第29回いるか句会

堀本裕樹公式ブログ |◆第29回いるか句会告知
第29回いるか句会・会場変更のお知らせ | 堀本裕樹オフィシャルサイト
 3月23日(土)、第29回いるか句会に参加。以下の5句を投句しました。


啓蟄や犬の散歩を待つ目つき
本塁に送球せしが春一番
春一番ギターの弦を張り替へて
花びらの付きしタイツの足の裏
さくら餅ふたつ買つたよ内緒だよ

藤谷治 『下北沢』

……「カフェ・オーディネール」を出た僕たちは何となく一番街を高校に向かって歩き、「悪童処(わるがきさろん)」の四つ角を左に折れて、滅法美味いと評判のクレープ屋さんを通りすぎ、井の頭線の踏切を渡ってコンビニの手前にある細い道に入った。井の頭線の駅と並行して延びている短い道で、階段を降りる手前に小田急線の線路を通り越す。
 このあたりの風景が桃子さんは、下北沢で一番好きだといった。
「狭くて、雑多で、でもどこか清潔で……。ここ、抜けるように空が高いでしょう。こういう街なのよ、下北沢って」


 藤谷治 『下北沢』 20

 2013年3月23日、小田急下北沢駅が地下化された。
 工事はまだまだ続くようだが、小田急線の踏切がなくなったことで、人の流れが大きく変わっていくのだろう。しかし、見慣れた街並みが一夜にして変貌を遂げるのは不思議なものである。
 上に引用した藤谷治 『下北沢』は、この街の大工事が始まる前の時代を描いた小説だ。芸術家、詩人、作家、俳優といったちょっと風変わりな職業の人たちが登場するのだが、僕がこの街で知り合った人たちもだいたいこんな感じの人が多いのである。(グダグダな話なんだけど、ラストでちょっと泣いた。)


 藤谷治さんは、僕が最近顔を出している「フィクショネス句会」の主宰である。書店「フィクショネス」をかまえ句会を始めてから、もう10年経つという。彼の下北沢歴はもっと長いのだろう。街の長老か生き字引みたいな存在なのかもしれない。
小田急線下北沢駅が見納め-明日から地下化、別れを告げる人の姿も - 下北沢経済新聞
下北沢 - 蟹亭奇譚
 小田急線地下化の前日、藤谷さんは Twitter で下北沢について何度もつぶやいていた。ほぼ同じ時刻に、僕は下北沢について俳句を詠んでいた。一時の感傷ではあるが、変わりゆく街の姿を写し取っておきたいと思ったのである。