ブルース・ウィリスがイケイケドンドンだったときの映画『スリー・リバーズ』

ここ10日間くらいがっつり『モンハン』にハマっていたのだが、実はその前に数本、未見で「観てない」と人にいうと「えええ!!」と驚かれ、そのよさについてガッツリ語られてしまう有名な日本映画をいくつか観ていた。

しかし、そのどれもがハードで、わりかし集中力を必要とする映画だったので、その反動で何も考えなくても観れるノー天気な映画を観ようと、部屋のDVD棚からブルース・ウィリスの『スリー・リバーズ』をとりだした。

セガールの『アウト・フォー・ジャスティス』と『刑事ニコ』ヴァンダムの『ボディ・ターゲット』と『ダブル・インパクト』の区別すらつかないぼくである。この時代に製作されたブルース・ウィリスの映画も同じようにどれがどういう内容だったか覚えていない。

特にこの『スリー・リバーズ』と『ラスト・ボーイスカウト』は毎回どっちが船で川をパトロールする映画で、どっちがヘリコプターの上に人が落ちてバラバラになる映画だったかを人に聞くというのがネタ化しており、そのたびに知人から「とりあえず船に乗るほうが『スリー・リバーズ』だよ!」とツッコミを入れられるほどだった。

ビリー隊長やハル・ベリーも出ていた『ラスト・ボーイスカウト』 - くりごはんが嫌い

ちなみにまえに『ラスト・ボーイスカウト』について書いていたのだが、2年前に観た内容も思い出せないという体たらくである。


ホントに箸休め的に見始めたし、ハッキリいってこれをキッチリ一本の作品として評価してるような文章があるのか?と思うようなどーでもいい映画だと思うが、改めて観たらこれがまぁすごかった。ストーリーはどうでもいいとして、すごかったのは予算以上の金が渡されたのではないかと邪推してしまうくらい無駄に金がかかっているということである。

連続殺人事件のお話なので、現場の捜査のシーンが頻繁に映されるが、そのほとんどが『ダイ・ハード2』のラストのようなモブシーンでバックには警察の車両が山ほど写り込み、人もわんさか動いている。確かに連続殺人事件ではあるが、ここまで大規模な捜査をする必要などどこにあるのか?といった具合だ。

これが事件とはあまり関係ないようなシーンではどうなるか?

映画の中で雨が降るというのは一般的に「悲しみ」の表現であるといわれているが、この作品では主人公が一度でも関わりをもった女性が次々殺され、ドカドカと雨がふる。そして、これから受難が待ってるというシーンは雷がどんどこ鳴り響き、海を逆さまにしたような雨が降り注ぐ。セリフや表情ではなく映像での「悲しみ」の表現なのだが、あまりに度をこしていて、どういう風に観たらよいのかわからないくらいだ。

きわめつけは「喜び」の表現。これがアホみたいにわかりやすく、トム・サイズモアが「今夜は最高の日だぜー!」というとバックに花火がドーンと打ち上がる。この花火だけでも恐らく100万単位のお金が発生しており、ここまで贅沢に金を使われるとバカか!という感情を通りこして感動を覚えるくらいだ。書くまでもないが、カメラもこれでもかと動き回りすべてがクライマックスのように演出されていく。

ということは見せ場となるカーチェイスは何十台というパトカーがぶつかり合うわけで、そのへんは見ていただきたいところではあるが、CGが普及してないということもあいまって、全編違う意味でハリウッド映画のすごさを見せつけられた感じだ。

すごいのはこの作品の監督のフィルモグラフィがそこまでパっとしてないという点である。つまり『スリー・リバーズ』という映画はそこそこ撮影が仕切れる職人監督に湯水のように金を渡すとトンでもないことになるということの証明であり、ハリウッドの映画産業やブルース・ウィリスというスターがいかにイケイケドンドンだったのかがよくわかるような作品でもあるのだ。

昔、金曜ロードショーでさんざん放送されたような覚えがあるが、今更DVDをレンタルして観るのもよいかもしれない。おすすめである。というか、実際おもしろかったし。