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上遠野浩平先生の「私と悪魔の100の問答」オススメ!

2010-10-10

[]リトバスSSブギーポップクロスオーバー) 直枝理樹 ミーツ イマジネータ


神北小毬 ミーツ ブギーポップ


上のSSの続の、Keyリトルバスターズ!上遠野浩平先生のブギーポップクロスオーバーSSです。前回、四人も(id:dodododさん、id:sorpporさん、id:Mukkeさん、id:anadaumalさん)反応してくださった人がいるので、調子に乗ってやっちゃいました。


相変わらず、ブギーポップを知らなくてもなんとかなると思いますが、リトルバスターズ!を知らないとちょっとキツいかもしれません。


直枝理樹 ミーツ イマジネータ


 僕は目を覚ました。

 目の前は暗闇。どうやら今は夜中らしい。

 身を起こそうと意識するが、体はピクリとも動かない。

(……またか)

 夜中に目を覚ますといつもこうだ。目覚めた直後は、体が言うことを聞いてくれなくなる。いわゆる金縛りというやつだ。

 初めて金縛りにあった時は、頭の中がパニックになったものだけれど、最近はすっかり慣れてしまった。

(放っておけば、じきに動くようになるしね)

 ボーっと虚空を眺める。

「ぐおおぉぉぉマッスルぅ……。ぐおおおぉぉぉぉマッスルぅ……」

 時折、真人の奇怪な寝言が聞こえてくる。いったいどんな夢をみているのだろうか。

 少し経つと、指先がピクリと動き始める。

 すると、指、手のひら、手首、肘、腕、肩と順々に身体が意識と連動していく。このとき僕はいつも、

(入れ物の身体の末端から、生命が吹き込まれていくみたいだなぁ)

 という不思議な間隔を覚えてしまう。

 目を覚ましてからどれくらいたったのか分からないが、完全に意識の手中に身体を取り戻した。

 気を取り直して身を起こし、ベットから這い出る。

 特に理由はないけれど、なんとなく夜風に当たりたくなった僕は、真人を起こさないように、静かに部屋を出た。


   *


 男子寮を抜け出し、ぶらぶらと歩く。夜風が頬を撫でる。気持ちがいい。

 北校舎と南校舎を通り過ぎると、校庭を一望できる場所に出る。夜の校庭には、動くものは何もない。

 いつもの太陽の下で人が賑わう校庭と、冷たく輝く月の下で静かにたたずむ今の校庭は、同じ場所のはずなのに、今の僕にはまるで全く別の場所のように感じられた。当たり前だと思っている場所でも、何かが少しズレるだけで、こんなにも遠くに感じる場所になってしまうものかと少し驚いた。

 校庭を照らす月を仰ぐ。

(今日は満月なんだ……)

 砂色に輝く月から校庭に目を落とすと、その広く平らな空間の中心に人がいた。先ほど校庭を見た時は、誰もいなかったはずの場所だ。まるで、僕が空を見た一瞬のうちに浮き出てみたいに。

 まるで幽霊のようなその存在は少し怖かったが、恐怖心ようりも好奇心が上回り、僕はその人物に近寄る。

(あ〜、こういうのにワクワクしてしまう気持ちは、恭介の影響なのかな)

 校庭の中心にいる人物は、女学生のようだった。ただしこの学校の生徒ではなさそうだ。なぜそんなことが分かるかというと、着ている制服がこの学校のものではないからだ。

 この学校の女子制服は、ピンクのリボンがついた赤い縁取りがされている黒い上着にチェックのスカートという一風変わった物だ。しかし、校庭の少女の制服は、、赤いタイのついた白い上着に、濃紺のセーラーカラーとスカートという、非常にポピュラーな物だった。

(しかし、こんな夜中に制服を着ているっていうのも、不思議だなぁ)

 僕はそんなこと考えながら、少女に近づく。

 少女は、先ほどの僕と同様に、満月を見上げていた。

 会話が出来るぐらいの距離まで来ると、少女もこちら気がついたらしく、空から僕に目をやった。黒くて長い髪を携えた、美人さんだ。

「や、やぁ、こんばんは」

 僕は月並みすぎる挨拶をした。

「こんばんは、中心さん」

 彼女は、不思議な笑みを浮かべながら、穏やかな声でそう僕に返した。

 その笑みは、喜怒哀楽や愛想や遠慮などの理由がない、なんの歪みや濁りなどもない、ただただ純粋に“笑う”ことが実現している、そういう透明な笑みだった。


   *


「ちゅ、チュウシン? 中心さんって?」

 僕は直枝理樹さんであり、中心さんではないので、思わずそんな風に返してしまった。

「ああ、ごめんなさい。あなたがあまりにも“この世界の中心”にいたから、ついそんな風に呼んでしまったわ」

 そう言って、ふふふ、と彼女は口物と握りこぶしをあてて笑った。

 僕は彼女が何を言っているのかいまいち良く分からなかったので、

「僕は直枝理樹って言います。あなたは?」

 と、とりあえず名乗り、彼女が何者なのか聞いてみた。

「私は、潰える可能性の側にいるもの……なんだけれど、本当の私は最近死んでしまっているわ」

「じゃあ、君はゆ、幽霊、なの?」

 幽霊の存在なんて、いつもなら信じられないと思う。でも、なんだか世界から浮いているような存在感の目の前の少女が「ええ、私は幽霊よ」と言ったら、「ああ、そうなのか」と納得出来てしまう気がした。しかし、彼女は、

「いいえ。そんな大層なものじゃないわ。もっとなんでもない。ただの大量に作られたコピーの中に紛れ込んだ何かよ。なまじコピーの精度が高かったせいで、上っ面だけじゃなく、私まで現れてしまったという、ただそれだけの……いや」

 少女はかぶりを振る。

「違うわ。これは、きっとそうじゃないのね。コピーは現象であって、理由じゃない。ささやかで、限りなく叶うことのないような夢。“突破”できると信じる、その意思が理由なんだわ。そう、貴方の友人達の“突破”への意思が私を存在せしめたのね」

 僕は彼女の言っていることはさっぱり理解できなかったけれど、最後の言葉だけはひっかかった。

「君は僕の友人を知ってるの? 恭介達のことを?」

「いいえ、具体的には知らない。会った事はない無い。ただ、その人達が、貴方のことを、心の底から愛しているということを知っているだけ。そう、その愛は、人類を絶対真空に旅立たせる、遠い遠い未来に確立する原理と多層次元集積演算機を持ってして始めてなしえるような奇跡を呼び起こしてしまうほどの愛。これほどまでの奇跡を起こして“突破”を信じられている君は……」

 そして彼女は、何か眩しいものをみるように目を細め、

「これから大変だと思うけれど、是非頑張って欲しいものね」

 と言って、透明な笑みを浮かべた。

「……」

 僕はなんと言っていいのか分からず黙り込んでしまった。

 この時、僕はなんとも不思議な感覚に襲われていた。彼女が何を言っているのか、全然分からないにも関わらず、それが僕にとって非常に重要なことであるような気分になっていたんだ。

「……」

「……月を見て」

 黙りこむ僕に、彼女はそう言った。僕は言うとおりに、彼女と共に月を見上げた。

 濁った満月は何も語らず、浩々と輝いている。

「遠い未来、私はこの世界で呼び出されたのと同じように、あの冷たい月の上で呼び出されることになる。そんな時、貴方を思う人達みたいな心に会えたらいいわね」

 僕は視線を月から戻すと、目の前にはあの少女姿は無かった。現れた時と同様に、音も無く消えていた。

「……“突破”できると信じる意思、か」

 僕は、彼女の言葉を口の中で小さく反復してみる。

 なんとなく無性に鈴に会いたくなった。


          VS Imaginator Special “Little Busters” closed.


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