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上遠野浩平先生の「私と悪魔の100の問答」オススメ!

2009-04-17

[]けいおん! ポテトと値切りのくだりの解説 吉田玲子の本領発揮


けいおん!が面白い。きらら系の4コマ漫画なので、原作はもろ私のツボであるわけですが、アニメも予想以上に面白い。アニメでは、特にシリーズ構成と脚本の吉田玲子さんがキレている。(と思う)


この記事では、以前話題になった第一話の「紬がポテトを入れるくだり」と、その解答としての第二話での「ギターを値切るくだり」の関連性を示す。



ポテトのくだり


948 名前: 風の谷の名無しさん@実況は実況板で [sage] 投稿日: 2009/04/06(月) 17:51:22 ID:zLQ7oBkJ

ところで、なんで紬は律にポテトあげたんだ…?


今日もやられやく:『けいおん!』第1話でなぜ紬が律のポテトの中に自分のポテトを混ぜたのか


けいおん!第一話で、律のポテトに紬のポテトを混ぜるシーンが一時期話題になった。まずは、このシーンがどういったシーンであるのかの説明をする。


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けいおん! 第01話 ポテトのくだり


澪、律、紬の三人がファーストフード店で話し合いをするシーン。会話の最中に、紬は律がポテトを容器から出す仕草を見る。そして、自分のポテトを見て、顔を赤らめたあと、自らのポテトを律のポテトに混ぜる、というシーンだ。この動作に対して、キャラクタ達は、特に何も触れない。


このシーンの自体意味は、それ単体ではさほど考える余地は無い。これは単純に、紬が「一つにしたポテトをみんなで食べるのをやってみたかった」、及び「律の真似をして、こういう食べ方をしたかった」というところだ。(今日もやられやくさんで紹介されているコメントにもこのような指摘が沢山されている)


問題は、なぜ原作に無いこのようなシーンを吉田玲子が挿入したのか、というところにある。第一話を見た時点では、私は単純に紬というキャラクタを立たせるために入れたシーンだと考えた。つまり、俗っぽいことに憧れを持つお嬢様キャラ、というものを引き立たせるための演出だ。また、友達が非常に少ない(少なくとも俗っぽい人はいない)キャラクタという意味もあると思う。しかし、本当の意味はそうではなかったという事が、第二話を見て明らかになった。それを考える際には以下のセリフが非常に意味を持ってくる。


紬「私ファーストフードのお店初めてで」

律「え〜、そうなの!」

紬「ご一緒にポテトもいかがですか、って言われるの憧れてたんです


けいおん! 第01話


この「俗っぽい物への憧れ」というものが第二話で強く意味をなしてくる。また、「みんなで食べる」は「友達としての繋がり」という意味で、非常に大事であるが、「律の真似をした」というところは、あまり意味を持たない。にも関わらず、紬の動作のアニメーションはむしろ「律の真似をした」の方が強調されることに違和感があったが、これは第二話への伏線だった。



値切りのくだり


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けいおん! 第02話 律がドラムを値切った話


では、次に「値切り」のシーンがどういうものかの説明をする。まず、軽音部四人で、唯のギターを買いに楽器屋にいく。そして、そこで、各々の楽器の購入エピソードを話す段になり、そこで、律がドラムを買う時に「値切った」という。その発言を聞いて、紬が律に問いかける。


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けいおん! 第02話 紬が「値切り」の意味を聞く


紬「あの〜“ネギリ”って?」

律「欲しいものを手に入れる時、努力と根性でまけさせるものだよ!」

紬「すごいですね! なんか憧れます!


けいおん! 第02話


そして、一旦話は離れ、高価な唯のギターを買うためのバイトを始める。このアルバイトを行うというエピソードもアニメ独特のものである。このエピソードの意味は、


第二話のギターを買うためにみんなでバイトをするというエピソードで,唯は,みんなと一緒にひとつの目標(音楽・バンド)に向かって努力するという楽しみを経験し,また,みんなが「惚れた楽器をどうしても手に入れたい」という唯の気持ちにも理解を示してくれる…同じ気持ちを共有できる仲間であることを実感する.


何故彼女たちはバイトをする必要があったのか? 〜けいおん!〜 - WebLab.ota


で述べられているので、詳しくは上記リンクを参照。このアルバイトのくだりで、大事なのは、四コマ漫画では許される表現(文法)が、アニメにすると違和感があるという感覚を、吉田玲子山田尚子がしっかりと持っているということだ。WebLab.otaでは、主人公唯のモチベーションの不足を原作の不備であると指摘しているが、四コマ漫画の文法では、あまり大きな不備とは言えない。むしろねちっこくモチベーションを書かれた方がタルイ。(四コマにおいて、妄想を殺がない行間作りや省略は大事なセンスだ)しかし、アニメーション(実写映画とか、ストーリー漫画もそうだけど)ではそうは行かない。キャラクタのモチベーションの由来は、後のカタルシスの開放に深く関連する。(つーか、そもそも四コマにとって、最後のカタルシスへ向かっていく性質ではない)


しかし、唯のバンドへ強い気持ちの起源という観点から考えると、「みんなで一生懸命アルバイトをして、購入」という方が、強くなる。なぜそうしないのか。そこは、原作準拠の京都アニメーションといったところだろう。(尺の問題ではないと思う。尺は、音楽バックの回想にでもすればいいし、値段も25万円じゃなければ非現実的ではない。元の15万なら、高校生4人で150000/24000≒6日で溜まる)(花田さんや黒田さんあたりなら、たぶんアルバイトで買わせる)


閑話休題


主人公の唯は高価なギターの購入を諦め、安いギターを購入すると言い、もう一度4人で店を訪れる。その際、唯が高価なギターにこだわりを見せている唯の様子を見た紬が行動を起こす。その行動が値切りだ。


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けいおん! 第02話 紬がカウンターで値切る


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けいおん! 第02話 紬嬉々として「もう一声」


紬が高価なギターを値切るというシーンは、原作でも存在するシーンだ。原作との違いは、紬が嬉しそうに値切っているという点だ。原作では、アルバイトのシーンも無く、初めて店を訪れた時にサラリと値切る。


もうお分かりだと思うが、先の「ポテトを混ぜる」シーンはこの「値切り」のシーンの為に設けられている物である。ここで紬は、ドラムを値切った律の真似をしているのだ。このことは、顔を赤らめ、楽しそうに値切っていることから想像に難くない。「やったことがなかったから、やってみて嬉しい」のだ。


また、ここで何の情報も無く値切るという行為を自然に行ってしまうと、紬が権力を振りかざすような行為を日常的に行っているように見えなくも無い。また、描写の仕方によっては、アルバイトで一致団結にした気持ちをサラリと踏みにじるような物になってしまう危険性がある。そうならないように何をやったかというと、「ポテトを混ぜる」により、一緒に何かをやることへの憧れの伏線を張っておき、「アルバイト」によって、唯だけでなく紬にも、みんなと一緒にひとつの目標(音楽・バンド)に向かって努力するという楽しみの経験及び唯の本気度を認識させ、紬のモチベーションを上げたと考えられる。


初めて店を訪れた時は、「紬の欲しいもの」ではなかった「唯の欲しい高価なギター」。しかし、アルバイトのくだりにより、友人の本気、このみんなでバンドをやりたい気持ちが高まり高価なギターは「紬の欲しいもの」になる。(ここで、みんなでやりたいという気持ちも、ポテトで示されている)そこで、努力と根性が必要な「値切り」を行うのだ。(ただ、初めてで「やってみたかった」ことなので、楽しんではいる)



まとめ


紬の「ポテトを混ぜる」というのは、後の「値切り」を自然に見せるための伏線であったと考える。「紬が律の真似をしたい」という伏線と、「みんなで一緒にやりたい」の補強が「ポテト」の意味である。それにしても、カレイドスターシリーズといい、マリア様がみてるといい、女の子同士の絆を書かせたら吉田玲子さんは素晴らしすぎる。ブラボー!!




――――――――追記――――――――


まずバランス感覚の話だが、今回の話は「原作通り」「バイトして入手」「バイトしてから原作通り」のどれをを取るにしても、かなり難しい選択だといえる。バイトせずに値切ったらゆいがギターを労せずに手に入れて、物語的な正しさが無い流れになる。かといえばバイトのみで入手してもまなb・・・じゃなかった、流れ上くどい感じになり一見さんが離れる可能性がある上に、京アニというブランド性から見ると非常に不味い原作の根底部分を改変してしまう事になってしまう。


以上の事から考えて、バイトとオチがかみ合ってない事は、上記の事と比べるとまだ些細な問題だともいえる。この辺京アニ、というか吉田玲子さんと山田尚子さんの絶妙なバランス感覚が持ちえる技だろう、と推測する。


けいおん! 第2話 と物語的な正しさと原作との間のバランス感覚


う〜ん、これは納得。あと、補足の記事を書きました。


けいおん! ポテトと値切りのくだりの解説の補足



<関連リンク>

けいおん! 第2話 と物語的な正しさと原作との間のバランス感覚

けいおん!(アニメ)は原作とテーマが違ってきているって話と花田十輝



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trshugutrshugu 2009/04/17 17:36 ぐぬぬ・・・これは良エントリ・・・!!

ああああああ 2009/04/17 21:08 いや、これは 「御一緒にポテトもいかがですか」 を
「(皆さんで)御一緒に」 と勘違いしたっていうギャグでしょ…

karimikarimikarimikarimi 2009/04/17 21:13 >>trshuguさん
ぐぬぬ……ありがとうございます……。

karimikarimikarimikarimi 2009/04/17 22:25 >>あああさん
>>ギャグ
なるほど。それは面白い考えですね。

n_euler666n_euler666 2009/04/17 22:32 これはギャグだったのかww

taiutaiutaiutaiu 2009/04/17 23:09 最後まで読んで
ギャグ説が一番腑に落ちたw

sksk 2009/04/18 15:13 ギターをアルバイトで買わせていないのはそうすると唯と三人の関係が対等ではなくなるからだと思いますよ
25万のギターが欲しいのは言ってみれば唯のエゴでしかないわけですから、予算内で買える安いギターを買わず25万のギターを買うために他の三人にアルバイトをさせると三人に対して「借り」ができてしまう。その「借り」をバンドを成功させることで返すという展開はありでしょうが、逆に言えばバンドを成功させるまで唯は三人に対して借りをつくったまま=対等ではない関係ということになってしまう。これを嫌ったのでは?
ムギに値切ってもらうことが「借り」にならないのはkarimikarimiさんが書いた通りムギが値切りをやってみたかったから=ムギのエゴによって生じた行為なので、ムギがその行為に満足した時点で貸し借りはなくなりますし(唯はギターが安く買えた、ムギは値切りができて楽しかった
そう考えるとムギの演出は四人の関係性を崩さないためにも必要だったのではないかと

karimikarimikarimikarimi 2009/04/18 16:32 >>skさん
悔しいぐらいになるほどと思ったので、記事に引用させていただきました。

ikas2ndikas2nd 2009/04/25 11:14 興味深い考察でした。
トラックバックをお送りしたんですが
間違って二回行ってしまっているかもしれません、すみません。

karimikarimikarimikarimi 2009/05/01 00:03 >>ikas2ndさん
お褒めの言葉とトラバありがとうございます。
トラバは問題なかったようですね。

R8V8R8V8 2009/06/13 15:46 イヤーそんな意味があったとは、単純に律のドラムの話を聞いてまねしたとしか思わなかった。

言われて見れば、そのシーンをさらっと流せたのもポテトのくだりがあったからなのか。  納得です。

karimikarimikarimikarimi 2009/06/13 23:33 >>R8V8さん
まねをした、っていうのも非常に大事ですよね。

すずめすずめ 2010/04/24 15:52 僕はいらない人間じゃないんだ。

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