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上遠野浩平先生の「私と悪魔の100の問答」オススメ!

2010-07-25

[]スク水絵日記「未来世紀スク水


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タイトル:未来世紀スク水

絵:香弥さん(へなぽに)

文:karimikarimi


135年 12/23 晴れ


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 一週間降り続いた酸性雨が、今朝ようやくおさまった。これでようやく仕事に出られるって〜ことで、「ハチオウジ」まで向かった。家に待機している間中ずっと整備をしていた防護服の調子もバッチリで、ドームを出た後なんのトラブルにも会わず、「ハチオウジ」にはあっという間に到着した。ただ、天候が良すぎて、非常に暑かったから、沢山汗をかいた。

 「ハチオウジ」ではいつも通り探索だ。ここはライバルが多いが、僕には秘密の場所があるから、困らない。「point 552 768 202」だ。ここにたどり着くにはとても細い穴を抜けなくちゃいけないから、大人達には入れないんだ。僕はここのことを「緑の場所」と呼んでいる。理由は、辺りが緑の壁に囲まれているからだ。

 今日も「緑の場所」で沢山のアイテムを入手できた。

 家に帰って拾ったアイテムを整理していると、気になるアイテムを発見した。それは、二本の紐が付いている濃紺の筒袋。初めて見る物だ。大きさは僕の胴体がすっぽり入るぐらい。ただし底に穴が二つ空いていて、物を入れずらそうだ。肌触りは、高級な防塵マントのようにサラサラ滑々している。一見、底が破れて使えない袋に見えるが、底の二つ穴の成型がキレイだから、これはきっと意図的なものだと思う。たぶん。正直、用途は不明だ。でも骨董拾いとして僕のカンが、このアイテムに反応している。

 午後、拾ったアイテムをさばきに西の市へ出かけた。ついでに、市の近くに住んでいる物知り婆のところによった。気になった濃紺の穴の開いた紺布袋について聞くためだ。

 紺布袋を見せると、婆は腰を抜かして驚いていた。そして、こう言った。

「これは旧暦に“スクール水着”と呼ばれていた、特殊用途の衣服じゃ。スクールという成人前に行く施設で、プールというところに入るためのものでな……」

 どうやら旧暦では、子供は皆スクールという場所に集められて教育を施されていたらしい。そして、そこではなんと水中を進む訓練を行っていたらしい! それもわざわざ水を使って! なんて贅沢なんだ、と僕は思ったが、婆曰く旧暦では水は全然貴重な物ではなかったらしい。なんて時代だ旧暦

 この“スクール水着”を売るため、婆にさらに詳しいことを聞いた。

「本物だったら物凄い価値のあるものだが、このスクール水着は、きっと新暦以降に好事家が作ったレプリカじゃ。ただ、それでも珍しいものには変わりないのう。欲しがりそうな奴にも心当たりはあるぞい」

 そう言って紹介してくれたのは、なんと南区のソンチョウだった。ソンチョウは、ドーム南区の長で、齢すでに三百年を超えている。どうも、南区が“ムラ”と呼ばれていた時代から、ず〜っと長をしているらしい。あまりに偉いので、僕みたいなしがない骨董拾いには縁が無い。

 婆の紹介により、明日ソンチョウと会えることになった。明日が楽しみだ。


135年 12/24 晴れ


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 スクール水着を売るために、ソンチョウに会った。ソンチョウの住む家は、とても大きく豪奢だった。どデカイ門を抜け、手入れの行き届いた庭を抜け、ピカピカに光る廊下を抜けて、客間に入った。

 高そうなテーブルを挟んでおいてある椅子の片方に腰をかけて待っていると、すぐにソンチョウが部屋にやってきた。白髪中肉中背で、面構えに覇気が有るいい男だった。見た目は、一般民の男性でいうと四十歳ぐらいに見えた。

 挨拶もそこそこに、さっそく“スクール水着”の商談に入った。

 スクール水着を見せるとソンチョウは、

「おお! これは、まさしくスクール水着だ! なんということだ!」

 と興奮していた。そして、凝視し、念入りに肌触りを確かめ、匂いを嗅ぐ。アイテムの状態を確かめるのは取引の常だが、それにしても熱心すぎる気がした。

 ひとしきりスクール水着を観察した後、ソンチョウはスクール水着の取引価格を提示してきた。僕は金額に耳を疑った。その金額はなんと、値切られることを前提としてふっかけようと思っていた金額の百倍以上だったのだ。

 一も二も無く商談を成立させようとした僕に、ソンチョウが一つ追加の要求をしてきた。その要求とスクール水着を合わせて、先ほど提示した金額だというので、どんな要求をされるかとひやひやしたが、拍子抜けするほど簡単なものだった。それは、僕がスクール水着を着て、それをソンチョウに見せるというものだった。

 提示された金額に対して、要求はたいしたものじゃなかったので、僕は合意し、商談は成立した。

 その後、更衣室に案内され、スクール水着に着替えた。そして、客間に戻ると、僕を見たソンチョウは、目を血走らせて「スクール水着を着た少女だ!」と叫び、「なんということだ! なんということだ! なんということだ!」と連呼した。全然意味は分からなかったけれど、喜んでくれているように見えた。

 部屋には、出て行くときに無かった水が入ったタライが置かれていた。そしてソンチョウは、もし僕がよければ、そのタライで水浴びをして欲しいと言った。特に断る理由は無かったので、僕はタライに入り、中の水を浴びた。タライには、調整された酸性雨が入っていて、ほのかに塩素の匂いがした。

 水を浴びる僕を見て、ソンチョウはさらに興奮して鼻血を吹き出しつつ、小躍りを始めた。

「少女! 濡れたスクール水着! 塩素の香り! なんということだ 素晴らしい! エクセレント! すぇdrftgyふじこlp;ひゅじこl」

 とよく分からないことを言って踊っている姿は、見ていて面白かった。

 ソンチョウがある程度騒いだ後、元の服に着替え、スクール水着を渡し、お金を貰って家に帰った。


135年 12/25 晴れ


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 不思議な夢を見た。

 太陽は遠めで暖かい。

 キレイな青い空。

 僕はスクール水着を着ていた。

 周りには、同じくスクール水着を着た同年代の女の子達。

 そのうちの一人の子が私に近寄ってくる。

「〜〜ちゃん、何しているの? 早く行こうよ」

 そう言って、僕の手を引く。

 そこには空よりももっと綺麗な青い色の水。

 僕はそこに飛び込む。

 鼻がツンとする。

 緩やかに包み込まれる感触。

 体から力を抜く。

 水面に持ち上げられる。

 感じる浮遊感。

 太陽は遠めで暖かく、風はゆるやかで、空はキレイで、少女たちの声は優しかった。

 楽園のような世界だった。



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ネコタ斑猫ネコタ斑猫 2010/07/28 21:07 お初にお目にかかります。
ネコタ斑猫と申します。
スク水コンテスト会場から参りました。
少女のイラストといい、清新な作風といい、非常に素晴らしく、心より堪能させていただきました。
ありがとうございました。

karimikarimikarimikarimi 2010/07/31 17:49 >>ネコタ斑猫さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
楽しんでいただけたようで幸いです。
香弥さんの絵いいですよね!

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