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死んだ目でダブルピース このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜 (マイナビ新書)
近著「浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜」(マイナビ新書)















2009-11-21(Sat)

「天空の城ラピュタ」虫型ヒコーキ誕生秘話

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天空の城ラピュタ [DVD]

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 11月20日に日本テレビの「金曜ロードショー」枠で再放送された宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」は、事前の予想通り、かなり人気を博したようだ。1986年の上映からおよそ四半世紀を経た現在でも、シンプルな冒険物語がまだまだ力を有しているのだと実感させられる。

 実際、スタジオジブリ作品の人気ランキングの企画があると、「ラピュタ」は、近年の大作を抑えて常に上位に位置している。


ラピュタ」の人気を支えているのは、ストーリーのシンプルさに加えて、背景や小道具のデザインも一役買っているように思う。1980年代の段階では、宮崎作品のデザインは、グロテスクさよりもユーモラスさが上回っていた。

 中でも印象的なのは、空賊のドーラ一味が使う二人乗りの虫型飛行機「フラップター」である。


 1983年に出版された「宮崎駿イメージボード集」の中で、すでに宮崎駿フラップターへの思いを「オーニソプター(鳥型ヒコーキ)の伝説」と題するイラスト付きのエッセイで綴っている。

 SFの異世界ものを読むと、オーニソプターとやらによく出くわす。

 オーニソプターとは要するにハバタキ機のことで、発想からすればプロペラやロケットよりはるかに古いものである。


 オーニソプターについては、Wikipediaに画像付きでかなり詳しく書かれている。

オーニソプター - Wikipedia

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 レオナルド・ダ・ヴィンチの時代からその構想はあり、ジュール・ヴェルヌハインラインSF小説にも登場しているそうだが、現代に至っても、人が乗れる大きさのオーニソプターは実用化されていない。


 宮崎駿は、この空想上の飛行機への憧れを、以下のように記している。

 最新式というやつは、いつの時代でも子供達を熱狂させるようになっている。しかし、しかしである。現実にとんでるものを真似てコピーをフィルムに登場させても、航空機メーカーのデザイナーやコンピューターに敬意を表するだけのことである。最旧式の方が好きになっちまったのは職業上は困ることが多いのだがやむを得ない。

 もう少しグズグズ云わせてもらえば、本当に自分の子供や友人の頭上に爆ダンをおっことすかもしれないものより、そんな心配のないものの方が楽しんでいられる。旧式バンザイ!!

 で……いつの頃からか、フィルムでオーニソプターをとばしたくてチャンスをうかがうようになった。

 キィーンとかギャーンとか騒がず、プチプチとかトルルルルンとか、あまり聞きなれぬ音をたて、髪に風をうけ、シートとかベルトから解放され、鳥達と同じ位の速度で自在に空中をとびまわるオーニソプター!!

 宮崎駿はこのオーニソプターをヒントに、虫型ソプター=フラップターを構想した。

 画像はこちら。

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 1983年の段階で、ほぼ「ラピュタ」と同じ形状が出来上がっていることがわかる。

 当時、宮崎駿は42歳。線の可愛さも、フォルムの美しさも、完璧といっていい。クリエイターとしての絶頂期だったのだろう。「ルパン」の世界観にはそぐわない、というのも正しい感覚だと思う。

ラピュタ」では、前脚がなくなっているが、さすがにグロテスクだと感じたのかもしれない。

 なお、この頃の宮崎駿は「未来少年コナン」や「ルパン三世 カリオストロの城」で、一部のアニメファンに崇め奉られている存在ではあったものの、決して誰もが知るクリエイターではなかった。徳間書店の編集者だった鈴木敏夫が、必死になって「ナウシカ」の映画化を実現させようとしていた時代である。


 宮崎駿はこのフラップターをアニメで表現するに際して、はばたきを斜線でごまかすのではなく、4枚の羽根の動きをきちんと描こうと考えていた。以下、「宮崎駿イメージボード集」より抜粋。

 1秒間に50回位はばたかせたいが、1秒24コマのフィルムでは1コマ作画にしても描きようがない。

 で、1秒6回(アゲハチョウ以下)とするが、描きようでこれで充分目くらましになる。

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 が、4コマごとに同じ絵が見えると、動きと感じるよりチラチラと絵の残像が目にひっかかるようになるので、くりかえしのパターンを3種類位つくって(つまり12枚となる)、乱してまぜた方がかんじが出るはずである。

 虫のはばたきよりは遅いが、↓こんな風に処理してはつまらない。

 アニメの技術的な部分はよくわからないのだが、「1秒間に50回位はばたかせたい」という願望は、なかなかすごい。

 文中、「こんな風に」と書かれている部分には、飛んでるハチの羽根が「彡」のような斜線で描かれている。

 虫の羽根の動きをアニメで表現するのであれば、そうする以外に方法がないように思えるが、さすが日本一のアニメ職人だけあって、かなり現実的に動かし方を模索していたことがわかる。


 しかし、この本が出版された3年後、満を持して「ラピュタ」での起用が実現したフラップターの羽根の動きは、どういうわけか、宮崎駿があれほど避けようとした斜線で表現されてしまっていた。

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 今から23年前、「ラピュタ」の予告編を見てそのことに気づいた僕は「なんでだよ!」と思い、大いに混乱したのだが、その疑問は上映直前の完成記念イベントに行ったときに氷解した。

 奇跡的にも、質問コーナーでそのことを訊ねた人がいて、宮崎駿が苦笑しながら答えてくれたのだ。

 要するに、1秒6コマとか8コマていどでは、全然飛んでるように見えなかったというのである。それで結局、斜線で表現することになってしまったと、宮崎駿は照れた様子で語っていた。なんというシンプルな、身もフタもない理由なんだろう……と、唖然とした記憶がある。


 結果として、「ラピュタ」に登場するフラップターは、躍動感あふれる素晴らしい乗り物になった。

 苦肉の策だったとはいえ、宮崎駿の選択は正しかったと思う。

 やりたいことが実現不可能とみるや、あっさりと宗旨替えして、よりベターな道を選択するリアリストっぷり。

 宮崎駿が映画監督として成功したのは、一流の職人であると同時に、そのように現場感覚で物事を割り切るすべを身につけていたからではないだろうか。

天空の城ラピュタ」予告編

D


 ところで「宮崎駿イメージボード集」を読むと、まだ「風の谷のナウシカ」が上映される前の段階だったにもかかわらず、すでに「もののけ姫」や「となりのトトロ」の構想が生まれているのがわかる。資料としても、読み物としてもたいへん優れているのだが、残念ながら、現在は新刊の書店では手に入らない。

 2009年11月現在、復刊ドットコムでリクエスト投票を受け付けているので、もし興味がある方はどうぞ投票してみてください。↓

http://www.fukkan.com/vote.php3?no=184


関連作品:

天空の城ラピュタ スタジオジブリ絵コンテ全集〈2〉

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 実は、宮崎駿の本の中では絵コンテが一番のおすすめだと思っている。全ページ、ラフで可愛い絵と書き文字があふれてて、映像用語がわからなくてもじゅうぶん魅力的。


シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

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「イメージボード集」と同じ1983年発行の、この絵物語もほんっとに素晴らしい。


 最強のサントラ。


仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書)

 鈴木敏夫プロデューサーによるビジネス本(?)。この人がいなかったら、現在の宮崎駿の状況はあり得なかったと思う。

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