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松森果林UD劇場〜聞こえない世界に移住して〜 Twitter

2017-08-30 「できない」ではなく「どうすればできるか」

「できない」という否定や

「前向きに検討します」という先送りではなく

「どうすればできるか」

これがベースで進んでいく企画や仕事は、アイデアとエネルギーに満ちている。

だから色んな人が共鳴し合い、響き合い、いつしか大きな輪になっている。



8月1日から20日まで開催された日本初のエンターテイメント

ダイアログ・イン・サイレンス」の企画はまさにそれでした。

1998年にドイツで開催され、世界各国で100万人以上が体験したというエンターテイメント。

「音のない世界で、1グループ12人が、声や手話などの言葉を使わず

90分間を聴覚障害のあるアテンドの案内によって楽しむ」プログラムです。

それは、年齢も地位も、障害や言語の違いも関係のないフラットな世界です。

連日満席状態で、約3500名の方にご体験いただきました。


これを日本でも開催することで、社会変革につなげたいと

実現に向けて動き声をかけてくださった志村真介さんと季世恵さん。

お二人との出会いは、間違いなく私の人生の中でも幸せな出会いのひとつです。

季世恵さんと初めてお話しをしたとき

フルーツポンチのようなひとだ♡」とワクワクしたのを覚えています。

この企画の話しを聞き

「どうすればできるだろうか。だれが協力してくれるだろうか」

気付けばこのことばかりを考えていました。


気付けばこの企画を楽しくするために、必要な人ばかりが集まっていました。

事務局はみんな可愛くて素敵な女性ばかりですし

広告を担当してくださった寺尾さんと

コピーライターの阿部さんのプロのプレゼンは、毎回ときめく時間。

アテンドには、個性豊かで魅力と持ち味たっぷりの聞こえない人たちが集まり。

予想以上に多くの募集があったボランティアインターン生、

そしてスポンサーの皆さま…。

関わった全ての人が滋味あふれ

ダイアログ・イン・サイレンスそのものがフルーツポンチのようでした。

色とりどりのありとあらゆるフルーツに、

シュワシュワとはじける自由さと煌めくワクワク感。



一緒に監修を!とお願いをしたのは、森本行雄さんです。

手話通訳士として、長年関わってきた聴覚障害者への造詣が深く

年齢を感じさせない体力(何しろ現役のサッカー選手!)とユーモア

ユニークなアイデアと感性に、初めてお会いした時から惹かれっぱなしでした。

絶対にこの人!と思い、ダイアログ関係の集まりや打ち合わせに

引っ張りまわしたのは言うまでもありません。


聞こえない私や、手話通訳士でもあり森本さんが「監修」として関わることで、どんなことが実現したのか。

マスコミ取材では紹介されないことを三つお伝えしたいと思います。


1、いつでもどこでも手話が!

打ち合わせ、研修期間、記者会見、オープニングセレモニー、テープカット、そして開催期間中、

ありとあらゆる場面で手話通訳が複数名常駐しておりました。

開催期間中は約7名の魅力的な手話通訳者がシフトを組み

ボランティアの中にも手話ができる方が大勢。

手話ができない人の方がマイノリティだったかもしれませんが

そんな環境にいると、自然と手話を覚えてくれるものなんですね。


2、もちろん文字でも!

手話が苦手な難聴者でも安心できるようにと

おなじみの「UDトーク」を駆使したり、ホワイトボードやメモがあちこちにおかれ

いつでもすぐに筆談ができる環境も。


3、会場内には光で知らせる警報装置を!

ゲストは全員がヘッドセットを装着するため「みんな聞こえない」状態となります。

そんなとき、火災などが発生したら?!

想像しただけでおそろしいことです。

会場内には、どこにいても視覚的に分かるように「光で知らせる警報装置」を設置していただき

避難訓練もおこないました。

期間限定のイベントで、ここまで配慮されることはほとんどありません。

たとえ20日間であっても、「安全」は一番大切なことなのです。


私が仕事のテーマとする「ユニバーサルデザイン」において

「当事者参加型」という大切なキーワードがあります。

企画の段階から多様な当事者が関わり、より良いものにするための

知恵やアイデアを出し合っていくことです。

「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という有名な言葉もあります。

最近では、委員会などをはじめ、様々な場で当事者参加型が主流になってきています。

とはいえ、そうした提案が実現されるには時間がかかるものです。

根拠に基づいた提案を出しても

「予算が」「時間が」と様々な「できない理由」を説明されて

「今後の検討事項に」と先送りされることが多くあります。

根気よく続け、共感してくれる人を増やし、少しずつ変えていかねばならないのが現状です。


ところが、

ダイアログ・イン・サイレンス」を主催する志村真介さんと季世恵さんの辞書には

「できない」という言葉はありません。(季世恵さんが食べちゃったそうです)

無謀とも思えるアイデアでも

「どうすればできるか」

真剣に面白がりながら考えて、実現しちゃうのです。

関わるスタッフや周囲の方々にも伝染し巻き込んでいきます。

予算も時間も限られている中で、簡単なことではありません。

でも、できる方法を考えるって、なんてクリエイティブでパワーに満ちた空間でしょうか。

関わったすべての時間が楽しく充実していました。


静かな衝撃を起こしたダイアログ・イン・サイレンスの20日間。

そして

暗闇の中で見えてくるダイアログ・イン・ザ・ダーク

2009年からはじまった常設展が明日8月31日でクローズします。

残念なことではありますが

「どうすれば」を考えつづけるのは楽しいことです。


発案者であるドイツハイネッケの言葉を思い出します。

「終わりははじまりのはじまり

 はじまりは終わりのはじまりだ」

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