Hatena::ブログ(Diary)

karimikarimi このページをアンテナに追加 RSSフィード

上遠野浩平先生の「私と悪魔の100の問答」オススメ!

2010-09-13

[]リトバスSSブギーポップクロスオーバー) 神北小毬 ミーツ ブギーポップ


Keyリトルバスターズ!上遠野浩平先生のブギーポップクロスオーバーSSです。ブギーポップを知らなくてもなんとかなると思いますが、リトルバスターズ!を知らないとちょっとキツいかもしれません。


   神北小毬 ミーツ ブギーポップ


 神北小毬はベットから抜け出し必要な物を手にすると、静かに部屋を抜け出した。

 夜の暗闇の中、目立たぬようにひっそりと、女子寮出て、あらかじめ空けておいた窓から校舎に侵入。静かに階段を上る。屋上への出入り口までくると、愛用のドライバーを取り出し、窓に向かう。

 何故小毬が、夜の屋上にやってきたかというと、理由は単純。小毬は、今日、クラスの誰かが言っていたのを小耳に挟んだなんとか流星群(何流星群だったかは、聞こえなかった)を彼女のフェイヴァリットプレイスである学校の屋上で見るためだ。

 ドライバーで窓をカチャカチャやり、屋上に繋がる窓をあけることを成功した。

 窓を開けると、その向こうから――口笛が聞こえてきた。

「ありゃりゃ、先客さんがいるのかな」

 そんなことをつぶやきながら、小毬は窓から屋上に出た。


   *


 小毬は聞こえてくる口笛の音色に聞き覚えがあった。

(確か、入学式とかでよく流れる、なんていったっけ。そう。そうだ。ニュルンベルクのマイスタージンガーだ)

 屋上を見渡すと、その縁に、その口笛の音源がいた。

 その音源は、とても奇怪な見た目をしていた。それは、筒のような黒い影だった。

 筒のような黒帽子を被って、筒のような黒いマントで身を包んでいる。やけに白く見える顔に、唇の黒いルージュが無駄に鮮烈に浮かんで見える。

(なんか、やりすぎたハロウィーンの魔女の仮装みたいだなぁ)

 こんな夜中に変な格好をしている人物に興味が沸き、小毬はその筒に向かってゆっくりと近寄っていった。

 小毬がすぐ近くまでくると、筒は口笛を吹くのを止め、彼女に目を移し、

「やあ、こんばんは」

 と笑っているような喜んでいるような左右非対称のいわくい言い難い顔をして挨拶してきた。

「ははは、こんばんはー」

 得たいの知れない怪人物に対しても、小毬はいつもの明るい笑顔で挨拶を返す。そして、

「あのー、ここで何しているんですかー?」

 と疑問に思ったことを率直に尋ねた。

「“彼女”の気配がしたから追ってきたら、随分と面白いところにやってきてしまって、ビックリしているところだね。そういう君は何をしているんだい?」

 筒はとぼけたような口調でそう答えた。

「私は流れ星を見に来たのですよ」

 小毬は笑顔で答える。

「そいつはロマンチックだね」

「一緒にどうですか? お菓子もありますよ〜」

 そう言って小毬は、ポケットから棒のついたぐるぐるうずまき模様の丸い飴を取り出し、筒に向かって突き出した。

「そいつはいいね。少しの間ご一緒させてもらおうかな」

 そう言うと黒い筒は、差し出された飴を受け取った。

「私は神北小毬です。あなたのお名前は?」

「僕はブギーポップだ」


   *


 小毬とブギーポップは、夜の学校の屋上で、空を見上げている。

「ところで小毬君は、どうしてここで流星群を見ようと思ったんだい?」

 ブギーポップは、男か女か分からない、中性的な口調で小毬に問いかける。

「別に部屋から見ても良かったんだけどねー。なんだろー。うーん」

 少しの間腕を組んで、う〜んう〜ん、と唸り、

「開けてて空の近くでみたら、もっと素敵になるかな〜、って思ったんだと思う。うん」

 と自分の気持ちに結論付けた。

ブギーポップさんは、流れ星を見たらどんな願い事をかなえるの?」

流れ星にする願い事か。そんなもの考えたこと無かったよ。なんせ、自動的な身なのでね。小毬君は何を願うんだい?」

「それは勿論『みんなが幸せになりますように』って願いですよー!」

 小毬は胸を張って答えた。

「そうかい。そいつは素敵だね。そんな素敵に君なればこそ、こんな奇跡を起こせたのだね」

「……」

 小毬は笑顔を崩さず空を見上げながら、ブギーポップの話を聞いている。

 ブギーポップは貰った飴を一舐めすると、空から小毬の顔に視線を移した。

「この超圧縮された再構成可能な仮想現実は、まだ生まれるはずの無いもの。今あるものが人間の魂以外何もなくなってしまうような未来、十分に発達した科学技術を持って始めて実現するかもしれない可能性なんだ。それを、君は、君達は、実現させたんだ」

「……」

 小毬の清々しい笑顔は変わらない。

「君は、君達は、もうすぐ死ぬ」

「うん、知ってるよ」

 ブギーポップの突然の死の宣告に、小毬はあっさり同意した。

「ならば、君達としては、この偽りの世界に、彼と共に永遠に暮らそしていたほうがいいんじゃないかい?」

「う〜ん、それじゃあ、駄目だめだと思うな〜」

「駄目とは?」

「だって、それだと、ここの意味がなくちゃうの。私達は、理樹君達のためだからこんなことが出来たの。だから、そうじゃなくしようと思ったら、もうここはなくなっちゃうと思うんだ〜」

 小毬は、いつもののんびりとした口調で、しかし確信を持ってブギーポップに語る。

「ここは、そのブギーポップさんが食べている飴みたいなものなんだと思うんですよ。飴は舐めて味わえば消えちゃう。でも消えちゃうことを恐れて飴を舐めないなんて、それじゃあ飴の意味が無いでしょ? それに表面のうずまき模様だって、くるくるくるくる渦を巻いて、一見何度も同じ場所を通っているように見えても、少しずつ中心に向かっていって、最後は真ん中で消えちゃうんです。そういうものなんです」

「なるほど。確かにそういうものかもしれないね。閉じた輪廻と収束に向かう渦では、子供と大人ほどに違う」

「あ、あと、ブギーポップさん、一つ間違っていると思いますよ〜」

「何がだい?」

ブギーポップさんは、さっき、ここのことを『偽りの世界』って言っていましたけれど、それってちょっと違うと思うんですよね。え〜と、なんていうか、確かに、ここは、あっちとは違いますけれど、それでも、ここはここで『本物の世界』だと思うんですよ〜」

 ここで小毬は、空に向けていた顔を、ブギーポップの方に向ける。彼女の顔は、確信に満ちていた。

「だって……だって、ここにある私達の心は、本物なんですから」

 まっすぐブギーポップの目を見つめる。

 するとブギーポップは、

「いや、さすがだね。小毬君。一本とられたよ。その通りだね」

 と憧れているような呆れているような左右非対称の顔をした。

「よもすれば『時間を止めて全ての可能性を停滞させる』可能性――恐ろしい“世界の敵”になるかもしれないと思ったが、小毬君達は、その欠片も無いようだね。失礼したよ」

 そう言うと、ブギーポップは、わざとらしく頭を下げた。

「ははは、別にかまいませんよ〜」

 小毬は、あいも変わらない笑顔でブギーポップに答える。

「あ!」

 小毬は、ふと目の端で、星の流れを捉えた。

流れ星!」

 二人は、空を見上げる。

 一つ。

 また一つ。

 星が流れる。線が一本、二本、三本と増えていく。線の間隔がどんどん短くなっていく。

「うわぁ!」

 空に無数の線が延びる。

 黒い空が白い線に埋め尽くされる。

ブギーポップさん、ほら、すごいね!」

 そう言って小毬が隣に目を向けると、ブギーポップはいつの間にか消えていた。まるで、今までそこに誰もいなかったかのように、なんの余韻も残さずに。

「あ、さよなら、言えなかったなぁ」

 小毬は、また流れる星で溢れる空を見上げ、つぶやいた。

「世界のみんなが幸せになりますように」


          “A cute fairy-tale-girl meets Boogiepop” closed.