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死んだ目でダブルピース このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

名前:中山涙 (ペンネームの由来
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第25回(2012年)大衆文学研究賞・大衆文化部門を受賞しました!








2010-05-10(Mon)

野性爆弾が抱える二つの弱点

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 4月12日放送の「やりすぎコージー」特番で、野性爆弾の「くーちゃん」こと川島は「Onaraはずかしくないよ スペースかりそめ大明神バージョン」を歌い、見事に爆笑をさらっていた。


「Onaraはずかしくないよ」は、「やりすぎ」と同じテレビ東京の子供向けバラエティ番組「ピラメキーノ」から生まれたヒット曲である。

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 まあ、普通の大人が見ても、なんとも感じない曲である。

 初めに、はんにゃ金田らが原曲を歌いきったあと、それに対抗するという流れで、川島が、同曲のアレンジバージョンを披露した(というか、カラオケに合わせてヘンな詩を読むだけ)。

(語り)

「母さん 鬼の角って硬いんですか?」

「いいえ 思った以上に柔らかい そう、まるで生のホルモンのようよ」

「お母さーーーん」


(音楽スタート)

(再び語り)

天空にそびえるあの鷹を

我が拳で捕まえよう


この拳に宿った力は

貴様のあごタンに放り込む


夕焼けの色 それはまさにオレンジ

宇宙の8割 まさにオレンジ


あぁ 我が天命よ

スペースかりそめ大明神!!

 原曲にあった要素ゼロ! すさまじい破壊力である。


 さらに後半の「芸人バイト技選手権」では、若手芸人が、さまざまなアルバイトでつちかった技を披露したあと、千原ジュニアが川島に、どんなバイトをしてきたか訊ねる、というくだりがあった。

 川島いわく、一番印象的なバイトは、

「『邪坊主(じゃぼうず)』をしゃもじで叩く」

 というものだという。

ジュニア:(笑)邪坊主?

川島:邪悪なボウズですよ。

ジュニア:坊主のくせに邪悪な。

川島:そうですそうです。

ジュニア:それが邪坊主。

川島:邪坊主を「人閉じ込め」に入れて、

ジュニア:んー、なになに?(笑)

川島:「人閉じ込め」。小ちゃい、人閉じ込める箱があるんですけど、そこに邪坊主入れて、しゃもじでアタマ叩くっていうだけなんです。

ジュニア:え? 邪坊主、どうやって見つけるんですか?

川島:邪坊主、基本的に夜中ですね、でっかい「発光仏(はっこうほとけ)」というのがあるんですよ。

ジュニア:(苦笑)発光仏。

川島:発光仏が光りますとですね、夜中の2時を回りますと、邪坊主は自然と集まってきますね。

ジュニア:(川島に近づきつつ)邪坊主がファーって寄ってきたら?

川島:(ジュニアの腕を取り)「おい、邪坊主。貴様は邪坊主だな? 人閉じ込めに入りなさい」

ジュニア:(箱に入るしぐさで)はい、人閉じ込め、入った。

川島:で、ここに吊ってあるしゃもじをね、(振り上げて、振り下ろすしぐさ)ブインッ! ……っていうバイトをしてました。

ジュニア:(立ち上がり、無言でビンタ)


 こちらも、メチャクチャおもしろい。天才的な言語センスだと思う。

 たぶんアドリブではなく、入念に練った設定なのだろう。


 彼の芸風は、いわゆる「シュール」というやつだ。彼本人だけじゃなくて、野性爆弾のコント自体が、猛烈にシュールだ。

D


 だがこの芸風は、彼らの弱点であるとも言える。

 一般的に言って、シュールな芸を武器にする芸人さんは、売れるのが難しい。

 たとえば、よゐこは、もともと絵に描いたようなシュールなネタを演じていたが、彼らはネタで売れたわけではない。

めちゃイケ」の前身番組で、テレビ的なコメント芸の基本を学び、さらにウッチャンナンチャンにキャラクターの長所を引き伸ばしてもらって、徐々に知名度と好感度を上げていった。

 また次長課長は、もともと井上が作ったシュールなコントを得意としていたが、ブレイクのきっかけは、河本の「オメェに食わせるタンメンはねぇ!」という、ベタな顔芸だった。

 両コンビとも、ライブなどでネタを演じるときは「シュール」に戻るが、テレビ的には、ベタな笑いにシフトすることで売れっ子になった。


 そもそもシュールな芸は、テレビではあまり需要がない。

 唯一、芸風を変えずに第一線で生き残っている芸人はホリケンぐらいだろう。

 ネプチューンは、ホリケンと原田泰造のシュールなボケと、名倉のベタななツッコミによって、三人だけでテレビ的に成立する笑いを生み出した。

 ホリケンと泰造の、ダブルボケの旧コンビ「フローレンス」では、全国区で通用するタレントにはなれなかったと思う。

 だが、そのホリケンにしても、「ネプリーグ」などでは空気と化していることが多いのだから、もったいない話だ。


 しかし最近、野性爆弾・川島が「ベタなボケ」に移行しつつあるきざしを感じてしまった。

 5月8日放送の「人志松本の○○な話」特番で、川島は、センパイの千原ジュニアに対して理不尽なキレ方をして怒られ、泣き出したあと、

「なんや、くーちゃん、反省してんのか」

「いえ、『シザーハンズ』思い出してました」

 という、吉本特有の「団体芸」的な、ベタなくだりを演じていた。

 この流れ、僕の記憶だと、最初は「センパイに対して理不尽なキレ方をする」という、川島による単独のボケだったはずだ。後半部分のベタなやりとりは、あとから足されたものだと思う。

 このタイプの笑いなら、ゴールデンタイムでも通用するだろう。しかし、これでは川島の本来の面白さが殺されているような気がする。


 野性爆弾には、もう一つの欠点がある。

 それは、オーソドックスなツッコミがいないことだ。

 一応、コントではロッシーがツッコミ役を演じるが、私生活では完全な天然ボケなため、トーク番組では、いじられ役となる。

 そして川島の「シュールなボケ」を拾ってくれるMCは、そう多くない。

 若手芸人がコンビとしてトーク番組に出るときの理想は、おぎやはぎのように、相方の話をしたり、コンビ同士で話を振り合うことによって、MCとの間に三角形を作ることである。

 野性爆弾には、それができない。


 願わくば、川島のボケをそのままの形で使わせてくれる番組が、もっと増えてくれれば、と思うのだけれど。

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