2009-05-13
■[漫画]咲-saki-は能力バトル漫画としてみても素晴らしいという話
- 作者: 小林立
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2009/03/25
- メディア: コミック
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上の記事では咲-saki-に出てくる能力をのことを「超能力」然としてると指摘しています。それはその通りであり、間違いないと思います。今回は、咲-saki-を「超能力」を持つキャラクタ達がおりなす「能力バトル漫画」という見地(つまり、バトル漫画の文法)を用いて、読み解いていきたいと思います。
咲の能力:嶺上開花の使い方が巧み過ぎる
今回一番言いたいのが、咲の能力である「嶺上開花」または「嶺上」のことです。咲の勝負漫画上でキチンと書かれているのは、実質2戦です。一回は、始めの和との戦い。この戦いでは、咲の凄さを描写するのと、咲のキャラクタの特性(プラマイゼロ、及び嶺上)を説明しています。そして、もう一つが、海底摸月を得意とする天江衣との戦いです。こちらの戦い、特に能力の配置に小林立先生のセンスを非常に感じます。
どういうことかと言いますと、衣と咲の戦いは、咲が「槓」と「嶺上開花」という能力を持っていることを認めてることにより、非常に面白い能力バトル漫画のバトルとなるからです。衣の能力は「海底摸月」であり、そのために他家が何故か上がれないという圧倒的な能力を持っています。作中でも指摘されているように、衣の能力の本質は「他家」の支配です。この能力配置が、非常に素晴らしい。というか、衣の「海底摸月」という能力は、咲の「嶺上開花」という能力を魅力的に描写するために配置されたものとすら感じます。
これは、どうしてかといいますと、咲の能力である「嶺上開花」のための「槓」の麻雀において持つ特性が漫画的ハッタリを引き出すのに非常に適しているからです。ご存知のように「槓」をするとドラが増えます。このドラを増やすという行為によって他家の手を高めることができます。また「槍槓」によって他家を上がらすことができます。この二つの特性、つまり咲にだけできる他家の特殊な干渉性が、バトル漫画風に言うところの「活人拳」的な役割を担えるという事です。
衣の能力は「海底摸月」をする。その為に支配されてしまった他家を「活人拳」によって盛り上げるというのは、バトル漫画の主人公らしい、カッコよさがあります。また、「海底摸月」をするまでの支配なので、嶺上牌は支配が及ばないというのも、説得力がある漫画的ハッタリとして素晴らしい。これらの説得力のあるハッタリの積み重ねにより、強大な能力を持つ敵を倒すというプロセスは非常に燃えるものがあり、バトル漫画の素晴らしいところです。
桃子の能力:ステルスモモは何故出てきたの?
桃子が出張ってきた理由としては、戦いに緊張感を持たせるためなど、様々な理由が考えられます。その中の一つに「和」の能力を際立てさせる為というのがあります。最強くさい「ステルス」の能力のカウンターとしての「和」の能力を見せるつけるのです。
咲では、ある能力が「最強」でありえないように、必ずといっていいほど丁寧にカウンターとしての能力を描写します。「ステルス」に対する「完全デジタル知覚」。まこの「状況酷似想起」に対する「初心者」。「海底摸月」に対する「嶺上開花」。「嶺上開花」に対する加治木の「槍槓」。この相手の強力な能力のスキを縫って戦うというのは、バトル漫画としての面白みの一つだと思います。
全中一位 原村和の存在の意義と意味
一巻(読みきり時代と言ってもいいかも知れません)には、全国中学生麻雀大会個人戦優勝のキャラクタとして原村和が出てきます。これは、同じ麻雀漫画で言えば「天」でいうヒロユキの役割を果たすキャラクタ配置。つまり、「理論的に非常に優れている」打ち手としての存在意義があります。このキャラクタがいることで、この漫画において「理論的に最上級の打ち手」の強さがわかり、それにより強さの基準が出来ます。この基準の設定は、バトル漫画では非常に重要なことになります。
ドラゴンボールで言う、ゴハンが学校に通っている時みたいな物で、この「理論的に非常に優れている」和をコテンパンにする事で、咲の強さが際立ちます。また、「理論的に非常に優れている」打ち手を「良くわからない能力を使う」打ち手が勝つ事により、この漫画においての世界感を提示しています。
圧倒的な敵に負ける 及び 昨日の敵は今日の敵 及び 修行でパワーアップ
一度圧倒的な敵に負けて、己の無力さを自覚するというイベントはバトル漫画の典型的な文法です。咲-saki-でも、カツ丼さんとの勝負に咲と和を負けさせることにより、この二人がこの世界ではまだまだ力不足であることを分かりやすくあらわします。(また、この戦いがハイライトに近い事は、主人公が強い物語においての典型の一つである。テニスの王子様の越前×手塚戦よろしく)そして、カツ丼さんよりも強いという衣の存在を示唆して、物語の緊張感を強めます。これをしないと、咲が強すぎるので緊張感がなくなりますし、何より、バトル漫画においては勝てそうに無い強大な敵の存在は重要なガシェットです。
そして、勝てそうに無い敵に打ち勝つために、修行を行ってパワーアップします。この「修行→パワーアップ」もバトル漫画のもっともポピュラーな文法です。(なおストライクウィッチーズの日々さんによると、麻雀漫画での「強化合宿」は鬼門らしいです)
それと、バトル漫画では、戦った敵は味方になります。清澄のメンバーはもちろん、県予選一回戦で戦った、エドペンを盗んだ眼鏡も、もう仲間みたいなものです。主人公チームと一回戦ってまえたものは、強さの序列が決まり、仲間になるのです。そして、仲間達と共に団体戦のトーナメントです。ドラゴンボールしかり、男塾しかり、キン肉マンしかり。咲をキン肉マンにみたてるなら、和はさながらテリーマンみたいなものです。衣は悪魔将軍で、それを倒すために修行でキン肉ドライバーをマスターするのです。
むすび
「咲-saki-はとんでもない能力が出てくるから麻雀漫画じゃない!」という言説には、違和感があって、個人的には「咲-saki-はとんでもない能力が出てくるから面白い麻雀バトル漫画だ!」って感じだと思ってます。漫画としてキン肉マンに近い類の物だと思います。魅力的なキャラクタとか、そのキャラクタ同士の関係性とか。咲はそのうち友情パワーで強くなると思いますし、衣の生い立ちなんてフェニックスマンみたいなものじゃないですか。理屈を超えた漫画的面白さを前面に押し出した漫画である、と私は思うのですよ。
青春部活漫画としてみてもいいし、百合漫画としてみてもいいし、萌漫画としてみてもいい。当然、麻雀漫画としてみてもいいし、バトル漫画としてみてもいい。いろんな側面で楽しめる。咲-saki-は本当に面白いなぁ。
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