「日本人なのに日本の映画が楽しめない!」これってどうなの?


「日本人なのに日本の映画が楽しめない!」これってどうなの?なにこの矛盾。



2014年国内映画の公開数615本中、日本語字幕が付いた作品は66本。
(「映画上映に関するバリアフリー対応に向けた障害者の視聴環境のあり方に関する調査事業報告書」より)
全体の一割、これってつまり
聴覚障害者は十分に邦画を楽しめていないということ。
この一割も、上映期間中ずっと字幕が付くわけではなく
限られた映画館で、ほんの2〜3日、時間も場所も限定されます。
技術先進国と言われている日本のこの現状、異常ではないでしょうか。
もう一度言います。



「日本人なのに日本の映画が楽しめない!これってどうなの?!」



今話題になっているアニメ映画「聲の形」。
9月17日に劇場公開され2日間で観客動員20万人という人気ぶり。
聴覚障害のある少女をめぐっての壮絶なイジメ、
別れ、理解、再会、痛み、臆病などいろんなキーワードが
共感できる作品。
「マガジン」で連載が始まった時から注目し
私も全巻読みました。
映画化が決まった時から話題になったのは内容よりも
「字幕つくのかな?」ということ。


実際はどうか。
公式サイトでは、公開2週目となる9月24日〜30日の1週間のみ
公開全劇場で1日1回、日本語字幕付き上映を実施する、という発表。
http://koenokatachi-movie.com/news/?id=4


通常の2〜3日に比べたら1週間の字幕上映は長い!
日本語字幕が付くことが評価される一方で、
なぜ1週間遅れなのか、そしてなぜ1週間だけに限定するのか、
上映期間中は聞こえる人も聞こえない人も共に楽しめるようにしてほしい、とも思うのです。
だってこの作品の、原作にも映画製作にも協力した聴覚障害者の存在があるのですから。
すべて字幕付き上映にする必要はなく、
字幕付きと、字幕なしを交互にするなど工夫し、選択肢を用意してほしい。
「音声透かし技術」を使った字幕表示など、便利なアプリを活用する手段もあります。
映画を観たいと思う人を、排除しない配慮が必要、ですよね。



そんな中、川崎駅近くのチネチッタでは
9/24以降は上映期間中ずっと字幕上映することを決めたという連絡が。
きっかけは、私が敬愛する手話通訳士、森本行雄先生が関係者に進言してくださったこと。
そこからチネチッタの社長に伝わり、素早い対応へとつながったのです。
こんな映画館が増えてくれればいいな。
というか映画館が決めるのではなく、配給元がしっかりして!



聞こえない人たちは、自分の聞こえない障害と関連性のある作品が発表されるたびに
「字幕はあるのかな」と思い煩います。
そんな余計な心配をすることなく楽しめる社会であってほしいのです。
この問題の本質は
聴覚障害に関連する作品なのに字幕がないこと」ではなく、
「映画を楽しめる人を限定している日本の現状」です。


映画を観たいと思う人を、障害の有無で選んだり排除したりせず
いつでもどこでも自分に合った手段で楽しめるのが本来あるべき姿。
聲の形」に登場する西宮さんだってきっとそれを願ってるだろうし
それこそこの映画が伝えるメッセージ性の一つでもあるのではないでしょうか。



映画「聲の形」公式サイト
http://koenokatachi-movie.com/