ホントに魅力がすごかった件/ゲスの極み乙女。『魅力がすごいよ』

今年最も知名度を上げたバンドといっても過言ではないゲスの極み乙女。のメジャー1stフルアルバム『魅力がすごいよ』を聴いた。

知らない人のために雑に説明するとゲスの極み乙女。フュージョンのようなギターに、縦にはずむピアノとタイトなリズム隊で構成された音像で、そこにメロがあるんだかないんだかよくわからない、ラップのようなものが乗っかってるのが特徴。自らヒップホッププログレバンドと自称してるように、テンポやビートはコロコロ変わり、歌詞の内容もJ-POPにはないようなもので、会いたくて震えたり、ゲレンデが溶けるほど恋したいようなものばかり聴いてきた人にとっては新鮮に聞こえることだろう。

遊びの要素が強いと思ったらメンバー全員「本妻」がいる「愛人」バンドであり。故に奇をてらうことにすべてをかけてるような感じがある。特に『キラーボール』という曲はゲスの極み乙女。を象徴するような楽曲で、サザンの『勝手にシンドバット』の現代版だなと素直に思った。

しかし、その一方で遊びすぎというか、ふざけすぎてる側面もあり、わりとスベってることも多く、ここがユニコーンやサザンとは違うところである。わけわからん寸劇がはじまったり、途中でクラシック曲を弾いてみたり、ああここ惜しいな……と思うこともしばしば。実際にこの部分を聴いて妹はドン引きしていた。ボーカルも小山田圭吾以降の、か細く無感情に歌うタイプのもので、最近でもセカオワやドラマチックアラスカなど、この手のものが増えてきたので個性的とは言いがたい。

ところが、それを本人たちも自覚していたのか、今回の『魅力がすごいよ』はメロを聴かせるような曲も多く、いわゆる“奇のてらい”がほぼなくなった。ありきたりな言葉でいうなら「バンドの進化を素直に感じさせる一枚」となっている。

スキッドめいたものはあるものの、捨て曲はなし。個人的には3曲目の「crying march」と4曲目の「星降る夜に花束を」という曲が気に入った。もちろん1曲目からゲスらしさものは全開で、シングル曲もおさまるべくしておさまってるような感じ。「サリーマリー」なんかは「猟奇的なキスを私にして」みたいな雰囲気でシングルでも切れるレベルの曲。いや、全部らしさ全開でいけるっちゃいけるわけだが。

好みによって評価がハッキリわかれるバンドだとは思うが「好きなバンド」とは言いづらく「好きな曲は好きだけどなぁ……」というスタンスだったぼくですら大傑作だと思ったので、気になった方は是非レンタル屋さんへ足へ運んでみると良い。

ちなみに期間限定なのか、このアルバムはものすごく安い値段で販売している。いろんな意味で『魅力がすごい』のである。おすすめ。