人におすすめされなければ絶対に観てない『超高速!参勤交代』

超高速!参勤交代』をレンタルDVDで鑑賞。

職場の上司と「自分では絶対にレンタルしないけど、人におすすめされて観て、それでいておもしろかったといえる映画を貸す」という遊びをしていて、その人は基本的に映画を観るという行為をあまりする人ではなかったし、さらに好きな映画は『ワイルド・スピード』シリーズだったので、真逆の『用心棒』を貸した(ホントは『トルク』を貸したかったんだけど、人に貸してたので貸せなかった)。モノクロ映画も色がついてないから嫌いという人であったが、ちゃんと仕事終わりで寝ずに観て、おもしろかったと言ってすぐにDVDが返ってきた。「いやー、絶対に観ないと思ってましたよ、時代劇だしー」と聞いたら「時代劇好きだよ。『超高速!参勤交代』とか、ちょーおもしろかったし、二回も観たし」と返されてそこではじめてその映画の存在を知った。

調べたらヒットしているようで、なんと今年に続編が公開されるというではないか。なぜ知らなかったのだろうと思ったら、公開されたときは『アナと雪の女王』フィーバーで、そっちに目がいっていたようである。

とはいえ、基本的に『超高速!参勤交代』という、映画館に足を運ぶことはおろか、死んでもレンタル店で手に取ることのない、ダサいタイトルだ。知っていたとしても観ることはおそらくないだろう。しかも監督は中の下くらいの映画「しか」撮っていない人で、まぁこの人の新作が公開されたからといって率先して観にいく映画ファンなど、この日本に存在するのだろうかという感じ。言われてからレンタル店でパッケージを観ても全然ピンとこなかったし、二週間くらいスルーしていたのだが、「絶対観た方がいいよ!むしろ観て!マジでおもしろいから!」と執拗に連日言われたので、軽い接待のつもりで観た。そうしたら驚いた。

これがものすごくおもしろかったのである。

結構ややこしく込み入ってるあらすじだが、要約すると、ある老中の陰謀により、8日かかる参勤交代を5日で完遂しなければならなくなった小藩の話。

浅田次郎も『一路』という小説を書いているが、プロットはそれとほぼ一緒。古くからは『オデッセウス』という物語もあるが、ある場所からある場所へ移動するさい、次から次に無理難題や難関が押し寄せ、その度に少人数の隊が知恵を絞って突破していくという骨格があり、明らかに『隠し砦の三悪人』を下敷きにしている(しかもその少人数の隊は7人で菊千代という名前の猿がいるという『七人の侍』オマージュもあり)。

丁寧な前フリとロケハンが見事なウエルメイドな映像。全体的に地味ながら分かってるキャスティング。参勤交代という映画にして持つのかわからないテーマでありながら、コメディ、ラブストーリー、アクション、泣き、裏切りとエンターテインメントの随を集めたような展開でもって、一秒たりとも飽きさせない。

しかも福島が舞台ということで、参勤交代ができないともしかしたら住むところがなくなってしまうかもしれないというくだりや「福島の土をこれからも大事にしろ」というメッセージなど、全体的に3.11のことが根底にあり、飢饉のときに米を送るなど、わりと顕著にそういったシーンも出てくる。

基本的に殿様が馬に乗らずに走るとか、籠に乗らないとかありえない部分もあるが(しかし、籠に乗らないという部分は閉所恐怖症という見事な設定で突破)、ここまでのことをされたら細かい部分に文句をいう気もない。親父にも見せたら「ここ最近観た映画で一番おもしろかった」と言っていたし、一日一本映画を観るわりに、つまらなかったらすぐ寝るおかんも寝ないで最後まで楽しんで観ていたので、まぁそういう映画だと思っていただければ間違いない。普通におすすめ。続編も観たい。