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松森果林UD劇場〜聞こえない世界に移住して〜 Twitter

2019-01-14 聴覚と触覚の共鳴

Touch the sound picnicタッチ・ザ・サウンド・ピクニック)は音を振動に変えるデバイス

音を振動に変えるものは多くあり、それらすべてを試しましたが

このTouch the soundを手にした時

得も言われぬ懐かしさを感じたのです。

ずっとそれが何なのかわからずにいたのですが

ある時唐突に思い出しました。



私が中学一年生だったときの冬。

父からもらったオルゴール本体。

回転軸があり櫛形の弁が沢山ついているものです。

曲名は「乙女の祈り」。

ゼンマイを回すと、オルゴールが鳴ります。

小さな音量ですが、左耳は聞こえていたので

何度もゼンマイを巻いては手に持ったまま繰り返し聞いたものです。


ある時、いつものようにゼンマイを精一杯巻いて

そっと机の上に置いたのです。

その途端、オルゴールの音がものすごく大きくなったのです。

机の板を通して振動し、共鳴し、音が増幅したのでしょう。

手に伝わる振動と、増幅した音の共鳴が一致したものであることを

聴覚と触覚両方でとらえた瞬間でした。


驚いた私は、机やベッド、床や鉄パイプなど様々な素材の上で

オルゴールを鳴らしてみました。

窓ガラスにあてて、真っ白な雪の世界を見ながら聞いたりも。

素材によって、音の振動や共鳴や増幅が違うことが面白かったのです。

同じ板でも、がっしりした堅い板では高い音が響き

ベニヤ板で中が空洞になっているものは、音の増幅も大きいと感じました。

机の中央にオルゴール本体を置いて、耳を机の真横につけた時と

机の端にオルゴール本体をおいて、耳を机の真横につけた時と

音の伝わり方や分散の仕方が違うことも面白いと感じました。

さらには、ガラス瓶の中にゼンマイを巻いたオルゴール本体を入れて、蓋をしてみました。

鳴り終えてから蓋をあけたら、瓶の中にたまった音が溢れ出てくるのでは…と思ったのです。

とてもドキドキし手蓋をあけたものです。


オルゴールを通した音の振動と共鳴と増幅へのあくなき探究心はしばらく続きました。

耳に近づけた瞬間、髪の毛がゼンマイに巻き込まれ、からまり

一度鳴り始めたオルゴールは止めることができず

鳴り響くオルゴールを頭の横にぶら下げて母に救助を求めたことも。


そうやって私は

「音」は「空気を振動」させ、その振動が「鼓膜」を震わせ「音」として認知するということを実感したのです。

その後、音を失いオルゴールとは無縁の生活となりました。

私にとって「音」はどんなに手を伸ばしても届かない世界のものになってしまったからです。


2014年金箱さんから初めて連絡をいただき

聞こえる人も聞こえない人も共に音楽を楽しめる「共遊楽器」の提案

「音を振動に」「音を見せる」「音を利く」「音を感じる」「音を集める」などなど

「音楽とは、聴覚だけで受け取るエンターテイメントではない」と

「聞く」ことの概念を覆すアイデアとアイテムについて

連絡をもらうたびにワクワクしたものです。

2018年の夏「Touch the sound picnic」を手にし

ミュージカル「オペラ座の怪人」を鑑賞したときの衝撃は忘れられません。

<2018-08-30 来日公演「オペラ座の怪人」音を触りながら>

http://d.hatena.ne.jp/karinmatasumori/20180830


もう二度と手が届かないと思っていた「音や音楽のある世界」にふたたび

触れることができた強烈な体験だったからです。

しかも、それは失った音を取り戻したり、代替するものとは違いました。

強いて言うならば「新たな感覚の拡張」や「新たな楽しみ方の獲得」でしょうか。

Touch the sound picnic」を手にし、様々なエンターテイメントや

様々な生活の場面で微細な音の強弱やニュアンスを感じ

そして思い出したのです。

オルゴールのことを。

聴覚と触覚の共鳴を。


金箱さんのお話しでは

「指先に振動を与えた時に、音に反応する脳の部位が活性化するという研究もある」

とのこと。

自分の身体の感覚が広がると

「音のある世界」とのつながり方も、楽しみ方も

そしてその関係性までもが変化していくのですね。

感じる力を制限することなくどんどんひらいていくということ。


そんなことを書いている今も私の頭の中では

オルゴール特有の「乙女の祈り」のメロディーが鳴り響いているのです。

中学一年生の冬。

窓の外の雪の光景とともに。

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