おとといの記事に対するコメントへの返答

# 通りすがり 『お役人に替わって政治家が実際の政策決定をするなんて能力的に(人的資源、数と質の両面で)無理だと思うのですが、実際どうなんでしょうか?一流大学を出たお役人さん集団(学力優秀)と、政治家(お役所に比べ人数も限られるし、能力面で優秀な人材が豊富とは思えないので)とでは、あまりに差があるように感じますが...霞ヶ関官僚氏から見て、お役所を活用できる器量を持った政治家(ってのは多数いらっしゃるんでしょうか?』

実際の「政策決定」は、今でも政治家が行っています。官僚が担うのは政策立案の方。ただ立案と決定は複雑に入り組んでいるので、そのような断定は禁物かもしれません。政治学において、日本の政策決定過程が「官僚主導」なのか「党主導」なのかについては論争がありました。私はどちらも極端な言い方であり、しかしあえていうなら党主導ではないかと考えています(が、この話はまたいずれ)。
政治家には、役人のように役所の壁、しきたりの壁、固い頭の壁を打ち破ってくれる役割を期待しています。確かに役人の方が知識は多いかもしれないですが、政治家は日々有権者利益集団、同僚議員と接触することで、とてつもなく幅広い「政治感覚」を身につけています。そういう感覚が、政策を「まともな」ものにするために役に立つことは事実です。「頭でっかち」な役人ではとてもかないません。
その「政治感覚」の観点から役人に的確な意見を言える政治家、指示を出せる政治家というのは、確かにいます。おおこのおっさんすげぇ、と素直に感動したこともあります。ただ、勉強をしていないと(事実をしらないと)、その「感覚」があさっての方向に行ってしまうのですが。
もちろんしょうもない政治家もいますがね。誰とはいいませんが。

# jouno 『政治委員はおもしろいです。でもそれって党官僚の仕事が大変になるだけという。』

おそらく。けど役所の重要な会議の場に常に姿を現し、役人に有形無形の影響力を及ぼす党官僚、ちょっと燃えます。レッドオクトーバーを追え!的冷たい対立があるとなお可。

# nasu 『「物事を突き詰めて考えていない感じ」は民主党にしばしば見られますね。それゆえに応援したくても留保をつけてしまいます。どうしてあんな風になるんだろう。』

どうしてなんでしょう…。選挙で票を得るために、メッセージを単純化するというのは、それはそれで戦術なのですが…。自民党には業界団体や官僚というブレーンがいるからでしょうか。

# sivad 『例えば、「ウルトラC」が起こる可能性が増す、ちうことはないのでしょうか。』

ウルトラCは、そうそう起きないからウルトラCなのです。もし民主党のいう「副大臣会議」でウルトラCが連発するような事態になれば、それを押さえ込むための別のシステムができることになります。さらに巧妙な根回しのシステムなのかもしれないし、その前段階の会議かもしれない。
だいたい副大臣だって○○省の副大臣なわけで、もし法案に不満があれば各省協議の段階で事務方に指示をして調整させればいいわけです。各省協議において形の上で各省が納得したものを、その役所の上層部たる事務次官副大臣がひっくり返すのは、信義に反します。

# 名無し暇人 『すいませんが与党との事前調整(いわゆる事前審査)の記述がありませんが。これはどういう位置づけになるのでしょうか。結局民主党も、自民党と同じく、与党になったとき正調か何かで官僚があげてきた法案の修正をすることで、政治の主導性を発揮せざるを得ないと思いますが。』

おお、党の話をすっかり忘れていました。党との調整についてはまた別項ででも。
ただ、民主党は事前審査に反対していたような気がしますが…。

guestroom 『民主党はこういう事態を知っているからこそ、安心して提唱しているんじゃないでしょうか。キャッチフレーズとしてわかりやすく、もし与党になっても実現化しやすいし、広告戦略上は評価できるかなと。』

広告戦略上は評価できるかもしれませんが…。民主党の「改革」に対する熱意を疑ってしまうような戦略ではあります。

郄村薫「リヴィエラを撃て」(新潮文庫、ASIN:410134714X、ASIN:4101347158)

読了。
郄村の描く男たちは、一言で言うならば、救われない。ストーリーも救われない。爽快感がまるでない。
私は「レディ・ジョーカー」と「マークスの山」しか読んだことがなく、それだけで郄村を語るのもおこがましいが、しかしこの二作の筋書きを頭に入れて「リヴィエラ」を読めば、どうあがいたって爽快感のある結末を想像することはできない。
何かを背負ってしまったものの、それを抱えて身動きがとれなくなる男たち。高邁な理想、複雑怪奇な権力機構、そして自分自身。「悪人」は踊り続け、「善人」は土の下へ。
「巨悪」は眠り続けるのだ。かつて、政治学の講義で、「問題を争点化させないのも権力」と教わった。そのとおりだ。それが権力だ。権力機構の末席に連なっているが、一生そんなところへは行けないような気がする。
郄村薫の本は、おすすめです。