりゃー、今こそ勉強すべき時でしょう。時間あるんだから。会計やマーケティングといった経営学の基礎や、経済の基礎、情報を読み解くための技術を本で学びましょう。個別業界の状況でなく、全ての業界に通用する、考えるための枠組みを知りましょう。それによって、業界分析が本当に必要になった時に業界の概要をつかむ分析がハイペースでできるようになりますし、社会人の方と会えば質問が泉のように湧き出るようになります。ギターが存在しなければギターの曲が生まれないように、考える道具を持ってはじめて良い疑問・質問が生まれます。時間がある人は、就活マニュアルの付け焼刃に頼らずに王道を行きましょう。ここでは、その後の就活で業界に関わらず役立つ基礎知識と、それを勉強するための入門書をご紹介します。

※オススメ本はkanedoが本屋で小一時間歩き回って選びました…足がつかれたお(´・ω・)



ブログが学ぶことを推奨する分野とそれぞれの推薦図書は、以下の5つです。順に紹介します。

1.会計

2.ファイナンス

3.マーケティング/経営戦略

4.経済経済学の理論というより、新聞を読むための基礎)

5.クリティカル・リーディング

世界一わかりやすい会計の授業

コーポレート・ファイナンス入門 (日経文庫)

わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)



推薦図書は5冊全部合わせると6500円くらい。結構高いですが、飲み会を2回断れば捻出できる額ですね。意欲ある就活生は、このうちの一冊二冊でも(できれば全部)読んでください。オススメの読む順番は、クリティカル・リーディング→経済→会計→マーケティング/経営戦略→ファイナンス。これらの本を夏休み前に熟読してマスターすることで、絶対に6500円分以上の便益があることを保証します。



会計

これから大学に入学する新入生のために

http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100309/1268136348

前に上の記事でも述べましたが、企業の言語である会計を全く知らずに就職活動をするのは、日本語しかできないのに海外旅行して現地で結婚相手決めるようなもので、非常にリスキーです。会計のルールを知っていると、まず自分でも企業の財務諸表を読んで企業の現状や将来について考察することができます。もちろん目的は本職のアナリストのような高い水準の分析をすることではなく、「道具を使って自分で考える」というプロセスを癖にすることですが。また、会計を常識のように知っていると知らないとでは、日経新聞の記事をなんとなく眺めた時に得られる情報の量も異なってくるでしょう。

世界一わかりやすい会計の授業

世界一わかりやすい会計の授業

ブログの推薦図書はこれ。社会人向けの会計入門書はたくさんあるのですが、10冊くらい有名どころを読み比べた中では、初学者にはこれが一番わかりやすいだろうと感じました。「そもそも決算書って何すか?」という所から、簡単な財務諸表分析や損益分岐点分析の方法までをわかりやすく網羅しており、筆者のコラムも面白いです。



ファイナンス

ここで言うファイナンスとは「企業はどのようにして資金を調達し、利用し、再配分すべきか。投資家は、その投資のリスクとリターンをどう管理すべきか」という、財務上の意思決定と投資に関する理論です。これを学ぶことで、リスクとリターン、資本市場の役割、株式債券などの証券、企業の買収/合併(M&A)といったトピックに関する理解が深まります。特に金融業界を意識している人にとっては非常に重要ですし、他の業界にとっても資本政策やM&Aは無視できないものです。今のうちに大枠を学んでしまいましょう。

コーポレート・ファイナンス入門 (日経文庫)

コーポレート・ファイナンス入門 (日経文庫)

ファイナンスの基礎を網羅しているコンパクトな本はこれがオススメ。ただ、もしあなたが商学部生や経済学部生であったり、投資銀行業界が気になっている場合は、分厚くて高いですが以下の本をお薦めします。この分野では非常に有名な教科書で、これを読めば投資や企業金融に関する経済学者が書いた一般向け書籍は大体スラスラ読めると思います。

コーポレート ファイナンス(第8版) 上



マーケティング/経営戦略

この分野では、以下のような話題を扱います。

・ひとつの商品をどのような考えに基づいて企画し、販売していくか

・自社が扱う膨大なの製品の組み合わせを、どのように管理するか

・競合企業と比べて、自社を市場の中でどのように位置付けていくか

・業界の構造をどのように分析するか

ニュースを読み解くくらいの作業には必要ありませんが、選考だとGDやジョブで非常に役立ちますし、「経営者の視点」で考えてみることは、今後どこに行くとしても必要な作業でしょう。

わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)

わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)

これが非常に良い本です。製品戦略→事業戦略→全社戦略と、ミクロな部分からマクロな部分までを、基本的なコンセプトを論理的、明快に説明しています。就活でマーケティングや経営戦略について学ぶ上では、これ一冊あれば十分だと僕は思います。



経済の基礎知識

経済の基礎知識を身につける目的は、常にアップデートされる経済のニュースを理解し、それに対する自分の意見を形成するための道具を得ることです。「GDPって何だっけ?」「円高/円安って結局どういう影響があるの」「日銀って何してるところ?」という状況で経済を語ると必ずボロが出ますが、基本を押さえた上で考察を繰り返せば、新聞記事やアナリストの意見をリピートするだけの「消費者」でなく、自ら意見を発信する「生産者」になることができます。これは就活を別にしても知的に面白いので、ぜひ学び始めてみてください。ただし、それなりに説得力のある考察を行うためには、ここで紹介する書籍以外にも、自分で興味を持って様々な本を読む必要があります。ゆっくり学んでいきましょう。

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

カリスマ受験講師細野真宏の経済のニュースがよくわかる本 日本経済編

様々なところで紹介されている、言わずと知れた経済入門の名著。経済/経営系の学部でない人(及び、当該学部にいるが自信がない人)は必ず買って読むことを推奨します。経済の入門書を他に探す時には、この記事を参考にどうぞ。


クリティカル・リーディング

「付け焼き刃でなく、自分で考える就活」を始める際にどうしても覚えておく必要があるのは、世の中にはいい加減な分析が蔓延しているということです。個人のレベルはもちろん、日経新聞経済紙にもいい加減な分析やミスリーディングな統計調査が載ることはよくあります。これだけ玉石混合の情報があふれている中で、情報を批判的に読み、玉をよりわけるための技術を身につけていきましょう。以下の本が面白くかつ勉強になるので読むべし。

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

本書の論点は、次の五点に集約できる

1.世の中のいわゆる「社会調査」は過半数がゴミである

2.始末が悪いことに、ゴミは(引用されたり参考にされたりして)新たなゴミを生み、さらに増殖を続ける

3.ゴミが作られる理由はいろいろあり、調査のすべてのプロセスにわたる(いろいろと例示するつもりである)

4.ゴミを作らないための正しい方法論を学ぶ

5.ゴミを見分ける方法(リサーチ・リテラシー)を学ぶ



これらの分野について一通り学んだ後、あなたが自分で行う「業界分析」の効率は、飛躍的に向上していることでしょう。セミナーで教えてくれるような通りいっぺんの業界模様であれば、1業界あたり1〜2日家と図書館で調べるだけで学ぶことができるでしょう。その具体的な手順については、以下の記事の後半を参考にしてください(参考にならないと自分で言ってしまっているけど)

参考にならない日系就活講座

http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100108/1262936095



さて、本や記事から獲得できる情報だけでは、業界のリアルな状況を知ることは非常に難しいと僕は考えています。目指す業界について一通り学んだら、とにかくその業界の人と5人も10人も会って話をしましょう。方法は探せばいくらでもあります。座学で学んだ知識に生の情報(社員さんの話だけではなく、社員さんの性格や雰囲気といったものも重要)を合わせて初めて、業界『分析』と呼ぶに値する考察や、その業界に行くかどうかの後悔しない意思決定(自己分析)が可能になるのではないでしょうか。勿論最初からそのような所まで至らなくても(上でも言いましたが、僕は11月頃でようやくでした)ゴールを明確に意識することで、自ら全体的な効率と能力を向上させることができるでしょう。



あとがき

ここで僕が書いている就活の方法は、おそらく多くのセミナーや書籍で薦められている方法とだいぶ違うと思います。正直な所、それらよりもずっとしんどいはず。しかし、就活の本番までまだまだ時間があるのに既にスタート体勢を取った気が早くエネルギーのある人達なら、きっとこの水準の就活ができると信じて手加減なしで(自分も100%はできなかったものを求める)記事を書きました。実行するかしないか、どこまで実行するかは皆さんにお任せしますが、企業に入るための茶番でなく、価値あるものとしてその後の人生に残る王道の学習、王道の就活がしたいという方を、僕は応援します(´・ω・)




※備考:就活の早期化に関するかねどーのスタンス(別に読まなくてもよい)

就活の早期化を問題視する動きは年々強まっています。僕は、狭義の就活が早期化することについては中立です。確かに弊害も大きいですが、(就活くたばれデモの記事で書いたように)早くから動くことが個人や企業に合理的である以上この流れは仕方がないと思っており、また、いまだ有効な対案を考えられていません。きちんとした対案を出さずに「けしからん」と言って理想を語るのは僕の趣味でないし。社会に興味を持って色々と考えてみるという「広義の就活」を早くからやることの推奨と、そんな早くから動きだすなら長期的な勉強もできるんじゃね?というのが現時点での意見です。僕自身は「狭義の就活」=「選考」これだけだと考えているので、夏インターンに参加することは有意義ですが、夏インターンの選考が始まる6月くらいまでは自分のやりたいことだけやって過ごすのもよいと思います(僕がもし強くてニューゲームしたらそうする)。動かないと不安で仕方ない人については、どうせ動くなら付け焼刃の対策をするよりも、記事を一例として腰をすえた勉強をするといい、というスタンスですので。あしからず。