くりごはんが嫌い このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2016-03-22

[]ヒッチコック映画の決定版『北北西に進路を取れ14:39 ヒッチコック映画の決定版『北北西に進路を取れ』を含むブックマーク

北北西に進路を取れ』を音声解説で鑑賞。

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最近「昔観ておもしろかったんだけど、いまひとつ細部を覚えてない名作を見返す」ということをやっていて、その流れで久しぶりに観ようと思ったら、DVD脚本家の音声解説とメイキングがついていることを今更知り、それで観てみようと思った。

注・ネタバレしてます。

元々は「ラシュモア山でのチェイスを撮りたい」というヒッチコックの一言から企画がスタート。当時、新人で元々ヒッチコックファンだった脚本家アーネスト・レーマンは「誰が誰を追いかけるのか?どうやってラシュモア山にたどり着くのか?」など何も考えずに執筆をはじめた。さらに打ち合わせ段階で「ウィットに富み、洗練され、魅力に満ち、アクションがあり、舞台が変化する映画にしてほしい」といわれ、それに応えるようにレーマンは「ヒッチコックの決定版にしたい」と数ヶ月推敲を重ねた。その脚本の出来にヒッチコックは感激し、4ページに渡る手書きの手紙をレーマンに送ったほどだった。その気概はしっかり観客に伝わり、フランソワ・トリュフォーは「アメリカ時代のヒッチコック作品の決定版」とヒッチコックの前で断言し、映画を研究している学生たちは「ヒッチコックで一番好きだ」と口を揃えてレーマンに伝えた。

とはいえ、話が話だけにケイリー・グラントのセリフは説明的であり、そこが気になったのか、グラントは誰にも文句がいえず、若くて脚本自体を書いたレーマンに意義申し立てた。レーマンは「彼は威圧的ではなく、いいヤツだった」と語っているが、なぜかそのあとになんの文脈もなく「ケイリー・グラント麻薬常習者だったんだよ。撮影中はやってなかったけどね」と意味深に語っている。

プロット自体はある映画ライターの「架空のCIA工作員がいるって話を知ってるか?そうすれば本物の工作員が悪党に殺されないんだ」というパーティーでの会話からヒントに、架空のスパイに間違えられた男がどうにかしてラシュモア山にいくという設定にした。国連本部や飲酒運転で逮捕されたときどのような流れになるのかなど、レーマンは徹底的にリサーチし、脚本にリアリティを加えていった。

しかし、この作品、中盤でCIAの人間が言っているが「そもそも存在しない、誰も見たことがない人物にケイリー・グラントはなぜ間違えられたのだろう」という、軸にならなければならない部分に無理がある。それだけでなく、なぜでっちあげた工作員の部屋の中に国連の人物が写っている写真が置いてあるのか?レナードがイヴに指示する公衆電話の番号はどこで知ったのか?事故死に見せかけなければならないのになぜ農薬散布の小型飛行機は銃撃を行ったのか?など、細かい部分でつじつまが合わないところがある。

だからといってその欠点がこの作品の価値を下げることなどない。誰が観ても文句なしにおもしろい観客巻き込み型サスペンスアクションの最高峰。「私は食事の後にメイク・ラブをするのよ(あまりに過激ということで音声だけは変えられている)」というセリフやラストのトンネルという穴に列車というおちんちんが……など下ネタも華麗に決まっている。

参考資料:『北北西に進路を撮れ』アーネスト・レーマン音声解説、メイキング。晶文社『定本 映画ヒッチコックトリュフォー

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2016-03-18

[]名刺代わりがすでに完成系/出口陽『Daybreak』 20:14 名刺代わりがすでに完成系/出口陽『Daybreak』を含むブックマーク

出口陽の『Daybreak』を聴いた。

Day Break (初回限定盤)

Day Break (初回限定盤)

SKEを微妙に箱推ししていたので“ゆるゆる/ぐだぐだカラオケ大会で「ルビーの指環」を歌った娘”程度には認識していたものの、主力メンバーがガッツ卒業してからSKE自体から離れており、出口陽自身が卒業していたとかその辺の話はまったく知らなかった。ところが、去年の冬くらいに友人ふたりがこのアルバムの制作に関わっていることを知り、それで本人からおすすめされたのでわざわざ購入して聴いた。よく考えたら前田敦子板野友美以外、48G卒業生の音源というのは聴いたことなかったし、ソロで勝負するからには何かしら光るものがあったのだろうと思ったから興味はあった。にしても、今度何かおごってもらおう。

とはいえ、前田敦子はともかく、わりと板野友美にしても体たらくだし、秋元康の息がかかってないところで有象無象の一枚だろうとそこそこナメてかかってたんだけど、良い意味で裏切られた。予想以上だった。

まず、音源うんぬん以前に出口陽のボーカリゼーションがとにかくすばらしい。

やや鼻にかかりながらもロックを歌える芯の強い歌声の持ち主である。この声にうまいことディレクションが乗っかれば曲によっては大化けするわけだが、それが見事にハマっている。いわゆる出口陽という歌い手さんのアルバムになっていることには感心した。

楽曲に関してもワルツになったり、時計のSEが入っていたり、カットアウト風エンディングとビートルズチックだったり、スマパンのようなストリングスアレンジがあったりして楽しい。まぁこれはビートルズスマパンを意識してるのではなく、こういうことがもはやスタンダードになっているということなのだろう。メロに関してはそこまで突き抜けず、エモっぽいといってはそれまでだが、ギターの音が気持ち良く鳴っており、それで繰り返し聴いてしまう。そういう部分には興味ない人にとってはやや厳しいところもあるかもしれないが。

あと、驚いたのは歌詞だ。良い意味で散文的であり、コラージュ感覚で書かれたものだが、頭の中にかっこたるイメージがあって、そのイメージからことばをひとつひとつ紡いでいってるという印象があり、出口陽の声の質もあいまってちゃんとフレーズフレーズが耳に飛び込んでくる。「この痛みが胸にある限り 生きてると思えるよ」とか「宗教みたいな恋」などはキラーラインだなと思った。

世界観を設定したいのか、一曲目に1分20秒のインストがあり、AKBでいうところの「overture」みたいなものだろうが、それが気になるくらいで全体的には良いアルバムだった。出口陽というアーティストの名刺代わりでありながら完成系。あまり振り幅を広くせず、このラインでいくならこれからも楽しみである。

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2016-03-14

[]この映画のキリストは誰なのか?『インヒアレント・ヴァイス14:26 この映画のキリストは誰なのか?『インヒアレント・ヴァイス』を含むブックマーク

伊集院光の週末TSUTAYAに行ってこれ借りよう」というラジオ番組がある。

第一部で伊集院光映画好きな有名人に映画をおすすめしてもらい、二週間後に第二部としてその映画の感想を語り合うという特殊な番組だ。スポンサーがツタヤなので、足を運んでもらうきっかけのための番組なんだろうが、ゲストが豪華でそれぞれ思い入れたっぷりに好きな映画について語るという部分に特化しており、映画好きにはたまらない番組になっている。

そんな番組でジャズミュージシャン菊地成孔が『ロング・グッドバイ』を紹介するという回があった。とても丁寧に解説していて、バックグラウンドはおろか、原作も読み込んでる感じで、ちゃんとここまで本質を理解して観てる人がいるんだと関心したのだが、そのとき「あまり映画を観ない人」の立場にいる伊集院光はこんな感想を述べていた。

「これ推理モノとして観てしまったんですよ、それが間違いで、これ変な人がいっぱいいる!っていう映画ですよね!」

これはまったく『ロング・グッドバイ』……というよりもレイモンド・チャンドラー小説の「ある側面*1」を言い当てているが、実はトマス・ピンチョン原作の『インヒアレント・ヴァイス』もまったくそういう映画であった。

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ハッパ吸ってるヒッピーな私立探偵が元カノから愛人を助けてほしいという依頼を受ける。その私立探偵は元カノに未練タラタラであり、複雑な想いを抱きつつ、プロとして仕事をしはじめるのだが……というような話。

ロサンゼルスが舞台で私立探偵が主人公。さらには『ロング・グッドバイ』を下敷きにしているという情報だけで観たのだが、これがチャンドラー小説以上にミステリーなことは何も起きない。人と人が出会っては別れていくを繰り返し、クライマックスでとんでもないことが起こるというような構成。監督はポール・トーマス・アンダーソンだが、ハッキリいえば『ザ・マスター』同様、筋書きはあってないようなものである。しかし、一度確立した撮影方法を捨て、また新たな境地にたどり着いたという感じで、今作では70年代の感じをアメリカン・ニューシネマな雰囲気で切り取る。カメラも映像も演技も不安定で編集はめちゃくちゃ、意図的にフレアも起きている。ジョン・レノンのようなホアキン・フェニックスはもちろん、観た人なら誰もが「パンケーキ!」をマネしたくなるジョシュ・ブローリンの刑事役もかなり印象に残る。

ティーザーが「最後の晩餐」モチーフで、キリストの位置にホアキン・フェニックスがいるのだが、作品内でもこの構図がでてきて、しかも作品内におけるキリストはオーウェン・ウィルソンであり、しかも彼は劇中で「一度死んでいる」ような扱いということから、ホアキンはヤコブであり、ジョシュ・ブローリンはヨハネなのかなとかそんなことを思ったりした(船がどうしたというくだりがでてくるが、ヤコブとヨハネは漁師である)。

とはいえ、かなり原作通りらしいし、トマス・ピンチョン自体がこういうゆるゆるのハードボイルドが好きなのかもしれない。『ラスベガスをやっつけろ』や『ブラウン・バニー』が好きな人におすすめしたい感じだ。

ちなみにぼくはこの映画を二回観たのだが、どうも筋が入ってこないのである。それもこれもふくめて『三つ数えろ』っぽいんだけど。

「インヒアレント・ヴァイス」、「最後の晩餐」をモチーフにしたキャラクタービジュアル&劇中写真公開 : 映画ニュース - 映画.com

*1:それがすべてではないため

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2016-03-11

[]コーエン兄弟の原点?/レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』 12:29 コーエン兄弟の原点?/レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』を含むブックマーク

超遅ればせながら『大いなる眠り』を読んだ。村上春樹訳のほう。

大いなる眠り

大いなる眠り

チャンドラーは恐らく世界で一番好きな作家かもしれないが*1双葉十三郎が翻訳した代表作のひとつ『大いなる眠り』は途中で挫折してしまい、ずーっと未読の状態がつづいていた。2012年に村上春樹が新訳したものが発売され、すぐに買ったのだが、これまた半分くらい読んで挫折してしまい、今回ようやく最後まで読むことができた。

挫折した理由は複雑すぎるプロットのせいである。

本来なら大富豪への脅迫事件で片付くはずが、第三者、第四者、あげくに第五者の存在のせいで死体の山が築かれていく。しかもこれらはほぼ同時多発的に起きた殺人事件であり、たまたま事件に関わってる人物がそれぞれ顔見知りだったり、少しだけ繋がっているせいで、主人公の私立探偵マーロウはおろか、4人の検察と刑事を混乱させていく。当然ながら読むほうも混乱する。というか、これに関わったすべての人物が混乱しているのではないだろうか。あとがき村上春樹も書いているが、結局、読み終わってみると「この事件はなんだったの?」というような感想を持ってしまうし、もっといえば、リーガンという前科者をスターンウッドという大富豪が異様にかばってる理由やカーメンというスターンウッドの次女が素っ裸になって写真を撮ってもらうクセがあるのは何故か?など、まぁ謎がかなり残る小説である。お前らいつ出会ったんだよ?とか。

だからといってつまらないか?と聞かれればすぐさまNOと答えるだろう。まず新訳版はチャンドラーの魅力である多彩な比喩をひとつ残らず翻訳しきっており、純文学のごとく、文章そのものがおもしろくなっている。あげく、この複数の殺人事件が立て続けに起こることで息もつかせない。ハードボイルドの始祖であるが、ミステリーとしての魅力もかなり大きい。コーエン兄弟チャンドラーから影響を受けていることで知られているが、チャンドラーというよりはこの『大いなる眠り』に影響を受けているのではないかと思うほどである。この小説のラストにフランシス・マクドーマンドがでてきて「なんでこれっぽっちのお金でこんなに人が死ななければいけないの?」といえば『ファーゴ』になるし、CIAのふたりがでてきて「なんでこんなややこしいことになってんだよ」といえば『バーン・アフター・リーディング』になる。『ビッグ・リボウスキ』は『大いなる眠り』に影響を受けているが(大富豪にいくくだりはホントにそのまんまだし、娘たちがろくでなしであるというのも共通している)、込み入り方は『バーン〜』の方が近い気もする。つまりそういう話である。

さらに39年の作品なのにもかかわらず、アンダーグラウンドの描き方が強烈だ。ロサンゼルスを舞台にしており、ハリウッドに近い場所がよくでてくるが、非合法でポルノが流行しており、ドラッグらしきものをキメ、ゲイが登場するなど一見華やかな世界の裏側が暴かれるようである。当然ダーティワードを口にするキャラクターも出てくる。

多くの人が名作というようにぼく自身もチャンドラー作品のなかではかなり好きな部類に入るかもしれない。たしかによくわからない部分もあるが、噂に違わぬおもしろさであった。

ちなみに『三つ数えろ』は、この原作がほぼ完全再現されているが、ヘイズコードの関係もあって、その“いかがわしい”部分がすべてカットされており、キャラクターの掘り下げもそこまでない。もちろん文学的なナレーションもない。やはりチャンドラー作品の良さは話の筋ではなく、その多彩な文章と異様なキャラクターにあるんだなと改めて思い知らされた次第である。

*1:なんやかんやで『ロング・グッドバイ』は『長いお別れ』もふくめると6回読み返しているし、『さらば愛しき女よ』も4回でそこまで読み返してる作品はそうないため

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