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死んだ目でダブルピース このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

名前:中山涙 (由来=ペンネームが決まりました!
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浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜 (マイナビ新書)
近著「浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜」(マイナビ新書)















2009-08-18(Tue)

芸人小説の金字塔。劇団ひとり「陰日向に咲く」

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陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

 劇団ひとり陰日向に咲く」を再読。「芸人小説」という枠に収まりきらない名作だと、あらためて感じた。


 この作品が、他の芸人小説と比べて異質なのは、「自伝的小説」の要素がまったくなく、完全なるフィクションを構築しているところだ。

 もともと劇団ひとりは、歪んだキャラクター設定と、ドラマチックな展開が特徴のコントネタを得意としており、小説は、その延長線上に位置づけられる。

 おそらく物語作りにおける発想のバックボーンが、並の作家や芸人とは異なるのだろう。意表をついたセリフや思考パターンを用意することによって、読者が思いもよらない地点にストーリーを転がしてゆく手腕はかなりのものだ。


 たとえば、ホームレスに憧れるサラリーマンの場合は以下の通りである。

 自由とは何なのか、草を口から吐き出し考えてみた。

 そして、ある結論に至った。

「そもそも私は自由なんか欲していなかった」

 そんな、身も蓋もない結論だった。

 この着地の仕方がすばらしい。


 また、売れないアイドルの熱狂的ファンは、思いが強すぎるあまり、ファンレターに「好き」とか「可愛い」などと書けず、次のような行動をとってしまう。

だから僕は新聞を読まないミャーコのために、世の中の出来事をわかりやすく簡潔に説明したファンレターを書いている。あまり堅い説明だと新聞嫌いのミャーコが拒絶するかもしれないので、あくまでもフランクに伝えるように心がけている。

「あちゃー。な、なんと新憲法の提出は今国会では見送りだよーん。しょぼーん」

 といった具合だ。

 意外性たっぷりな行動だが、いかにも本当にありそうだ。

 このような「ねじれた展開」こそ、劇団ひとりの真骨頂と言えるだろう。


 個々の短篇は、それぞれが有機的に絡まり、最終的に全体が一つの大きな円のような構造となる。これは、職人肌で知られる作家の山田風太郎が得意としていた趣向であり、ふつうの新人作家の手に余る、かなり大それた仕掛けであると言える。


 次回作が発表されるのを、祈りつつ待ちたいと思う。