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死んだ目でダブルピース このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

名前:中山涙 (由来=ペンネームが決まりました!
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浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜 (マイナビ新書)
近著「浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜」(マイナビ新書)















2010-02-01(Mon)

太田プロダクションが設立された頃

| 太田プロダクションが設立された頃を含むブックマーク 太田プロダクションが設立された頃のブックマークコメント

 吉川潮の短編集「本牧亭の鳶」を読んだ。落語に関する著書が多い作者だけど、この作品集ではいわゆる色物の芸人さんばかり扱っている。


 ナンセンストリオ前田隣の一代記とも言うべき「梟の男」では、太田プロが設立された直後のエピソードが描かれていて、興味深く読んだ。

太田プロは新宿の松竹演芸場の支配人、磯野勉と、その妻で大部屋女優だった太田泰子が昭和34年に設立した芸能プロダクションだ。

 たけしや鶴太郎がネタにしてた太田プロの副社長が、元女優だったとは!


 ところで新宿に松竹演芸場があったとは知らなかった。調べたら、現在「新宿ピカデリー」があった場所。

参考:

新宿松竹文化演芸場 - Wikipedia

概要

新宿松竹会館(東京都新宿区新宿3-15)の地下に位置した演芸場。座席数365席。石井均一座の常打ち劇場であり、若き日の立川談志(当時柳家小ゑん)や漫画トリオらが腕を磨いた。また野末陳平野坂昭如と漫才コンビを結成して出演したことがある。

沿革

1958年10月28日 開場。

1962年8月12日 閉館。

 やってたのはわずか4年だけ。太田プロの設立は、演芸場立ち上げ直後の1959年。支配人が芸能プロダクションの社長を兼ねていたわけだ。


 それにしても、石井均はここで芝居をしてたのか。石井均伊東四朗西川きよしの師匠というスゴい人。

 小林信彦の「天才伝説 横山やすし」を引っ張り出したら、そのへんのエピソードが書いてあった。

天才伝説 横山やすし (文春文庫)

天才伝説 横山やすし (文春文庫)

 念のため石井均について説明すると、石井は1950年代末から新宿の松竹演芸場(いまの新宿松竹)で、一座の公演をしていた。石井均一座には、戸塚睦夫、財津肇メ(財津一朗)、伊東四朗がいた。

 石井はニュー東映で数本の映画に主演したが、ぱっとせず、ドタバタがいやになったのか、一座の解散を決意する。

 この時、恰好をつけるためか、

「気に入らない人間はおれを殴ってくれ」

 と言うと、額面通りに受け取った戸塚睦夫が石井を殴ってしまった。

 これが1961年。石井は大阪へ行き、なんと曾我廼家十吾(そがのや・とおご)に弟子入りして、松竹家庭劇の一員となる。

 その石井に西川きよしが弟子入りしたのが1962年。(後略)

 戸塚睦夫伊東四朗は、のちに三波伸介とともにぐうたらトリオ(のちのてんぷくトリオ)を結成。

 松竹家庭劇というのは、松竹新喜劇から脱退した曾我廼家十吾が設立した、「第2次」松竹家庭劇のことらしい。知らないことばかり。

参考:

曽我廼家十吾-笑辞苑


 えーっと、閑話休題

 石井均が抜けたあとの新宿松竹演芸場はすぐに閉館したけれど、太田プロは、三波伸介てんぷくトリオや、前田隣ナンセンストリオ東八郎のトリオ・スカイラインを引き入れ、いわゆる「トリオブーム」を作り出す。

 この短篇は、そのあたりの歴史もきちんと書いてあって、すごく面白い。


太田プロを実際に取り仕切っているのは社長夫人の副社長、磯野泰子、旧姓太田泰子で、芸人たちからは副社(フクシャ)と呼ばれていた。

 社名が「磯野」じゃなくて「太田プロ」で、実質取り仕切ってるのも夫人だとしたら、なんで夫人が社長をやらなかったんだろう? よくわかんないことが多い。


 フクシャは相当なやり手で、バンス(前借り)のシステムもかなり辛辣だったという。

太田プロの前借りのシステムは、十万借りると先に一万の利子を取られ、九万円しか渡してくれない。

 ギャラの取り分まで書いてある。1960年代、ナンセンストリオはギャラの7割をピンハネされていたとのこと。そりゃ、たけしも爆笑問題も独立するわ。


 ほかの短篇も面白い。

 物真似芸人の丸山おさむをモデルにした「九官鳥」は、身重の妻のために素人に混じってテレビ番組のオーディションを受ける主人公の、笑えて泣けるエピソードが描かれる。山本周五郎藤沢周平の人情小説のようだ。

 丸山おさむは、以前「ニャン2倶楽部」(あるいは「ニャン2倶楽部Z」)でインタビューされてたのを読んで知った。基本的にルサンチマンが溜まりすぎてる人。そこがたまらなく哀しくて面白かった記憶がある。


 しかしまあ、さすがに吉川潮先生は博覧強記でスゴい。ストーリーも良いけど、周辺のエピソードで感心させられまくり。

完本・突飛な芸人伝 (河出文庫)

完本・突飛な芸人伝 (河出文庫)