感じない男ブログ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-01-20

[]『33個めの石―傷ついた現代のための哲学』という本を出します

33個めの石―傷ついた現代のための哲学 Amazon.co.jp

追記(2016年):角川文庫より文庫版が刊行されました。5本の新しいエッセイが追加されています

2月17日に、春秋社からエッセイ集を刊行しますしました。赦し、自殺、宗教、脳科学、監視社会、ジェンダー、右翼左翼など、現代的なテーマを素材にして、一般読者向けの密度の濃いエッセイを凝縮しました。エッセイ集というと、軽い語り口の文集というイメージがありますが、この本はそれに逆らって、見開き2ページの分量に、濃いスープのような文章を注ぎ込みました。哲学的な香りのする本となりました。ある業界紙に連載していたものを書き直したものが半分で、残りは書き下ろしですが、連載は一般的には誰も読んでいないと思われるので、実質的に全部書き下ろしという感じです。いま避けては通れないテーマばかりを考えました。ぜひ、書店で手にとってご覧ください。

現代は科学と金が物を言う時代である。その気になれば、美だって健康だって手に入る。けれど、それで人間は本当に幸せになったのだろうか? 引き返せない現実を前にして、いつのまにか傷ついてしまった私たちは、なにをめざせばよいのだろう? 自殺について。死刑問題。人の痛みを知るとは。脳科学と自然環境。宗教の功罪…。『無痛文明論』の著者が、自らを棚上げにせずひたすら考え、紡ぎ出した、魂のしずくのようなエッセイ。家族やともだち、大切な人と話したくなるテーマをもりこんだ「森岡流・倫理の教科書」。

以下、目次と、本文の一部紹介です。ひとつのテーマについて、4本のエッセイから成っています。1エッセイは見開き2ページ完結です。

目次

赦すということ 1・2・3・4

自殺について 1・2・3・4

33個めの石 1・2・3・4

恐怖を消す薬 1・2・3・4

脳と幸福 1・2・3・4

「人道的な」戦争 1・2・3・4

子どものいのち 1・2・3・4

人間と自然 1・2・3・4

パンドラの箱を開けるロボット 1・2・3・4

差別と偏見 1・2・3・4

英語帝国主義 1・2・3・4

ナショナリズム 1・2・3・4

監視カメラ 1・2・3・4

「君が代」と起立 1・2・3・4

男らしさ、女らしさ 1・2・3・4

おしゃれと化粧 1・2・3・4

中絶について 1・2・3・4

不老不死は幸せか 1・2・3・4

故郷 1・2・3・4

都市の本性 1・2・3・4

異邦人である私 1・2・3・4

加害と被害 1・2・3・4

哲学とは 1・2・3・4

エピローグ 33個めの石、ふたたび

タイトルの「33個めの石」とは、以前にこのブログでも書いたことのあるバージニア大学乱射事件のことです。

本文の冒頭の2本です。

 赦すということ・1


 死刑制度を廃止すべきかどうかは、まさに現代の難問中の難問であると言えるだろう。EU(欧州連合)は、加盟国の条件として、死刑制度の廃止を要求している。これに対して、日本、中国などは死刑制度を存続させていて、廃止の機運も高まってはいない。

 私自身は、死刑制度に反対である。いくら極悪非道の犯罪者であったとしても、その人間の命を強制的に断絶させることは、許されるべきではないと考えている。日本には終身刑の制度がないので、終身刑の新設と引き替えに、死刑を廃止するのがいちばんよいと思うのだ。

 と同時に、自分の家族や愛する人を無残に殺されたとき、その犯人を自分の手で殺してやりたいという気持ちもまた、私は充分に理解できる。たとえそれが違法であったとしても、この手で犯罪者の命を奪い、復讐してやりたいという思いは、ありありと分かる。だから、もし自分の手で殺せないのだったら、国家の名のもとに殺してほしい、という被害者家族の気持ちもよく分かるのである。

 私は、死刑を肯定する感情を自分の中に持ち合わせている。そのうえで、理性の力でもって死刑を廃止すべきだと考えているわけなのだ。日本では死刑反対論者は少数派のようだが、みなさんはどうお考えだろうか。ひょっとしてみなさんは、死刑反対論者とは人間の感情をまったく理解しない頭でっかちの冷血人間なのだ、と思ってはいないだろうか。

 どんな犯罪者であろうと、この世にうけた命だけはまっとうしてほしいと私は願っている。死刑反対論の背後には、このような人間じみた感情や願いも存在しているのである。


 赦すということ・2


 2006年10月2日、米国のペンシルベニア州で、銃を持った男が小学校に侵入し、女子児童10人を殺傷して、みずからも自殺するという事件が起きた。この小学校は、アーミッシュというキリスト教再洗礼派の人々が住む地域にあり、被害者の児童たちも、アーミッシュの家庭の子どもたちであった。

 アーミッシュは、電気やテレビなどの現代文明の成果を拒否し、自給自足のつましい生活を貫いていることで有名である。争いごとを好まず、徹底した平和主義が実現されている。

 この事件は、日本でも大きく報道された。だが、その後日談は、日本ではほとんど伝えられなかった。彼らは、なんと、子どもたちを無残に殺害した犯罪者とその家族とを「赦す」と宣言したのである。犯罪者に復讐したり、恨んだりするのではなく、その罪を赦すと言ったのである。彼らの態度は、米国の人々に静かな感動を呼び起こした。

 しかし、子どもを殺された親たちが、その犯罪者を赦すなどということが、ほんとうに可能なのだろうか。彼らの信仰が、それを可能にしたのだろうか。米国の人々が彼らの態度に感動したのには、理由がある。

 9・11以降、米国はアフガニスタンで復讐の戦争を行ない、イラクにまで攻め込んで殺戮を強行した。いくら正当化の美辞を並べたとしても、心の底では米国の行為が無残な殺戮に他ならないことを国民はよく分かっているのである。

 米国民は、9・11を引き起こした者たちを赦すことができなかった。アーミッシュは、9・11のときに米国民が本来取るべきであった態度を、今回の事件で再現してみせた。それは米国民の無意識の「負い目」を刺し、彼らに小さな希望の道を指し示したのである。

また、続報をここに書き込んでいきます。

追記:

りんごさんが、「33個めの石」(と「草食系」)がどの書店のどこに並んでいるかをまとめてくださっていますので、ご覧ください。

http://www.geocities.jp/life_ringojp/haibi2009.html

2009-01-19

[]ブッシュと無条件の愛

ブッシュとオバマについて多くの論説が出ているようだが、ニューヨーク・タイムズのこの記事は、興味深い。全体としては反ブッシュ、親オバマが明瞭に打ち出されている。その冒頭で、ブッシュ(子)が、ブッシュ(父)についてインタビューに答えた内容が引用されている。よく分からないが、なんか衝撃的であるので引用する。

When Brit Hume did a joint interview last week with Bush father and son, dubbed “41st guy” and “43rd guy” by W., the Fox anchor asked whether it was true that “there wasn’t a lot of give and take” between them, except on family matters.

“See,” the Oedipally oddball W. replied, “the interesting thing is that a president has got plenty of advisers, but what a president never has is someone who gave him unconditional love.”

He talks about his father, the commander in chief who went to war with Saddam before he did, like a puppy. “You rarely have people,” he said, “who can pick up the phone and say, ‘I love you, son,’ or, ‘Hang in there, son.’ ”

Maybe he wouldn’t have needed so many Hang-in-there-sons if he had actually consulted his dad before he ignorantly and fraudulently rammed into the Middle East.

http://www.nytimes.com/2009/01/18/opinion/18dowd.html?_r=1&em

インタビュアーが、ブッシュ父子に、両者の関係を尋ねたところ、ファザコンのブッシュ(子)は言った、「大統領にはたくさんのアドバイザーがいるものだが、しかし大統領には「無条件の愛unconditional love」を与えてくれる人物はいないものだよ。電話をかけてきて、「息子よ、愛しているよ」とか、「息子よ、くじけるな、がんばれ」と言ってくれる人はめったにいないものだよ」。

ブッシュ(子)の、アフガニスタン、イラクへの侵攻は、ブッシュ(父)から承認(無条件の愛)を得たいファザコンブッシュ(子)の暴走だった、という一部の観測を裏付ける発言に読めるところがなんとも怖ろしい。数十万人(もっと?)の命はそれに付き合わされたというのか。

2009-01-10

[]乳ガン遺伝子の受精卵診断、選別出産に成功(英国)

英国のMirrorによると、乳ガンの家族歴のある男性とのあいだでできた体外受精卵11個の受精卵診断をして、乳ガン遺伝子を引き継いでない受精卵を選別して赤ちゃんを出産したとのこと。この赤ちゃんは、乳ガン遺伝子を取り除かれている。英国ではすでに受精卵診断による選別出産は認められ、実施されているが、この方法によって乳ガン遺伝子を排除したのは初めてのケースのようだ。

Doctors at the private conception clinic tested 11 embryos by removing just one cell from each when they were three days old.

Six were found to carry the defective gene. Two were free of it and implanted, resulting in a single pregnancy.

The technique - known as preimplantation genetic diagnosis - has already been used in the UK to choose babies free of inherited disorders such as cystic fibrosis.

http://www.mirror.co.uk/news/top-stories/2009/01/10/baby-born-free-of-breast-cancer-gene-115875-21029397/

こうやって、次は別の病気の遺伝子が診断され、次は別の・・・というふうに拡大していくだろうと、技術慎重派・反対派(一部フェミニスト含む)は言い続けてきた。だが英国でこれが可能になったとしたら、日本の同じようなリスクを持つ人々は、なぜ英国でできて日本でできないのかと主張し始めるだろう(ちょうど小児脳死移植のように)。この問題は私の中でも、まだ解決していない。

2009-01-07

[]トロンダイム、パロンド「パパ!お話して!」

フランスのマンガ(BDというらしい)「パパ!お話しして!」という本が、翻訳された。子ども向けではあるが、大人が読んでも楽しい、というか大人向けの気がする。男の子と女の子が、毎日寝る前にパパにお話をせがむというシチュエーションで、各回が続いていく。子どももおませだけど、パパがなかなか良い味である。フランスっぽいマンガというのは日本にはあまりないかもしれないから、カフェ、パリ好きの人はたぶん好きになるのでは。絵本だが、底辺にあるのは健康なエロス、というあたりがフランス人か。フランスでは圧倒的な日本のマンガブームで、こないだもフランス人マンガ研究者の話を聞く機会があったが、その逆ってあんまりないですね。帯文は小西康陽。

f:id:kanjinai:20090107131611j:image

↑絵のタッチは、こんな感じ。

一般流通してないので、メールで問い合わせてみてください(1600円)。ishigai[at]snow.plala.or.jp

くらしき絵本館

http://www.kurashiki-ehonkan.com/book.html

2009-01-05

[]草食系男子in Wikipedia

気がついたら、誰かがウィキペディアに「草食系男子」の項目を立てている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E9%A3%9F%E7%B3%BB%E7%94%B7%E5%AD%90

これって、雑誌DIMEの内容から取ったのかな?(手元にないから分からないけど。芸能人とか、そうじゃなかったっけ)

でも内容これでいいのかなあ・・・。誰か手を入れて良いものにしてあげてください。

2009-01-03

[]マンガと哲学、アニメと哲学、原稿募集

米国のOpen Court Publishing Company という出版社が、「マンガと哲学」「アニメと哲学」という2冊の論文集を出すので、論文原稿を世界から広く募集しています。このテーマに興味ある方はぜひコンタクトして、執筆してみては? Popular Culture and Philosophy® seriesというシリーズの一冊になるらしいです。簡単なアウトラインを今年の1月31日までに送って欲しいとのこと。

http://www.opencourtbooks.com/categories/pcp.htm

↑のページの下部にPDFがあるので、その内容をコピーしておきます。

Call for Submissions

Anime, Manga and Philosophy

Open Court is currently accepting Abstracts and Proposals for two volumes: Anime and Philosophy and Manga and Philosophy, for publication in late 2009 or early 2010. Your proposal can address any topic or use any approach that seems relevant or is exciting to you.

The goal is to use philosophy and/or theory as a tool to create a deeper and more thoughtful exploration and understanding of issues raised by anime or manga and their implications. We are not Fan Boy (or Girl) Culture -- we are instead engaging in a serious analysis of anime and manga using philosophic tools and methods to further our

inquiry. While we want a non-academic writing style that has personality and is easy to understand -- engaging lay readers, especially thoughtful fans -- we want the concepts and analysis to be complex, exposing the reader to new ideas and approaches that they may not have considered in simply watching anime or reading manga.

Your analysis can rest solely in anime or solely in manga or you may move back and forth between the two if that best suits your analysis. You may examine a single film or book, multiple episodes or editions, anime or manga series as a whole, specific subcategories within anime or manga, regional variations and derivations, and so forth. Your analysis could center on one particular filmmaker or writer/artist.

Related games and gaming are possible topics as well. You could also engage in a cross-media, thematic or contextual analysis. You could even address software such as Anime Studio or Manga Studio. But always keep in mind that anime or manga should be your central focus, and not the analytical concepts or approaches that you bring to bear on your topic. These are not philosophy textbooks but rather books about anime and manga.

We encourage multiple submissions, particularly a single contributor writing chapters for each book as long as the individual chapters are distinct and able to stand alone. Each finished volume will consist of approximately twenty (20) chapters.

Your proposal should be 1 to 2 pages that briefly summarize and outline your analysis. Finished manuscripts will be about 12 to 15 typed pages; further guidelines will be provided to accepted contributors. Proposal submissions are DUE by January 31, 2009.

Acceptances will be notified by February 21.

Submission Deadline: January 31, 2009

Submission Email: ocb...@gmail.com

この出版社は、日本では、『マトリックスの哲学』の出版社として知られているのでは。

マトリックスの哲学

マトリックスの哲学

マンガと哲学、アニメと哲学、ということになると、居ても立ってもいられなくなる人がいるのでは? 上の説明読むと、ゲームと哲学というのもOKらしい。ぜひ日本からも執筆者として参加しましょう。もし興味ある人がお知り合いにいたら、ぜひ教えてあげてください。

[]謹賀新年

大晦日からお正月にかけて、ずっと家に引きこもって、書き物をしております。食料を買い込むのを忘れたので、近所のコンビニ弁当ですが、あれは連続するとちょっとしんどいですね(食欲落ちる)。今年もいろいろ書いていきますので、ぜひよろしくお願いします。

そういえば、Yahoo!ニュースで「「草食男子」食い尽くす 「肉食女子」とはどんな人種か」というJ-Castのニュースが流れましたね。私の本も言及されています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090102-00000003-jct-soci

が、この内容はどうなのか? 肉食女子って・・・。恋愛とセックスに積極的だったのはバブル期(1980年代末から1993年)の女性がいちばんなのでは? 違うのかな。

草食系男子については、『朝日新聞』全国版の1月6日あたりの朝刊文化面で、特集記事があるように聞いています(伝聞調)。

さて、2月末〜3月はじめに刊行のエッセイ集のゲラ最終チェックもさきほど終了。自分で言うのもなんだが、なかなかよい出来ですよ。春秋社から連続して出てる、「全身当事者主義」「母が重くてたまらない」「コドモダマシ」に引き続き出版という流れです。

いまからApplied Philosophy ConferenceのAbstract書きます・・・。