くりごはんが嫌い このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2016-09-14

[]意外や意外、ド直球のノワール黒川博行後妻業16:39 意外や意外、ド直球のノワール/黒川博行『後妻業』を含むブックマーク

前回、黒川博行直木賞受賞作『破門』と『国境』について書いたのだが、その二作から黒川博行という作家にドップリハマってしまい、その二冊を含むシリーズの『疫病神』、『暗礁』、『螻蛄(けら)』を全部読んだ。

これが信じられないほどおもしろく、今までの読書体験のなかでもトップクラスだったのだが(このシリーズについてはまた別エントリで)、はたしてこの他の作品はどうなんだろうと今映画化されて話題になっている『後妻業』の文庫版を読んだ。

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発売された直後に関西連続不審死事件というまったく同じような事件が発覚したことで話題になったが、そのタイトルから、事件と同じように資産家のジジイをだまくらかして公正証書遺言を作成させ、殺して遺産をその子供たちから奪い取る“後妻業”についての話かと思いきや、興信所の探偵(元マル暴担当の悪徳刑事)にジワジワと追いつめられていく犯人を描いたド直球のノワールであり、良い意味でやられた。

エルモア・レナードに影響を受けているだけあり、ひとつのシーンをひとりのキャラクターの視点で描いていくという手法で、前半は犯人と被害者家族の視点で後妻業の手口を丹念に描いたクライムノヴェルであり、中盤は探偵(元・マル暴担当の悪徳刑事)の視点でコツコツといろんな場所へと足へ運び、細かく細かく事件を追う、松本清張ばりの社会派ミステリーであり、後半は犯人の視点から、その探偵にジワジワと追いつめられ、破滅に向っていくノワールと、ジャンルがコロコロ変わっていく。

特に探偵のキャラクターがほぼほぼ無感情で淡々と犯人を追いつめていくのでハードボイルドの要素も多分にあるが、その人間とは思えないやり方で人を殺していく後妻業の天才・小夜子はそれこそ『鬼畜』のようでもある。そしてその探偵が依頼人の依頼を無視して、暴走することから破滅に向っていくというのは小説ではなくコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』のようでもあり、それこそ『疫病神』シリーズよろしく、いろんな要素の良い部分だけをぶっこ抜いて再構成したサンプリング小説といってもいいかもしれない。

もちろん黒川博行が得意とする関西弁の小気味良さと『疫病神』シリーズを読んだ者なら思わずニヤリとしてしまう小ネタ(ヤクザの息子や“ショーファー”といった単語など)もあり、あとがきに書いたあった通り集大成的な作品といえるのかもしれない。

後妻業”についての話を期待すると肩すかし喰らう可能性もあるが、それを遥かに凌駕するおもしろさ。480ページもあるように思えないスピード感と圧倒的なリアリティに手に汗握った。ノワール好きなら必読といえるだろう。超大傑作。

後妻業 (文春文庫)

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2016-09-02

[]直木賞を受賞した作品としなかった作品/黒川博行『破門』と『国境』 23:45 直木賞を受賞した作品としなかった作品/黒川博行『破門』と『国境』を含むブックマーク

黒川博行の『破門』と『国境』をそれぞれ読んだ。

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元々読書量が多くなく、不勉強ながら黒川博行という作家のこともなにひとつ知らなかったが、唯一読書ウォーキングが趣味の親父が「ここ最近読んだ本のなかでダントツにおもしろかった。読んだ方がいい」とおすすめしてきたので、ならばと読んだのが直木賞を受賞した『破門』だった。

親父は浅田次郎横山秀夫など、ぼくが決して手に取ることのない本を読むような人なので、それらをあまりおすすめしてきたりはしなかったのだが、珍しくわざわざすすめてくるだけあって、なるほど。無類のおもしろさだった。

短めのセンテンスで紡ぎ、泥臭い関西弁によるやりとりが心地良く、まるで漫才を聞いているかのようなリアリティとユーモアがあり、ノワールのわりにポップでドライブ感があり、非常に読みやすかったし、日本という土壌でエンターテインメントするには丁度良い題材とアクションで、これが映像化されたのも納得。ジェイムズ・エルロイにも似た文体エルモア・レナードのような軽快さがあるなと素直に思ったが、若いときにそればっかり読んでたと作者がインタビューに答えていてすごく合点がいった。

何の情報もなく『破門』を読んだのだが、元々これは『疫病神』という作品のシリーズ最新作であることが分かり、そのなかに出てくる「北朝鮮に行って死にかけた」というエピソードが気になり、その話が読みたいと『国境』もすぐに購入して読んだ。いや、正確には月日はわりと経っていたのだけれど、頭のかたすみにずっとあって、あるときにふと「あ、あれ読みたかったんだ」と思い出して読んだのだが、こちらも信じられないくらいおもしろかった。

ハッキリ言ってやってることは『破門』と変わらないのだが、なんせ舞台は北朝鮮である。外に出るだけでガイドが付き、夜道を歩けば警官に取り押さえられるという状況。こんななか、自分たちをダマした詐欺師をヤクザとカタギのコンビが追うというストーリーで否が応でもワクワクする仕掛け。北朝鮮という国を徹底的に調べあげたジャーナリズムとエンターテインメントが合致。そこに映像化不可能なほどのスケールのデカさと男泣きの友情、さらには激しいバイオレンスと、とにかくおもしろい要素しかない小説だなと思った。読書量が多くないなかでもこれは今まで読んだなかでも上位に入ると言ってもいいだろう。

『国境』は直木賞候補になったのだけれど、惜しくも落選したらしく(落ちたことを知った作者は二週間ほど悔しさを引きずっていたらしい)、今回の『破門』による受賞は念願だったといえる。だが、ふたつを読み比べると、間違いなく直木賞を取るのは『破門』になるだろうと思った。

確かに『国境』は信じられないほどおもしろい奇跡の小説といってもいいだろうが、よくできているのはどちらか?と聞かれると『破門』と答えるかもしれない。帯には「疫病神シリーズ最高到達点」と書いてあるが(だいたい本の帯は売るために大げさなことが書いてある)、あながちそれも間違いじゃないというか。納得できるくらいだった。

スピッツが売れるために『クリスピー』というアルバムを出したら思ったほど売れず、落胆し、そこから肩の力を抜いて『空の飛び方』を作ったら名盤になったというのは有名なエピソードであるが、それに近いものを感じるというか、必ずしも作者による自信作が読者や直木賞の選考委員の人にウケるとは限らないんだなということである。

ちなみにこの二冊があまりにもおもしろかったので、同じシリーズの『螻蛄(けら)』を読んでいるのだが、こちらも相当おもしろい……というか、主人公ふたりのやりとりが確実にパワーアップしているのがわかる出来。『破門』は来年映画化されるようだが、予習のために読んでみるのもいいかもしれない。おすすめだ。

破門 (単行本)

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