「俳壇」2012年2月号

「俳壇」(本阿弥書店)2012年2月号、「若手作家トップランナー」のコーナーに、山口優夢論「逃げない、というポエジー」を寄稿しました。もしかしたら俳人の方から見れば、ずれたところがあるかもしれませんが、せっかく歌人に依頼くださったので、歌人としての読みを通してみました。お読み下されば幸いです。

山口優夢新作20句「あがき」、面白かったです。

  綿虫や空はいづこも寒からむ

確かに。

  ポインセチアみんなが笑ふから笑ふ

ああ、そうだ、そうだ、まったくそうだ。いつもそうだ。

  富士に雪降る風呂を沸かしたまま眠る

あぶないよ!!

同号では第26回俳壇賞も発表されていますね。受賞作の深川淑枝「鯨墓」もよかったですが、候補の柊裕子「猫鳴り」も気になりました。

  歩み板岸に残して若布船     深川淑枝
  海女小屋に母座のありぬ桃の花

  床にちる銀も非銀も木の葉髪   柊裕子
  ががんぼに嘆きの壁を譲らるる

柊さんの「奔馬忌のうちむらさきの果肉かな」が、塚本邦雄の「白妙のカラーに別れ青年の肉ぞうちむらさきの奔馬忌」という一首を踏まえている、と選考会で鳥居真理子さんが指摘していますが、これってそのまんますぎないかな……。でも、塚本さんの「うちむらさき」は、貝のことですよね? これを果肉に転換したところが面白いのかな?

今日は笹井宏之君の命日ですね。合掌。