限りないものそれが欲望『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

ウルフ・オブ・ウォールストリート』鑑賞。

とある証券会社に入社したディカプリオ。面接で一発かましたことにより、あるブローカーに気に入られ、株の売り買いのノウハウを教わる。しかし大暴落によって職を失い、街の小さな小さな証券会社に再就職。コンピューターもなく、のほほんとした雰囲気に一抹の不安を覚えるが、今度はそこでバカに適当な株を売りつけて、その半額を手数料としてもらうというやり方を教わった。そのふたつのできごとによって一気に才能を開花させたデカプーは同じマンションに住む男と偶然出会い、ふたりで証券会社を設立。証券詐欺でもって金を荒稼ぎするが、当然のごとくFBIに目をつけられ………というのが主なあらすじ。

実話を元にした一代記という意味では『グッド・フェローズ』や『カジノ』と方法論は一緒。映像テクニックの雨あられみたいな過去二作とは違い、そこはやや抑えめで(とはいえすごいんだけど)、珍しく血もあまりでないし、強烈なバイオレンスもそこまでない。

しかし、その内容はR-18を勝ち取っただけあっていちばん過激だといえる。

ひとことでいえば「セックス、ドラッグ、ロックンロール」な三時間。金を湯水のように使い、普通の人がやりたくてもやれないようなこと。もっといえば思いつかないようなことを次々と達成していく。客観的に見ればヒドいし、もっといえば人間として最低だが、それをテンション高くパワフルに、しかも観客がまるでそこにいるかように描いていくので、どっかでこれと同じことをやってみたいなぁと思わせる。そういった意味ではこれは欲と金をテーマにした『時計じかけのオレンジ』なのかなと思った。詳しく書くと楽しみが半減するので伏せるが、まぁこんなことよく映像にしたな/できたなというシーンが次から次へと押し寄せる。井上陽水の『限りない欲望』じゃないが、人間の欲には限りがなく、行き過ぎると恐ろしいが、それは誰にでもあることなのだ。

今作でディカプリオはゴールデングローブ賞のコメディ部門で主演男優賞を受賞したが、それも納得。トニー・モンタナ級の演技でもって彼のなかでもベストアクトだろう。先ほど『時計じかけのオレンジ』に例えたが、この作品の構成は『スカーフェイス』にも似ている。この映画の主人公はヤクに溺れてはいるものの、売るのはヤクではなく株なのだ。もしかしたら数年後にはカルト化されるかもしれない。カルト化される映画というのは公開されたときはそこまで絶対的な評価を得てるわけではないのだ。

というわけで、ここ最近のスコセッシびみょーっていってるそこのあなた!!ダントツでおすすめ。個人的にはここ数年観た映画のなかでもベスト。