感じない男ブログ このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-03-31

[]私たちと生き続けていく命

『朝日新聞』2011年3月28日夕刊

「私たちと生き続けていく命」

森岡正博

 今回の震災で多くの方々のいのちが奪われた。

 ある生存者は語る。津波が襲ってきたとき、妻と手を握りしめていたが、強い波の力によって彼女を流されてしまった、と。目の前で愛する者が消えてゆき、自分だけが生き残ってしまったという慟哭は、それを聴く者の心にも突き刺さる。自分は愛する者を守りきることができなかった、最後の瞬間に何もしてあげることができなかったという自責の念は、どんな言葉をかけられたとしても、おそらく消えることはないだろう。

しかし、人生の途中でいのちを奪われた人たちは、けっしてこの世から消滅したわけではない。その人たちのいのちは、彼らを大切に思い続けようとする人々によっていつまでもこの世に生き続ける。私たちの心の中に生き続けるだけではなくて、私たちの外側にもリアルに生き続ける。

 たとえばふとした街角の光景や、たわいない日常や、自然の移りゆきのただ中に、私たちは死んでしまった人のいのちの存在をありありと見出すのだ。彼らは言葉を発しないけれども、この世から消え去ったわけではない。

 人生は一度限りであるから、どんな形で終わったにせよ、すべての人生は死によって全うされている。すべての亡くなった方の人生は聖なるものとして閉じた。そして彼らのいのちはこれからずっとこの世で私たちと共にいる。私たちは彼らに見守られて生きていくのである。

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『朝日新聞』「天声人語」2011年3月31日朝刊に引用された

▼哲学者の森岡正博さん(52)は遺族に心を寄せる。

「その人たちのいのちは、彼らを大切に思い続けようとする人々によっていつまでもこの世に生き続ける」。

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2011-03-27

[]柴谷篤弘さん死去

生命科学者、反科学論者、グルメ実践家の柴谷篤弘さんが25日に逝去されました。90歳とのことです。

http://www.asahi.com/obituaries/update/0326/OSK201103260090.html

こんなときに亡くなられるというのは歴史の皮肉でしょうか。名著「反科学論」はいまこそ再読すべき。個人的にも一時期親しくさせていただいていました。私が若かったときから目をかけてくださっていた。変わり者の研究者をほんとうに好きな人だった(池田さんとか、郡司さんとか)。73年刊行の「反科学論」には、はやくも「クィア」の文字が見えている。柴谷さんの思想は引き継いでいかないといけないと思う。

2011-03-23

[]次期国政選挙は「脱原発・クリーンエネルギー」支持で

【次期国政選挙は「脱原発・クリーンエネルギー」支持で】

目の前の災害・危機の一刻も早い解決を祈りつつそして今後の息の長い支援を心にとどめつつ、同時に、もう少し先のことも考えておきたいと思います。

次期国政選挙の争点のひとつが原発・エネルギーになることは間違いありません。そしていま多くの方々が、脱原発・クリーンエネルギーの道へと日本が大きく舵を切ることを願っているはずです。詳しいロードマップはまた別に議論するとして、とりあえずこの1点に絞って、この考え方に賛同する人々が大同団結して、「次期国政選挙では脱原発・クリーンエネルギーに本気本腰で取り組む政党を支持する」というメッセージを発信してみてはどうでしょうか。著名人の方々が連動してくださればさらに効果的かと思います。

地震・火山等の多い日本が原発を今後も抱えていくことは得策ではありません。今回の避難、汚染、工場や農業の停止、廃炉等々のコストもカウントすれば、原発維持はトータルで割に合いません。さらなる安全性を確保すれば原発維持でよい、という考え方も捨て去るべきでしょう。また、原発は死守しつつクリーンエネルギーも開発する、というのでは今回の教訓を活かすことになりません。国策の下、原発を徐々に脱し、少しずつクリーンエネルギーへと移行していきたいです。次の大災害が来るまでに、原発の数を日本からできるだけ減らしておきましょう。(複写・転載・補強・二次利用自由 by KJ 2011年3月23日)

2011-03-19

[]★放射線量は「累積」で計算しなければならないこと

テレビの専門家たちは、放射線量は、法定許容量よりはるかに低いので「ただちに健康上の影響はない」と繰り返していますが、街中では放射線は一日中浴びせられるので、許容量は「累積」で計算しないといけません。

福島県の定期報告によると、福島市(原発より61km)では18日、19日と、

 10マイクロシーベルト毎時

を計測しています。(http://www.pref.fukushima.jp/j/sokuteichi91.pdf

ところで、

 胸のエックス線検査1回50マイクロシーベルト

です。ということは福島市の屋外に1日いたとしたら

 240マイクロシーベルト/1日

を浴びることになります。これはエックス線検査を日に5回受けることと同じです。

もし、このままの放射線量がずっと続くと仮定すると、1ヶ月で

 7ミリシーベルト/1ヶ月

となります。ところで、これは、

 妊娠可能女性が3ヶ月間に浴びてよい法定限度は5ミリシーベルト

という法定限度を1ヶ月で超えることになります(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E6%9B%9D)。

もちろん屋内でじっとしていればこれよりは被曝量は減るでしょう。それを考慮した上で福島市の(少なくとも)女性はどうすればいいのでしょうか。またこのような事実を福島市の女性たちは知らされているでしょうか。

福島県の上記PDFには「※ 胃のX線集団検診1回当たりの放射線量は、600マイクロシーベルト/回ですが、本日の測定値のうち、最も高い飯舘村の測定値は、これを十分下回っており、健康に影響ないレベルと考えられます。」と書かれています。こういう比較はフェアではないでしょう。その証拠に、日本各地の放射線量のグラフを見ると、

http://atmc.jp/

水戸市、宇都宮市などでは、放射線量は急降下せずに高いままで連続的に計測されていますので、福島市でもそのようなことになっているでしょう。

(ちなみに男性では7ヶ月で1年間の法定限度(50ミリシーベルト/年)に達します。)

みなさんのお考えをお聞かせください。また計算に間違いがあったら教えてください。

もちろん私は福島市その他の地域で放射線量が減少して、通常に戻ることを心から祈っています。

追記:武田邦彦氏が同様の計算(もっと詳しい)を20日にしている。

http://takedanet.com/2011/03/16_3882.html

2011-03-03

[]日本の白熱教室へようこそ

マイケル・サンデルが誘う「日本の白熱教室」へようこそ

マイケル・サンデルが誘う「日本の白熱教室」へようこそ

ハーバード白熱教室」の流行に乗って、雑誌「SAPIO」が日本の大学での対話型授業を探してきて連載したものの単行本。書籍化に当たって、雑誌連載時にはなかった内容がかなり追加されている。ルポが載っているのは、

 慶應義塾大学 樫尾直樹 「宗教社会学」

 横浜市立大学 上村雄彦 「国際社会と政治」

 早稲田大学 原孝 「自己表現論」

 千葉大学 小林正弥 「公共哲学」

 神奈川大学 石積勝 「国際政治学」

 大正大学 弓山達也 「現代社会の倫理を考える」

 大阪府立大学 森岡正博 「人間学」(←わたくし)

 東京大学 小松美彦 「科学史」

である。

みなさんそれぞれ特徴があって、なかなか面白い。ちなみに私の「人間学」は、みんなで映画を見てから延々議論するというもので、もう10年以上やっている隠れた人気授業である。ライブ感覚での優れたルポになっているので興味ある方は見てみてほしい。

実際に対話型授業を10年以上やってみて思うことは、多人数相手のマイクを持った対話型授業を成立させるいちばんのポイントは、教師の「個人技」だということだ。対話型授業を成功させるマニュアルというのは、たぶんない。ちょうど、プロ野球の実戦で3割台を打つマニュアルがないのと同じで、相手がある生き物のような場所だから、経験を積んだ上で最後は個人技となるのだろう。私の場合は、こういう個人技は、若いときの学際的な研究会の企画と司会の連続で身につけていったように思う。実際にやってみて、いつも気を遣うのは、教師が自分の枠組みを押し出す部分と、学生の意見をけっして否定しないという部分のバランスをどう取るかというあたりかな。それをとっさのライブでやっていかないといけないので、ある意味ずっと真剣勝負になる。あとは、学生との対話のなかから教師も学ぶことがあるというプロセスを、その場で見えるようにしていくことだろうか。

この本で小林さんも書いているが、ちゃんとセッティングをすると、学生はいろんな発言を積極的にしていくようになる。いまの学生は空気をすごく読もうとするから、発言してもいいんだという空気を作っていくことが大事なのだろう。

大学における対話型授業の学会というか意見交換会があったら面白いかもしれない。

2011-03-01

[]大学入試Yahoo!知恵袋カンニング問題(2)

大学入試Yahoo!知恵袋カンニング問題(1)

http://d.hatena.ne.jp/kanjinai/20110227/1298777848

でこの件について書いた。

補足で書いておくが、もし現行の受験システムを公正に維持したいのならば、

(1)受験教室への電波遮断機の設置

(2)受験教室の4隅に監視カメラを設置

という方向にむけて大学側は対応を取っていかなければならないなるだろう。経験上、現状の監督体制では受験者の監視は無理。監視カメラの映像は、試験終了後に、監督教員が居残りで精査する。不審な動きをした者や、トイレに立った者の答案も取り出して精査される。憂鬱な未来像である。