福島での講演とあかべこと。

karinmatasumori2013-11-10

福島駅で新幹線を降りると、ひんやりと澄んだ空気。
遠くから楓や桜の葉のにおいがほのかに。
改札で待ってくれていた担当者は、想像通りの可愛い美人さん。
私が今回の福島での講演をお受けするか悩んでいたとき
彼女の一言で迷いがなくなりました。


「不安があれば何でも言ってください。
 一緒に考えましょう。」


こんなふうに相手の気持ちに寄り添える一言って、すごくいいなと
素直に思えた瞬間でした。
しかも彼女はまだ大学を卒業して二年目だったかしら、若いのになんてしっかりしているんだろうと感心。


ユニバーサルデザイン研修講演
「聞こえる世界から聞こえない世界へ
      そして共に生きる社会へ」


講演には、地域のろう者や視覚障害者もいらっしゃいました。
うれしかったのは、視覚障害の方からもったいないくらいのお褒めの言葉を頂いたこと。
その方は中途失明されたそうで、ご自身の視力を失うまでの過程を
思い出し、重なる部分もあったとのことです。
講演そのものをほめていただいたこともうれしかったのですが
「分かりやすい講演だった」と言っていただけたのが何よりも励みになりました。

聞こえない人にも、手話がわからない人にも、見えない人にも
いろんな人に伝えたい。
そんな思いが強く、
講演の準備をするときには
常に、聞いてくれる人たちを想像しながら、
何度となく脳内講演を繰り返して進めます。


講演終了後に、会場内にあった「福島物産展」にいくと
偶然にも先ほどの、中途失明された方が奥様と一緒にいらっしゃって
お土産に、と日本酒を二本も持たせてくださったのです。
物産展では、会津塗のお猪口やおつまみを買い込んで、どんどん重くなっていく袋。
スタッフの皆さんと別れ、駅に着くと、知人が待ってくれていて
彼女の両手には、「ままどおる」一箱に「リンゴ」一箱。
両手がもげるんじゃないかってくらい重い荷物を抱えての帰路でした。
自宅の最寄り駅に着くと、息子が迎えに来てくれていて感激の母。


今回の講演で印象に残ったこと、それは
お世話をしてくださった県の職員の方々が
「福島のことでご迷惑やご心配をかけてすみません」と
何度となく頭をさげていらっしゃったことです。
原発にかかわるすべては、個人レベルのことではなく国全体の課題です。
それなのに、福島県民というだけで、そんなふうに言わざるを得ないことが悲しく、胸が痛みました。
自分がかつて、聞こえなくなったことで会話がスムーズにできなかったり
授業の進行を止めてしまったり、周囲に迷惑をかけてしまうことを
申し訳なく思い、そんな自分は消えてしまいたい、とまで思っていたことを
頭の片隅で思い出しました。
悪いことはしていないのに謝らなくてはならない…
そんなことがなくなり、誰もが自分や自分の住んでいるところに誇りをもてるような社会にしていきたい。
改めてそんな風に思いました。
相手の思いに寄り添い、自分自身にできることを一つ一つ、やっていこうと思います。



福島でいただいた牛の「あかべこ」を見て、
いつもうんうんとうなづいてばかりいる私みたいだ。と息子が一言。
そういえば、かつて私が赤い衣装でNHK「ろうを生きる難聴に生きる」に
出演した時も言ました、「赤べこみたい。」だと。