cream soda

youtubeなどの動画サイトに無断で曲をアップすることには様々な問題があると思うが、そういうサイトだからこそ、懐かしい曲に再び出会うこともあったりする。

以前、たまたまスーパーカーのLAST LIVEの映像を見つけて、その中に“cream soda”を演奏してるヤツがあった。この曲自体は大好きで、何度も何度も聞いているのだけれど、ライブで演奏したヤツはかなり久しぶりに観た。

というのもスーパーカーはファンに一番愛されてるであろうこの曲をライブでやることをある時期から封印してしまった。初期のライブでやりすぎて飽きたというのが原因だというが、理由はどうあれ、それはRadioheadが“Creep”をまったくやらなくなったことと似ている気がした。

スーパーカーに関していうとアルバムを全部買って聞くというような熱心なファンではなかったが、一応アンテナに軽く引っかけておく程度の付き合いをしていた。だから“My Girl”みたいな曲を出した時も「なるほど、なるほど」と思って聞いていたし“WHITE SURF style 5.”にはビックリして思わずシングルを買ったし、エレクトロニカ方面に行っても、ほほぅと思っていた。

解散したことも当然耳に入って来たわけだが、じゃあスーパーカーが解散ライブで何をやったのかというのはあまり気にしていなかった。まぁ代表曲は網羅されるだろうとはなんとなく思っていたのだが、まさかの“cream soda”――――まぁユニコーンだって復活しても“大迷惑”はやるけど“Maybe Blue”はやらないわけだし、そもそもスーパーカー――――というかバンドによって違うと思うが、ファンが聞きたいこの曲!っていうのは意外とやらなかったりすることも多く、“cream soda”もそういう扱いなんじゃないかなぁと思ってただけにこの映像には今更ビックリしてしまった。

ぼくが『スリーアウトチェンジ』を聞いたのは13歳か14歳の時でほぼリアルタイムだったと記憶している。

当時クラスの女の子がスーパーカーのファンで、恐らくその娘から借りたのだろう。その辺の記憶も曖昧なのだが、中学生の小遣いでアルバム3000円というのはかなりの高額商品だったので、買いたくても買えなかった想いだけはなんとなくある。ぶっちゃけた話中学生時代は記憶から消し去ってるというか、振り返りたくないほどの暗黒期だったので、ホントに曖昧なのだ。ただ、なんとなく記憶にあるのはテープで繰り返し“cream soda”や“DRIVE”を聞いてたことだけである。

その時ぼくはフリッパーズ・ギタービートルズに夢中になっており、中古CD屋を自転車でかけまわっては、月に一枚か二枚、ビートルズのアルバムやらフリッパーズのベストやらを買い、それをひたすら一ヶ月聞くというような生活を送っていた。ちょうどテケテケした小室サウンド全盛期だった頃だったので、ギターの音が入ってないJ-POPと呼ばれるモノがヒットチャートに出て来ると、その曲を嫌悪するような、ひねたガキになっていた。

そんなぼくにとって、“cream soda”はドンピシャな楽曲だった。ぶっきらぼうに歌うボーカル。メロはキャッチーだけど、ミスチルのように激しく上下はせず、さらに音数も言葉の数も極端に少ない。展開もAメロ→サビとシンプル。バンド自体が若いというのもあったが、こう若者特有の斜に構えてる感じが、ちょうどひねていた中学生の琴線に触れた。

そもそもその時はニルヴァーナを知らなかったから、初めてのオルタナテイストな曲に痺れた。イントロのノイジーなギターによってクリームソーダの炭酸がシュワーっと体中を駆け抜けるような感覚に陥った。なんでこんなにこの曲だけに惹かれるのかよく分からず、何度も何度もテープを巻き戻した。

今改めて聴くと“cream soda”はとても不思議なバランスで作られてる楽曲だと思った。特に相反するものをたくさん感じさせる妙な曲でもある。

メジャー系を多用した浮遊感溢れるコード進行なのに、ギターはかなりディストーションが効いてて、単音さえノイジーだし、テンポは決して速くないのに、疾走感がある。斜に構えてクールと書いたが、それと同時に胸キュンな感じになるのも不思議で、歌詞に関しても「自由」とか「君に会えたら」とか結構気恥ずかしいことを言ってたりするんだけど、それを「それだけさ」「そのせいだよ」という、作者の照れを感じさせる響きを一言付け加えるだけで、チャラにしている。ベースもギターもドラムもメロディもシンプルで初期衝動っぽいんだけど、間奏は変拍子になっていたり、母音を目一杯歌詞に散りばめてみたり、実のところいろんなところに小技が効いてるような曲でもある。

ずばり、この感じはなんだろうと考えた時、あまり言いたくないが、青春という言葉が素直に浮かんでしまった。

気恥ずかしいことを言ってみては、なんとなくごまかしてみたり、大声で言いたいことがあるのに、ボソボソとつぶやいてみたり、周りの型にハマりたくないと斜に構えてみたり、不器用なりに器用を気取ってみたり、楽しいのに何処か冷めていたりという思春期のころ、奥底に抱える何かが、“cream soda”の中にはあった。それは青春ということばを多用する曲には絶対に感じられない不思議な感覚だ。これはもはや音楽理論の中では消化出来ない何かが働いてるとしか思えない。

解散を決めた彼らが最後のライブで“cream soda”を演奏した。演奏してるのは音楽性がガラリと変わって、解散を決めたスーパーカーの姿だが、鳴ってる音はあの頃のままだった。当人たちはとっくに飽きてるはずなのに間奏終わりでナカコーとコーダイが目を合わせて笑っていた。なんか不思議な感じがした。あういぇ。

この曲も好き。

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