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2011/05/21

[]芦川いづみの代表作?

  • 日活青春グラフィティ 泣いて、笑って、突っ走れ!@ラピュタ阿佐ヶ谷
「青春を返せ」(1963年、日活)
監督井田探/原作赤城慧/脚本小山崎公朗/芦川いづみ/長門裕之/芦田伸介/田代みどり/高野由美/清水将夫/大滝秀治

タイトルがベタなので最初は躊躇したが、聞いたことがない芦川いづみ出演作だったため、観に行くことにした。結果的にこれが大正解だった。

小さな木工作業所をやっている長門・芦川兄弟。しかしある日殺人の容疑で長門が逮捕され、無実を主張しているにもかかわらず、強引な取り調べで自白を強要されてしまう。冤罪事件の代表的なパターンだろうか。

第一審死刑、控訴棄却により、弁護士大滝秀治は弁護を下りてしまう。そこで妹芦川いづみがみずから兄が無実であることを示す証拠集めに奔走する。ささやかな幸せを享受していたふつうの家族が一転して陥る地獄。兄の無実を信じて幾多の困難にもめげずに頑張る芯の強い女性、可憐だけども実は強靱な精神力を持つという女性を演じる芦川さんがいい。

男がメインの(とくにアクション路線になって)日活映画にあって、芦川さんは常に裕次郎らの相手役というイメージであるが、これほど彼女が中心になっている作品はあまりないのではあるまいか。芦川さんの代表作といえば、「硝子のジョニー 野獣のように見えて」を思い出すが、ラストの泣ける結末といい、これもそのなかに入れていい作品だと思う。

芦田伸介がいかにもこの人は芦川さんに救いの手をさしのべる人だろうという雰囲気たっぷりに登場する。「実はやり手弁護士だった…」という展開を予想し、その瞬間をドキドキしながら待っていたのだが、それは少し違った。でもそれなりに胸がスッとする「やつし」ではあった。

まだまだこんな隠れた佳品が古い映画には多そうで、どうれ、またしばらく古い日本映画浸りになろうか…、そんな気持ちにさせられる。

これを書いてから、長門裕之さんの訃報を知った。ショックである。あまりに芦川さんが素敵だったので、つい彼女中心でこの映画の感想を書いてしまったが、冤罪をこうむる長門さんの演技を観ながら、いつもうまいなあ、こういう役柄は抜群だ…と思っていたのである。この時期の日活作品を語るうえで長門さんの名前を外すことはできない。謹んでご冥福をお祈りします。

[]牛島憲之をなぜ知っていたのか

  • 開館三〇周年記念特別展 牛島憲之 至高なる静謐@渋谷区立松濤美術館

どこか美術館にでも行きたいなあと、展覧会情報をチェックしていたら、松濤美術館での「牛島憲之展」が目に飛びこんできた。その瞬間「行こう」と決断する。

ただ、牛島憲之という画家の名前を聞いても、作品が頭に浮かんでこない。松濤美術館のホームページを見ると、たしかにわたしの好きな傾向の絵であるので、名前を見て行こうという気になったその判断は間違っていなかったようだ。でも、牛島憲之という名前をわたしはいったい何で知ったのだろう。

日本の洋画家はたいがい洲之内徹さん経由なので、彼の著作をめくってみたけれど、どうもそうではなさそうだ。『SUMUS』5号(特集「洲之内徹 気まぐれ美術館」)にある『気まぐれ美術館』人名索引にも牛島の名前はない。

そうなると、堀江敏幸さんのエッセイくらいしか、あとは思いつかない。近代日本の洋画家が好きといっても、わたしの美術趣味は底が浅い。そんなに絵に関する本を読んでいるわけではないのだ。洲之内さんの本につづいて、堀江さんの本をめくってみる。

でもやはり牛島憲之の名前を見出せなかった。ネットで調べると、府中市美術館に彼の絵が寄贈されており、「牛島憲之記念館」として作品が常設展示されているという。府中市美術館には行ったことがないのだが、いずれ行きたいと思っていた美術館であった。このあたりに手がかりがありそうなものの、府中市美術館への興味も堀江敏幸さん経由のような気がして、やはりもう一度読み返すべきかと思い至る。

いずれにせよ、作品を見るにしくはなし。「至高なる静謐」という副題どおり、穏やかな静けさがただよう、緑を主体にした作品に眼が洗われた。永代橋や煙突・港など都市風景も描いているのだが、かなりデフォルメされたり、逆にシュールな要素が加わっていたりで、一筋縄ではいかない深みがある。焦点を意図的にずらしたような朧気な輪郭もいい。

岡鹿之助といい、長谷川潾二郎といい、この牛島憲之といい、「静謐」ということばが似合う画家に最近惹かれているようである。

yackyyacky 2011/05/28 02:10 私は府中は何度か行っているので、牛島記念館も見ています。海野弘さんが書いているかもしれないと思ってちょっと調べてみましたが、見つかりませんでした。東京国立近代美術館には収蔵されているみたいなので、その辺で(東京の風景をテーマにした展覧会があったような気がするのですが)ご覧になっているのかもしれませんね。

kanetakukanetaku 2011/05/29 09:59 やっきさん、コメントありがとうございます。たしかに海野さんルートということも考えられますね。『モダン都市東京』『東京風景史の人々』では少し前の世代ですが、そのような著作経由というのは盲点でした。貴重なお時間を奪ってしまい、失礼しました。展覧会経由というご指摘についても、図録など見かえしてみたいと思います。