「砂の城の殺人」とチュニジアと国境越えの謎
- 作者: 谷原秋桜子,ミギー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/03/10
- メディア: 文庫
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創元推理文庫から出ている谷原秋桜子の「美波の事件簿 」シリーズの第三弾。スペイン・アンダルシアで行方不明となった父親を探す旅に出るためにアルバイトにチャレンジする主人公の美波。今回は、廃墟専門の女流カメラマンと共に、彼女の生家である洋館へと忍び込む。そこの二階にあったのはミイラ化した死体。しかもそれが……
富士見ミステリー文庫から出ていた「天使が開けた密室 (創元推理文庫)」「龍の館の秘密 (創元推理文庫)」の前二作とは異なり、クロウトっぽい読者が対象だと割り切っているのか、なんだか登場人物たちの披露する推理のレベルが難しくなっている。しかも、その謎解きが最後に二転三転していく。参考文献として廃墟系の本を挙げているだけあって、廃墟巡り好きの自分なんかにも納得できる描写が多々ありました。
もっとも、正直、推理小説を読み慣れていない自分にはちょいと付いていけない場面もしばしばありました。途中、何度も取り残されそうになりました。旅の途中でヒマだったこともあり、泊まったホテルで何度か読み返したのですが、どーしても分からないポイントが二つ。トリックが無理矢理っぽいように見える点が一ヶ所。それと、ヒロインと探偵さんとの関係がなんで深まっていったのか最後まで納得できなかった。う〜ん、こーゆーのが本格ミステリーというのでしょうか。楽しめるのは楽しめるのだけどなあ......
さて、気になったのが、トリックとは無縁の「マグレブ」の話。ちょうどドーハからトリポリに行くカタール航空の機内でその箇所を読みました(以下、未読のヒトは注意)。
コーラ・ナッツと言えばアフリカ。で、その産地は北アフリカのモロッコやチュニジアなどのマグレブ地域(アラビア語で日が沈むところ→西方の意)。そんな本作のキーワードと関連する場所を行こうとしているのか……物語とは関係ない箇所で軽く興奮していました。お父さんはたぶんそこらを旅しているのだけど、美波たちが探しに行ってもなかなか見つからない。この後、「母をたずねて三千里」みたいな展開になっていくのか。
で、最後まで読んだところ、やはりお父さんはマグレブ地域にいる。それはおそらくチュニジア!!??
う〜ん、何か変だぞ。スペインのアンダルシアからアフリカへ向かうのなら、最初に立ち寄るのはモロッコのタンジェという街になるはず。そこから何かの事情でチュニジアの奥地へ行った……という設定なんだけど、そんなことはできるのか。
モロッコとチュニジアの間にはアルジェリアという国があるのです。ただ、この国、西部地域で内線が続いて政情が不安定なため、両国以外の第三国の人間はモロッコ側から陸路で入国できない。国境へ行ってもライフルを向けられて追い返されるのが関の山です。自分の名前の記憶も身分証明もないのなら空路でモロッコからチュニジアに入るのも難しい。
となると、どーやって移動できたんだろう…… なんとなく、「タイからミャンマーへヒッチハイクで入国した」と全国放送のテレビで大ウソをやってしまって、バックパッカーたちを爆笑させてくれた猿岩石を思い出します。
さて、そこらの問題をどーやってクリアーするんだろう......と重箱の隅を付いてみました。どーでもいいじゃんそんなことと思わないわけでもないのですが、それはまた別の話。