中央官庁への就職活動について・3「官庁訪問」前編

さて、まだ忘れてないよ、第三回です。
私の時よりもさらに就職活動の時期が早まっていると思うので、もう邦銀・国内証券なんかはばんばんOB訪問とかしているんだろうか。私は試験が終わってから就職活動を始めたので、なんというか、年々学生さんは大変になるなぁ、と思う。
さて、官庁訪問国家公務員試験の一次試験が終わった後から始まる。去年はなにやら「業務説明期間」なるものがあったようだが、実際にはその期間中から大半の省庁が内部で採用の検討をしていた、というのは周知の事実。「業務説明」であって「採用プロセス」ではない、という人事院大本営発表を信じた地方の学生は大変不利であった。今年もそういうわけのわからん期間が設定されるとしても、採用プロセスは進行しているということを肝に銘じ、早くから行動を起こすように心がけて欲しい。
官庁訪問はいつもは6月だが…おいおい、今年はまた一段と早いな。一次試験の翌日から官庁訪問期間が始まるのが通例だが、今年はどうなるんだろう。学生諸君は人事院発表に注目せよ。
さて、官庁訪問で何をやるかというと、職員1対学生多の業務説明だったり、グループディスカッションだったりするが、本丸は各課職員との一対一の面接(というか雑談というか)である。ここでいう各課とは人事担当課ではなく、実際に役所の業務をやっている課である(もちろん人事面接も重要だけども)。
係長やら課長補佐が学生の相手をするのだが、話題は多岐、かかる時間も対応職員の趣味により長短有り、なにを見られているんだかよくわからない面接である。私も職員として対応したことがあるが、実際何を見ていいものやらわからない。ただ、直感として「あ、こいつはいけるな」「こいつはうちには向かないな」というのはわかる。恐ろしいもので、「こいつはダメだ」という人物は役所の一年生が面接を横耳で聞いているだけでもわかる。ただ、何が「ダメ」なのかは、私の未熟な人物評価能力ではまだ言語化できない。それに、当然「ダメ」の基準は各省庁の文化によって異なっており、あっちの役所でダメでもこっちの役所ならOK、ということはよくあることだ。よって多くの役所に行ってみることが重要である。
多くの役所に行ってみることが重要なんだけど、ところがそうもいかない。官庁訪問はやたらめったら時間がかかる。一つの役所で最低半日かかると見ていい。だから一日に二つ、去年のように「三巡目までは連続訪問禁止、中二日あけ」というルールならば、一巡目で6個の役所だ。………よく考えたら6個も行けば十分だなぁ。我々の時は「中一日」だったからなぁ。
さて、何でそんなに時間がかかるかといえば、主には「学生の相手をする適当な職員をとっつかまえるのがなかなか難しい」からだ。面接するのは実際に(採用以外の)業務をしている人間なので、当然忙しいし、学生が来ると30分や1時間は業務時間が潰れるのでいやがる人も多い(逆に好きな人もいるが)。だから、数時間役所にいても面接できたのは2人、とかいうことがざらにある。また、他の役所に優秀な学生を取られないように、拘束しておく、という意味もある。面接していないときは大抵待合室でじっとしていることになるので(しかも暑い)、もはや忍耐力の勝負である。カロリーメイトとペットボトルの飲み物は必須アイテム(自販機あるけど)。一部の役所ではお茶菓子程度は出るらしい。
そんなこんなで一日目が終わって家に帰ると既に23時、なんてことはよくある話だ。朝から晩まで、これが2週間は続く。まさに体力勝負である。まるで入省してからの激務に耐えられるかどうかの「体力試験」も兼ねているかのように。
上で「話題は多岐」と書いたが、まぁそれでも傾向はあるわけで。当然「何で役人になりたいの」「役人になって何がしたいの」というのは定番だ。あと「最近何に興味がある」とか(要は聞く方もこれ以外ではなかなかとっかかりを作りにくい、というだけなんだけど)。「学生の時何をやってたの」というのもそうだ。実のところとっかかりにしか過ぎないので、評価の対象はその問いへの答えそのものではなく、答え方やその先の展開である(この辺は民間でも同じだと思う)。知識が浅いとか考え方が論理的でない・幼稚と思われればアウトであろう。あとは人の目を見ないとかしゃべり方があまりにもぼそぼそしているといった、コミュニケーション能力に問題があるとか(キャリアはすぐ人を指揮して業務に当たる立場になるので、コミュニケーション能力の欠如は致命的である)。
と、こういう評価を何回も何回も受けていくのである。(官庁訪問編、続く)