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2009-04-10(Fri)
小松左京のすごい話
読書 |
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- 作者: 小松左京
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/07/14
- メディア: 新書
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小松左京の『SF魂』を読んでたら、凄いエピソードが書いてあった。
小松左京が京都大学を卒業して、経済誌の編集者をしていた1954年ごろの出来事。
忘れられないのは、創刊一周年記念号の目玉として湯川秀樹博士に取材した時のこと。湯川先生は東洋史の貝塚茂樹先生の弟だから、高橋和巳に頼んで貝塚先生から紹介してもらったのだが、当時は取材に来る新聞記者があまりに不勉強なことにウンザリされていた。その時も、最近はどんなことに関心をお持ちかと僕が聞いたら、「小松君、この歌は知っているか」と仰る。
「月やあらぬ 春や昔の春ならむ わが身ひとつはもとの身にして」
僕が「在原業平ですね」と答えると、「おっ、よく知っているね」と。当時すでに量子力学の観察者問題(極微小の量子力学の世界では、観察すること自体が観察されるものに影響を及ぼしてしまうという問題)が言われ始めていたから、「観察者問題ですか」と尋ねたところ、先生も一気にうち解けてくれた。
これは並の秀才にはできない受け答え。
小松左京は京大の文学部の出身だけど、専攻はイタリア文学で、好きで読んでたのはドストエフスキー。だけど授業にはあまり出ないで貸本漫画を描いたりしてたらしい。
素の教養として在原業平の歌を知ってただけでも凄いんだけど、そこから量子力学にはふつう繋がらない。点の知識じゃなくて、文系も理系も関係なく、色んな知識が脳の中で網目のように繋がっているのだろうと思う。
京大の「知」の特徴は、文系とか理系といった二分法では括りきれない「学際的な知」「総合的な知」というところにあったように思う。量子力学の観察者問題を示唆するのに湯川先生が業平の歌を持ち出したのも、まさに学際的というか、これぞ「教養」というもの。もちろん僕なんぞはただのチンピラに過ぎないが、それでもこの京大型教養のDNAは、若い頃からどこかに埋め込まれているような気がする。
京大出身といえば最近じゃロザンの宇治原史規が有名で、クイズ番組では、確かに文系理系関係なく博識さを発揮してるけど、なんとなく暗記主義の域を出ていないように見える。
そんなわけで、やはりこれは小松左京自身がすごいってことだと思う。
なお、『SF魂』によれば、小松左京はその後、父親の放漫経営によって潰れかけていたガラス鋼管工場を引き継いで多額の借金を背負い込み、金を稼ぐために、ラジオ局の依頼で、いとし・こいしのニュース漫才の台本を書いたり、新聞の翻訳ミステリ雑誌評の仕事を始めたというから、才人というのは凄いものだと感嘆することしきり。



