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2012/01/27

[]ライン・シリーズ マジック1

  • よみがえる日本映画 vol.3新東宝篇@東京国立近代美術館フィルムセンター
「黒線地帯」(1960年、新東宝)
監督・脚本石井輝男/脚本宮川一郎/天知茂/三原葉子/三ツ矢歌子/細川俊夫/瀬戸麗子/矢代京子/魚住純子/鮎川浩/宗方祐二/大友純

今週はなぜか身体ががっくり疲れており、毎日帰るときには「重い身体を引きずって」という表現がぴったりなほど、ふらふらしながら家路についたものだった。

そういう一週間の最後の日、職場からフィルムセンターへ向かう足取りも重かったのだが、いざ映画を観て帰宅するときはそんな重さも忘れて、軽快に足を動かしているのだから不思議なものである。

石井輝男監督の「ライン・シリーズ」。これまでわたしは「セクシー地帯」(→2006/6/1条)と「黄線地帯」(→2006/9/1条)を観ている。どちらも面白い作品だったが、とくに「セクシー地帯」は良かった。

そんな印象もあったので、今回の「黒線地帯」も前々から楽しみにしていた。売春組織の実態を追うトップ屋の天知茂が睡眠薬で眠らされ、そのあいだに殺人事件の犯人に仕立てられるという巻き込まれ型のアクション・ミステリ。前半の展開はスピーディであり、三原葉子も好演している。相変わらず「ンフッ」といったため息や、人差し指を口にくわえるような媚態をふりまくのだが、それが嫌みにならない。また期せずして麻薬の運び屋になってしまう三ツ矢歌子の可愛いこと。わたしの知る三ツ矢さんは、すでに「お母さん女優」というイメージなのだが、こんなに可愛かったとは。

…と思っていたら後半ダレた。しかも幕切れが「これでいいの?」というオチなのでがっくり。切れ味の鋭いアクションが、二級のラブ・ロマンスに急転回してしまう。まあ、でもこれがご愛敬なのだろう。天知茂も軽快でさわやかな二枚目で、ときおり三原葉子の影響で二枚目半の仕草を見せるのもおかしい。

帰ってから、三原葉子を論じた鹿島茂さんの『甦る昭和脇役映画館』*1(講談社)をめくっていて驚いた。この本における三原葉子論では、「セクシー地帯」を絶賛していたことがいまなお強い印象に残っているのだが、その引き立て役として言及されていたのが「黒線地帯」だったのだ。

鹿島さんは三原葉子の鮮烈な印象をこう熱く語る。

この下着姿の三原葉子は、まさにグラマーという形容詞がピッタリの姿態で、胴もキュッとしまり、「悩殺」「お色気」という当時の文句にいささかも偽りはない。(221頁)

わたしもおなじシーンを観て、ほとんどおなじ感想をもった。三原葉子の抜群のスタイル(痩せすぎず適度に肉付きがいい)にうっとりしてしまう。

またラストについても、「このように、映画はまあまあ面白く、演出も撮影も冴えているのだが、いかにも最後がいけない」と、ラストの「ドヒャーと引っ繰り返りそうになる部分」を指摘している。たしかにそうなんだけれど、それはそれで愉しいから許そう。身体が軽くなったのが、そんな「ドヒャー」を許している第一の証拠である。

さて、これでライン・シリーズは、第一作の「白線秘密地帯」を残すのみとなった。DVDにもなっていないとのことだが、フィルムはまだあるのかしらん。いつか観ることができるだろうか。