図像分摂取 東博にて
先日、東京国立博物館本館の展示を拝見した。そのメモ。
暮らしの調度 安土桃山・江戸
火事装束を見ることができてうれしい。「火事羽織」は刺し子にして布を強化。防護服と晴れ着のリバーシブルになっていて、鎮火したら裏地の派手な描き絵模様を見せて市中を練り歩いたとのこと。そして火事の被りもの。
左は武家女子用の「火事装束 一具」から赤地に波千鳥の頭巾。右は唐草模様の革製頭巾。火事場用の履物は無いのだろうか。武士用の火事装束は下記コーナーにあり。
書画の展開 安土桃山・江戸
遠目で何か良さそうな画があるなあと思って近づいたら。
長いツメするどい。
それは長沢蘆雪「蝦蟇仙人図」! 等身大(予想)仙人と二蟇(?)。前に白い蝦蟇を抱えて背に黒い蝦蟇を負っている。いままで見た蝦蟇仙人のなかで一番カッコイイ! 持ち帰りたい。これとそっくり同じ色合いで手拭いにグッズ化してほしいよ。実は夏の企画展で蘆雪の大画面モノクロ作品を見てもピンとこなかったが、これで評価が二割増し。
椿椿山「佐藤一斎夫妻像」(一斎八十歳)を並べて見ることができた。一斎七十一歳の夫妻像と四幅並べて見たい。男性は刀を持つが、女性の持物は何だろう。書のコーナーには佐藤一斎「語」あり、忍の字。
特集陳列「没後100年 林忠正コレクション ポール・ルヌアール展」
19世紀フランスの画家が描いた仏英の風俗画(素描、水彩、版画)。こういう作品を西美ではなく東博が所蔵しているのは意外。*1
都市風景、公共施設(裁判所、監獄、留置所まで)の内外、劇場(舞台、楽屋)のダンサーたちのいる光景の数かずを興味深く拝見。見ることができてよかった。絵葉書発行希望。この分野の物件は意外と少ないかも。
ガラスケース陳列でなく、本館の浮世絵の間や西美の版画室のように、近接して見られるようにしてほしかった。
特集陳列「猫」
やはり国芳「鍋島の猫」! 展示室の入口に行灯が――ではなくて、猫グッズ紹介の陳列ケースでした。
*1:西美の小企画展「フランク・ブラングィン版画展」も東博の所蔵作品が中心だ。
図像分摂取/絵葉書日乗 近美にて
先日、所蔵品ギャラリーを拝見した。そのメモ。
所蔵作品展 近代日本の美術
http://www.momat.go.jp/Honkan/permanent20061021.html
太田喜二郎「桑つみ」、中沢弘光「まひる」を見て、日本の被りものの基本は手拭いと笠、と思う。石井柏亭「草上の小憩」の二少年、ひとりは学生服に学帽、もうひとりは和服にお釜帽。後期には鳶職人の組織が消火活動をしている図、小林古径「加賀鳶」。前田藩江戸本郷の屋敷お抱えの消防団。独特のユニフォームを着ていたとのことだが、実物が残っていたら見てみたい。
梅原龍三郎「ナルシス」の構図に感銘を受けた。これを参考にアナタも自室で気軽にナルシスになろう。岸田劉生、ボウシを被った「B.L.の肖像(バーナード・ リーチ像)」、安井曽太郎「松原氏像」「藤山氏像」はメガネくん*1。川端龍子「盗心」はいいなあ。岸田の「古谷君の肖像」を見て、写実的に力士の肖像を描いてほしいと思った。雅山の胸像とか。
瑛九「赤の中の小さな白」はミステリアス。佐伯祐三「パリ雪景」は廃墟のようなディストーション。好きな国吉康雄「秋のたそがれ」と並べたい。
特集コーナーは《安井曽太郎》。ボブカット、赤いローウエストのワンピースを着てピアノにもたれる「少女像」が気に入った。泥濘部屋にお迎えしたい一枚。
左は少女のお靴(とピアノの足)。彼女の足もいずれ「金蓉」さんのような靴*2をはくようになるのだろうか。後期を見に行ったら大沢昌助 「岩と人」のオレンジ色の服を着た少女の足うらをチェックせねば、と思っていた。右端、屋外で日焼けしています。服の色と照応。
版画コーナーの特集は《メキシコの夢─北川民次、竹田鎮三郎、利根山光人》。おもしろいテーマ、興味深く拝見。北川の油彩は何度か見る機会があったが、版画は初めて。「メキシコの浴み」は魚と植物も御一緒に。「紫の花」は絵葉書にしてもよさそう。
日本画コーナー、〈浴室の美女〉もの小倉遊亀「浴女 その一」「浴女 その二」が隣接していた♪*3 何処か何かに憑かれたような山口華楊「洋犬図」、徳岡神泉「月明」*4は好きな画。
川端龍子の構図がカッコイイ「輸送船団海南島出発」(戦争画コーナー後期)は画面中央に十字と星、左右に月と日。ヘンリー杉本「我々のバス」はドナドナな画、左上に月。麻生三郎「赤い空」は右上に太陽。
細江英公「薔薇刑」が数葉。都写真美術館の企画展「球体写真二元論:細江英公の世界」が楽しみだ。
豊福知徳「立像」「STRUTTURA '67 II」は表面のノミ痕を見ていたら気が遠くなっていく。後品は真上からのぞきこんで見たい。
中西夏之の耳じゃなくて「韻」はサンドストーム、猫舌的触感。つぎの階に下りるとスグ、銀色アルミニウムの巨大な耳、三木富雄「EAR」が迎えてくれる。この所蔵品展で何度も見ている作品だが、いつもとは別の場所に設置されている。きょうは違った角度から眺めることになって、耳が顎のせしている横顔に見えた。
対面の草間彌生「冥界への道標」には銀色の靴が(凡の数えたところでは)十四足使われている。冥界まで何足の靴を履きつぶすのか。
岡崎乾二郎の寿限無のような長い題名の作品二点あり。好きな画。配色濃淡、視覚からいろいろなフレーバーを味わえる。フルーティーな香りも漂ってきそうな。ジャム好きな泥濘部屋に持ち帰りたい作品。
1950年以降、現代美術の作品は、表面の質感が楽しめた。光沢とか凹凸、具材のウネリとか。
写真の現在3 臨界をめぐる6つの試論 Photography Today 3: Resolution/Dissolution
http://www.momat.go.jp/Honkan/PhotographyToday3/index.html
伊奈英次「WATCH」「COVER」がおもしろかった。