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浅草芸人 〜エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史〜 (マイナビ新書)
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2013-03-11(Mon)

「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」感想

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 クリス・アンダーソンの「フリー 〈無料〉からお金を生み出す新戦略」を読んでみた。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

 2009年に出版されてベストセラーになった本だから、知ってる人にとっては「何を今さら」な話だろう。

 僕は、ふだんビジネス書をまったく読まないので、水道橋博士のメルマガで紹介されるまで、その存在すらも全然知らなかった。お恥ずかしいかぎり。


 以下、博士の日記より引用。

商品は食品が典型的なように、時間経過で過去になった途端に、限りなくゼロ円に近づく。

同じく活字や映像も時間経過で商品価値をなくす。


でも未来のためには限りないゼロ円も価値を持つ。

コンテンツを扱う人は、クリス・アンダーソン著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(NHK出版)を読んだほうがイイ。

 ……で、読むことにした。僕も、ささやかながらコンテンツを発信する立場なので(笑)。

 読んでみて、目からウロコの記述ばかり。


 内容は多岐に及んでいる。

 どの章でも、サブタイトルの通り、〈無料〉からお金を生み出す、という一見矛盾しているように思える商法や考え方、その歴史などを紹介している。


 僕にとって最も身近で切実な問題は、書籍というジャンルについて。

 もうホントに売れないんですから。

本は印刷物の中でも特殊で、高級誌と同じくほとんどの人から紙のバージョンがいまだに好まれている。ありがたいことに、書籍業界はレコード業界のようにまだ崩壊していないが、それでも数百人もの作家(と数社の出版社)がフリーを利用した独自の実験をおこなっている。

「独自の実験」とは、オンラインを通じて、書籍を無料で公開することだ。

 日本でも、「ブラックジャックによろしく」の佐藤秀峰さんがそういう試みをして成功している。……まぁ、もともと売れていた方ですけどね。


 無料書籍のビジネスモデルの大半は、いろいろな形のフリーミアムにもとづいている。数章分を期間限定でダウンロードできる場合でも、印刷物そっくりのPDFファイルでまるまる一冊を無期限で入手できる場合でも、デジタル形式にすることで、できるだけ多くの人に試しに読んでもらい、その中から買ってくれる人が現れることを期待する方法をとっている。

 フリーミアムというのは「基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデル」とのこと。……たった今、Wikipediaで調べましたw


 著者は、具体的な例も示している。

 そのひとつは、アメリカのフラット・ワールド・ナレッジ(FWK)という出版社のビジネスモデルである。

 同社は、大学の教科書をネット上に無料で公開しているが、同時にさまざまな工夫によって収益を得ているそうだ。

書籍の教科書の内容は章単位に分割され(あるいはバージョン化され)、さまざまなフォーマットと購入選択肢に変えられる。その結果、できた製品ラインナップは、より多くの学生にアピールする。たとえば、ある学生は、オンラインで教科書全部を読みたくはないが、中間テスト対策に数章分をMP3形式で買うかもしれない。

「MP3形式で」っていうのは、オーディオブックで、ってこと。

 教科書を音声で聞くというのは、日本だと「???」って感じだけど、アメリカだとよくあることなんだろうか。


 FWK社の教科書の、細分化された購入選択肢は以下の通り。

*デジタルブック…………………………………………無料

*印刷本(モノクロ)…………………………………$29.95

*印刷本(カラー)……………………………………$59.95

*印刷可能なPDFファイル(テキスト全部)……$19.95

*印刷可能なPDFファイル(1章分)………………$1.99

*オーディオブック(MP3)…………………………$29.95

*オーディオチャプター(MP3) ……………………$2.99

*オーディオサマリー(10分間)……………………$0.99

*eブック・リーダー(テキスト全部) ……………$19.95

*eブック・リーダー(1章分) ………………………$1.99

*フラッシュカード(テキスト全部)………………$19.95

*フラッシュカード(1章分)…………………………$1.99

 eブック・リーダーというのは、ふつうに考えると、Kindleみたいな電子書籍用の端末のことなんだけど、この場合は、そういった端末用の形式に則したデータってことだと思う。

 それと、フラッシュカードっていうのは、コンパクトフラッシュのことだろう。デジカメで保存する時に使うヤツ。データ形式がどうなってるのかは不明。


 大学の教科書は古本屋で買う人が多いから、出版社はそれによってダメージを受けていたけれど、FWK社は、このビジネスモデルを採用することで古本市場を叩こうとした。

 オープン・テキストブックの総売り上げと、紙の書籍のみを発行したときの売り上げの経緯を比較すると、6年目で前者が後者を上回というデータが掲載されている。

 ……ということは、5年目までは赤字覚悟なわけか。

 これは、同じ本が毎年売れ続ける、大学の教科書という特殊なジャンルだからこそ成り立つビジネスモデルなんだろう。


 小説についての例もある。

 たとえばSF作家のニール・ゲイマンは、2008年に『アメリカン・ゴッズ』のデジタル版を4週間、無料ダウンロード提供した。

 結果は大成功だったという。

『アメリカン・ゴッズ』はベストセラーになっただけでなく、書店におけるゲイマンの全著作の売上げが、『アメリカン・ゴッズ』を無料で提供したあいだに4割も伸びたのだ。85000人がオンラインで彼の書籍を試し読みし、平均で46ページ読んだ。半数以上の人はオンラインで読書をするのはいやだったと答えているが、それは読みやすいハードカバーを購入するインセンティブとなった。


 こんなふうに、うまくいくといいんだけどなぁ。

 ……という感想で終わらせちゃいけないですねw


 この本の中で書かれているけれど、「無料からお金を生み出す」という考え方は昔から存在していた。スーパーの試食コーナーとか。本屋で立ち読みが可能なのも、そういうことだ。それがネットの時代になって大幅に拡大した。

 著名なライターが、ギャラのでないブログやツイッターで文章を精力的に発表し続けるのも、「無料で読める媒体」で文才とか発想とか人柄をアピールするためだ。


 たぶん「フリー」という商法で黒字を出すためには、コンテンツの内容ごとに、ビジネスモデルを変える必要がある。

 たとえば僕が、本書に出てくるFWK社やSF作家、あるいは佐藤秀峰さんのやり方をそっくり真似しても、良い結果は出ないだろう。

 実際、図書館やブックオフのせいで生活に苦しんでるライターは山ほどいるわけだし。


 僕はライターの立場でこの本を読んだけど、おそらくこれからの時代、どんな立場であっても参考になる、というか意識せざるを得ない本です。


 あ、ところでこの本って、書籍版は1890円なんだけど、Kindle版は今だと476円。安っ!

フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略

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 いろいろ考えてるんですねー。