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2010-07-28(Wed)

町山智浩が語る、究極の恋愛論

| 町山智浩が語る、究極の恋愛論を含むブックマーク 町山智浩が語る、究極の恋愛論のブックマークコメント

結婚失格 (講談社文庫)

結婚失格 (講談社文庫)

 前回のエントリーの続き。

前回のエントリー:

ダメな夫は必読!「結婚失格」に学ぶ、結婚生活の難しさ

 結婚というのは難しい、という話です。あるいは、恋愛とは何か、という話です。

 まあ、このブログのメインテーマからは、大きく外れる題材なんですけど。


 7月20日、新宿歌舞伎町「BE-WAVE」で、枡野浩一さんの「結婚失格」発売記念イベントが開催されて、ゲストとして、巻末で解説を書いた町山智浩さんが登場した。

 その様子はユーストリームでネット中継された。「結婚失格」の解説に続く、町山さんの「公開説教」第二幕である。

http://www.ustream.tv/recorded/8396983

 これが、ものすごい説得力だった。

 以下、あまりにも心を打たれたんで、その一部を書き起こしてみます。


 全編聴きどころ満載なんだけど、盛り上がってくるのは30分過ぎたくらいから。

 町山さんは、枡野さんが奥さんと別れた時の心境について、厳しく追及する。

町山:枡野くんは、前の奥さんと一緒になることを優先させたかったの? 一番最優先だったの、それは? それとも、自分のプライドを守ることだったの?

枡野:それは……、違うと思いますね、あの……、

町山:どっちだったの? いま訊いてる質問にちゃんと答えて。

枡野:あのー、、、はい。

 俺が枡野さんだったら、たぶんこのへんでおしっこ漏らしてる。


町山:もし彼女を取り戻したかったんだったら、勝とうとするなよ! 君は、でも勝とうとしたじゃないか。その段階で君は、彼女よりも自分を優先したんだ!

 そんな、、、自分を彼女よりも優先した人が、彼女から、取り戻してもらえると思う?

 ……強烈すぎて耳が痛い。

 聴いていて、町山さんの言葉が、全部自分自身の胸に突き刺さる。


町山:相手、わかるよ。あ、この人は、あたしよりも自分を守ろうとしてると。あたしに降参する気はないんだと。あたしがほんとに欲しいのか、自分が大事なのかっていったら、自分が大事なんだと。

 誰も戻らないと思うよ、それは、絶対に。だって自分が大事なんだもん!

枡野:(何か言おうとする)

町山:「何が一番大事なんだ、自分で」って考えるんだ、まず! そうしなければ、何も得られないよ!

枡野:……おっしゃる通りです。

町山:だってほんとに彼女が欲しかったら自分を捨てるべきだったのに、自分を捨てられなかったんだから、彼女を失うのは当たり前じゃん!

 それで、君が一番望んでた結果っていうのは、彼女が降参することだったんだ? ワタシが悪うござんしたって言って、戻ってくることだったんだ? あり得ないよ、それ!

枡野:えーと、、、

町山:論理的に考えればわかるじゃん、それ!


町山:あのね、不公平感っていうのが出てきたら、まず恋愛は成り立たないんだよね。

 オレがこれだけやったのに、彼女はこれだけ返してくれなかった。もうそれは取引だもん。それ恋愛じゃないわ、それ。

 恋愛っていうのは、ぜんっぜん、彼女が何もしなくても、オレが全部やってやる!っていう気持ちになってるときは恋愛だけども、オレがこれだけしてやったのに、彼女はこれだけ返してくれない。取引だよ、それ! 等価交換をしようとしてるんだよ。それは、経済ですよ! 恋愛ではないです、それは! そうなったら恋愛は終わりです!


 町山さんは、恋愛=ロマン主義=ロマンティックというものは、「愛はすべてに打ち勝つ」、つまり法律や倫理や現実に勝つという幻想であり、理想であり、「反社会的な行為」であると解説。

町山:だって愛は、、、(枡野に)「お前が好きだ、だから銀行強盗するぞ」っていう時、銀行強盗する?

枡野:……しないですね。

町山:そしたらその人とはセックスできないじゃん。

枡野:ずっと僕は、配偶者の人が、ルール違反みたいなことをすると、守るどころか、非難してましたね。

町山:もう、そこにロマンティックは、カケラも無いな!

枡野:はい。あのー、この本(「結婚失格」)にも書いてますけど、この主人公の奥さんが、保育園の、会長か何かに選ばれそうになって、泣きながら帰ってしまったと。そのあと夫は何をしたかというと、「みなさんすみません、うちのわがままな妻が」って言って謝りに行ったんです。

町山:それは最悪な行為だよね。

枡野:はい。その時に、そんなことをせずに、どんなに反社会的なことをしていても、夫なんだから味方になってあげるべきなんじゃないか、

町山:その通り!

枡野:って、やまだないとさんはおっしゃってましたね。


 結婚というものは本当に難しい。

 たとえば僕自身の経験から言うと、自分の母親とツマが反目し合った時、僕は20代なかばくらいまでは(当時はまだ結婚してなかったけど)「どちらの言い分が正しいか」を見極めて、自分が正しいと判断した方の味方をするようにしていた。

 でも、それは間違っているんだと、途中で気づいた。

 母親に対しては、

「今後、自分は彼女がどんなに正しくないことを言ってても、彼女の味方につくから!」

 と、宣言して、あきらめてもらった。

 それでも母親がツマへのイヤミ的なことをグチャグチャ言ってきたら、できるだけ早くキレるように努力した。まあ、イヤミに気がつかなくて、あとでツマに怒られることも多かったんだけれど……。


 彼女のために母親と敵対する、というのは、当時の僕にとっては、そこそこの冒険的行為だったんだけど、町山さんは、さらにそこから一歩進んで、彼女のためなら社会全体と敵対することも覚悟しろ、と言っている。

 この発想はなかったなあ……。恋愛って、これほどの覚悟が必要なものなんだな……。


 それから全然関係ないけど、10代の女の子がDQNに惚れてしまうのは、連中の反社会な行為を見て、

「この人は、自分のために、ここまでしてくれるんじゃないか?」

 という幻想を抱くからではないだろうか?とも思った。


 そして町山さんは、枡野さんが常日頃から論理や倫理を振りかざして元奥さんを苦しめていたのだと指摘。

 そこから、町山さん自身の体験談が始まる。

町山:たださあ、オレもそれをやったから。今言った通り、やったから、壊れたことがあるけど、何回かね。

 その時にまず思ったのは、お前は何でオレのことを嫌いになるんだと。オレは別に、、、たとえば口喧嘩だけはしてもさ、それ以外に、何も違反行為をしてない、、、(枡野に)理不尽だと思ったわけでしょ? それで。

枡野:はい。

町山:それで「オレは悪くない」ってことを、言おうとはしなかったのね、その時。

 なぜ離婚しなかったかって話を、聞きたいだろうから戻るけど、

枡野:はい、町山さんの場合は。


 ここからの話は、並大抵の男にできることじゃない。

町山:それはもう、それでもうダメ。オレがそこまでやったってことは失敗だったから。積み上げていったこと自体は、もう失敗だと。

 これでどうやって結婚生活を維持していくか。もう過去のことは追求しないし、過去どうしたってことを、やめたんだ。

 そこから先、新しい恋愛を始めようとしたの、カミさんと。

 で、どうやったら、カミさんがオレのことを惚れ直すだろうかということだけを考えた、その時。

 もうゴチャゴチャ言うのはやめた。女から見て、どういう風に振る舞えばカッコいいかってことだけを考えたよ、カミさんから。

 何にも責めない。で、一切負担掛けない。

 だから、ハッキリ言うと寝なかったけどね。

 あのー、その時、最初の本を出したのね。映画の見方の本を出したんだけど。

 あの時は、家事全部やって、子育てやって、あの本書いて、、、あの本、すごく短い時間で書いてるんだよ。慌てたから。

 その本を出して、それで、もうはっきりと宣言して、年収を3倍に持ってくって言ったの、その時。……4倍に持ってったけどね、最終的には。だから、寝てなかったけれども、、、

 そしたらカッコいいじゃん! とりあえず。

「お前のためにやったよ」って言ったの、オレは。

 とりあえずさ、今失敗しちゃったってことを、グチャグチャやるんじゃなくて、そこから、ゼロから惚れさせるしかないって思ったよ、その時は。

 男前すぎるでしょ! こんなの、誰だって惚れるよ! ちなみに「最初の本」っていうのは、たぶん『映画の見方がわかる本―「2001年宇宙の旅」から「未知との遭遇」まで』 のこと。すんごい名著。


町山:オレ、だって1年ぐらい家庭内別居だっもん。ソファに寝てたもん、オレ。

 そうやったらある日、カミさんが、メシ食ってて、、、

 メシも作ってたのね。でも「家事してるよ」とは言わなかった、一切。黙ってやって、黙ってやって、それで夜中、カミさん寝てる間も原稿書いて、やってて、、、

 ある日、一年くらいかかったけど、収入増えたのも、黙って見せてさ、、、まぁ黙って見せなくても、見せなきゃなんないから見せたけど、そしたらある日突然、カミさんが、

「今日から一緒に寝ていいよ」

 って言ってくれたの。

 で、その時に、

「ほら見ろ!」

 とか、オレは言わなかったし(笑)、ただ黙って「うん」って言ったけどね。

 実はそこで新しい恋愛をしてたんだよ、ふたりで。

枡野:でも、それは、聞くだに、僕には無理ですねぇ……。

観客:(笑)


 いろいろと思うところはあるけど……。

 たとえば本が全然売れなくて、年収が全然増えなかったらどうしてたのか、とか。

 働きすぎてカラダ壊してたらどうしてたのか、とか。

 それから、結局は愛をお金で買ったことになるんじゃないか、とか。

 家事とか子育てを全部引き受けちゃうというのは、奥さんの役目を奪ってしまって、負い目を与えてしまうんじゃないか、とか。


 でも、そんな思いは、実際にやってのけた町山さんの英雄的なカッコ良さの前では、簡単に吹き飛んでしまう。

 相手への気持ちを持ってるんなら、ここまでやるべきなんだろうな。たとえ、結果的に「片思い」に終わったとしても。


 結婚という行為には、社会的契約であるとか、セックスであるとか、子供のこととか、色んな要素が絡まってくるけれども、やはり根っこは恋愛であるべきなのだと思う。

 それを忘れてしまった夫婦は別れるべき、というのは言いすぎかな?

 僕自身、結婚と恋愛について、まだ答えは見えていません。

hiroto232001hiroto232001 2010/07/30 02:06 町山さんに言われたら何でも正しいてとこありますよね。ニッチなサブカルライターが年収3倍にするって宣言して4倍にして今や押しも押される人気作家ですもんね。しかし町山さんのかっこよさ全開でしたね

karatedoukaratedou 2010/07/30 07:59 コメントありがとうございます。
真似したいけど、ハードル高すぎですよね…。

tyokoratatyokorata 2010/07/30 15:21 逆に言うとそこまでしないと維持できな、誰にも簡単にまねできないと言う時点で、何かしらの無理が…。

お互いに期待しすぎるから疲れるんだと思います。

でもいいことを言っていると思いました

karatedoukaratedou 2010/08/01 03:39 コメントありがとうございます。
「理想」「幻想」ですもんね。
フツーの夫婦は、試行錯誤しつつ、自分たちなりの関係の在り方を模索してゆくしかないんでしょうね。

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