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上遠野浩平先生の「私と悪魔の100の問答」オススメ!

2012-04-01

[]出崎統の世界〜「撮影」というパートの重要性〜


※この記事はエイプリルフールネタとして、まっつねさんと交換アップしたものです。

なので、以下の記事はまっつねさんの記事で、まっつねさんのところのが私の記事になります。みなさん、わかりましたか?


やっと届いたので読みましたよ、「出崎統の世界」


全体としての感想としては、率直にいって期待以上でした。


特に、藤津亮太さんの書いた

出崎統というアニメーション演出家」については、

いわゆる世の「出崎統論」を俯瞰するものとして非常にわかりやすく、

また、文章で「カット割」を解説するための

新しい手法を編み出したという点も見逃せない。

「粗/密」「N(ノイズ)/S(シグナル)」という2×2のカット属性は、

あらゆる作品へ援用可能だし、

例えば、出崎統作品と新房作品の比較として、みんなどんどん使ってほしい。


世のアニメ評論・解説ブロガーは、出崎統に興味はなくても

この「粗密NS法」だけをみるためにこの本を読んでほしいとさえ思う。


○インタビュー・寄稿等

インタビューはどれも面白い。

アニメは俺と視聴者とのパーソナルな対話」と言っていた出崎統監督に対して、

それぞれがやはり「パーソナルな返答」を行っているのが印象的だ。

芝山努さんや新房さんそして富野さんと言った

腕利きの演出家の出崎話はそれだけで面白い。


逆に、この本の中で「組み合わせが面白い」ものもある。

それが実は何かと話題になっている

山本寛」さんの寄稿と撮影監督「高橋宏固」さんのインタビューだ。


まず、山本寛さんの「出崎統」観を認識する上で、

実は上の三人の演出家とは根本的に異なっているを理解し、一つの事実を考慮する必要がある。

ヤマカンは出崎監督の『表面的な技術』しか見ていない」というような批判は

まさに重要な事実の見逃しから起きている。


その事実とは

山本寛は撮影出身の演出家である」

ということだ。


勿論、彼も演出家としての目線も持っているが、

こと「出崎統」についての彼の立ち位置は「撮影マン」としての立ち位置なのだ。

過去の妄想ノォトでも、ウテナの「撮影」部分に注目し、

家なき子」の撮影の素晴らしさを再認識したと語っている。


撮影(コンポジット)というポジションに対する注目度は現在でも低い。

ただ、撮影こそが「絵」を「アニメ」にするポジションであり、

その重要度は非常に高く、

人によっては「プロとアマの根本的な差は『撮影』」という人もいる。


ヤマカンの話に戻そう。

撮影出身の彼が今も昔も「家なき子」を出崎統の最高傑作としている。

なぜか?

それは、「家なき子」が究極の「撮影アニメ」だからだ。

彼は撮影マンなのだから、究極の撮影アニメを褒めるのは至極当然のことだし、

その意味では「技術論」を語ることを批判するのはお門違いというものだろう。



ここまで来て、初めて、この本におけるヤマカン寄稿の「掲載意図」が浮かび上がってくる。

そう、藤津さん言う「出崎組」の撮影監督・高橋宏固さんのインタビューとのシナジーだ。


出崎作品の常連の高橋宏固さんだが、

実は出崎作品への登場は案外遅い。

あしたのジョー」でも「エースをねらえ(初代)」でも「ガンバ」でも参加していない。

そう、彼が始めて出崎統と組んだ作品が「家なき子」なのだ。

出崎統の多くの手法は、「家なき子」で高橋宏固さんと組んだことで

爆発的に進化していく。

それは例えば、「ガンバ」と「家なき子」を比べても一目瞭然だ。


この高橋宏固さんの凄いところは

出崎統さんと仕事がしたいというのが自分のスタジオをつくるきっかけ」とまでいう

その出崎統監督への熱い思いだ。

家なき子」における、壮絶な撮影現場については是非インタビューを読んでほしい。


そして「家なき子」で壮絶な戦いを繰り広げた高橋プロダクションはほぼ力尽き、

宝島」が始まるときには半分くらいスタッフが辞めてしまったという話も興味深い。

「撮影マン・山本寛」が「家なき子」に反応するのは、

この「高橋プロダクション」の120%の本気の仕事にこそ理由があるのだろう。

「入射光」の発明の話も面白いし、

家なき子は本当に「アニメの撮影」としては金字塔のような奇跡の作品なのだ。


「入射光」については新房さんのインタビューの

「高橋プロとお仕事させていただいたとき、指示をいれてないのにどんどん入射光などを

アドリブで入れてくるんです」

という話なんかと連結させても面白い。


この「出崎統と仕事をするために作った」高橋プロダクションは

現在はT2studioという名前で、

業界を代表する撮影会社になっている。


関わっている作品は非常に多く、

古くはこの間TV放送があった「カリ城」や「ラピュタ

最近なら「劇ヱヴァ」や「BLEACH」、プリティリズムなど

「撮影」の魅力が詰まった作品をどんどん世に出している。


出崎フォロワーの代表格である西村純二監督の「true tears」もT2studioが撮影をやった関係で、

その後のPAワークス作品もT2が担当しており、

あの独特の透明感のある画面作りに一役買っている。


あるいは、出崎統監督の影響が丸出しだった

生徒会役員共」もやはりT2studioが担当している。


出崎統監督と切っても切り離せない「撮影」という要素を

ヤマカン・高橋宏固という二人の視点から読み取り、

さらに、その出崎統のための撮影会社が現在も「T2studio」として

アニメ最先端をいっていることに思いを馳せる。

そういう楽しみ方が出来たのが、

この本の大きな収穫であった。