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2009-09-09(Wed)
永遠のライバル。談春と志らくの生きる道。
芸人本 |
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- 作者: 立川志らく
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2009/02/19
- メディア: 単行本
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立川志らくの「雨ン中の、らくだ」を読んだ。立川談春の「赤めだか」と対になる一冊。それぞれが傑作だけど、両方とも読むと面白さが数倍になると思う。
一応書いとくと、談春も志らくも立川談志の弟子。弟子入りしたのは談春の方が一年半早いけど、年齢は志らくの方が三つ上。真打ちになったのは志らくの方が二年先。
「ヨタロー」に一緒に出演していた立川談春とは入門が後だが真打昇進は先で談春よりも先に才能が開花、それに発奮した談春が古典落語の斬新な演じ方などの開拓で抜き返すと言う、現在の落語界における最大のライバル関係にあるということだけは誰しも認めるところであろう。
兄弟弟子でありながら、追いつ追われつのライバル同士なのである。
……以上の事実は、落語ファンには常識なんだろうけど、僕は恥ずかしながら最近知りました。
当初談春は、後輩の志らくに激しい嫉妬をおぼえていた。師匠の談志は志らくのセンスを褒め、談春に「志らくに教われ」とまで言った。先輩として最大の屈辱である。
ここからの談春の発想がすごい。
部屋に帰ってひとつだけ決めた。心の隅でずっと考えていたことだった。
志らくと友達になろう。
(中略)兄弟子だの先輩だの云ってる場合ではない。このままの状態で芸人として志らくとケンカすれば、談春は負ける。そう思いたくはないが、師である立川談志はそう云っている。
「負けるケンカはするな」が我が家の家訓で、それは相手から逃げるという意味ではない。勝てる、最低でも五分の戦いができるようになるまでは相手を観察し、研究する。そのためには格好つけてる暇はない。至近距離まで飛び込んでみよう。志らくはどこが長所で、談春に足りないものは何なのか。志らくの短所はどこで、どう切り込めば勝てるのか。
この姿勢は、師匠の立川談志が「ひょうきん予備校」で言っていた内容と符合する。
談志:バカは駄目だよ、はっきり言うと。
バカと利口はどこで判断するかっていうとね、私の基準のバカっていうのは、状況判断ができないやつ。
状況把握ができて、状況判断ができたら、状況処理をしなきゃいけない。この連続なン、世の中で生きてるのはね。すべてそうなんです。
どうでもいいけど談志、すげえ格好。
それはともかく前座時代の談春は、志らくの方が自分よりも秀でている、という状況をしっかりと「把握」し、友達になろうと「判断」した。なかなかできることじゃない。
そしてその結果、二人は本当に仲良くなる。
ずいぶん無茶な飲み方もしました。ふたりで一升酒をあおったこともあります。もっとも私が九合で談春兄さんが一合。それでもふたりは同じくらいヘベレケになって、夜の江古田の街をさ迷っておりました。「俺たちふたりは将来、名人になるんだ!」と叫んだりしたものです。
(「雨ン中の、らくだ」より)
ちょっとじんと来た。ビートたけしの小説「浅草キッド」を思い出す。
たけしはのちに「マーキー」という相方と知り合い、芸を競い合った結果、コンビ別れをしてしまうわけだが*1、談春と志らくの場合は、競い合いが良い方向に作用したといっていいだろう。両人ともに、談志が言うところの状況把握・状況判断・状況処理を適切なタイミングでおこなった結果だろうとも思う。
談春と志らくは、今もなお、お互いを意識しつつ、追いつ追われつの戦いを続けている。つくづく、うらやましい関係だと思う。
- 作者: 立川談春
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/11
- メディア: ハードカバー
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