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(文・Y.AZUMA)
(07年6月執筆)
ゲゲゲの鬼太郎(07年アニメ版)
(フジテレビ 日曜日 9時30分)
日曜の朝、NHK教育『新日曜美術館』前半の視聴をあきらめ、こちらを見てしまっている。
さて、07年6月10日の回、11話「おばけ漫才」。へたくそな漫才師が妖怪界の興業師・キツネの白山坊と契約し、魂を奪われそこなうと言う話。
白山坊先生の声を聞いていて、「ムッ?」と思った。良く聞いて「ハッ」と気がついた。初代ねずみ男先生にしてこのキャラクターの決定的な肉付けをした大塚周夫(おおつか・ちかお)御大将の声である。
このこすっ辛い白山坊の声を大塚先生、ブラック魔王(『チキチキマシン猛レース』(68)、『スカイキッドブラック魔王』(70))の計算高さとノロイ(『ガンバの冒険』(75))の卑怯さで演じていた(基調はやはりねずみ男先生である)。
しっかし、四代目ねずみ男先生の役の高木渉(たかぎ・わたる)も大変だったろうな。
落語で言えば……、古今亭志ん朝から教わった彼の十八番を彼と一緒の高座に上げるとか、三遊亭円朝の前で怪談話をするようなもの。
演劇で言えば……、杉村春子を助演にして『女の一生』のヒロインを演ずるとか、そんなところ。
大塚先生、「ねずみ男ちゃん」というかわいい呼び方で三代後のねずみ男先生に呼びかけていたし、高木渉も「白山坊先生」と敬称をつけていた。
鬼太ちゃんも、21世紀を驀進中である。
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ゲゲゲの鬼太郎(07年実写映画版)
(07年 松竹)
2007年5月3日 日劇2で11時40分の回を鑑賞。ざっと見て150人くらいの入り。みな親子連れがほとんど。
まずは言いたいことを箇条書き。
・利重剛(りじゅう・ごう)が尾羽打ち枯らしたリストラお父さんを好演。マンガなら水木キャラクターの「三角メガネ」あたりが演じる難しい役を人間なのに完璧に演じきっていた。しっかし、この映画の利重剛って、「美しい国」の首相にソックリ。さすると、結構かの首相も追い詰められて精神的に参っているのかもしれない(ちなみに『帰ってきたウルトラマン』(71)のなまけ怪獣ヤメタランスを操る宇宙怪人ササヒラーは、彼の本名のもじりであり、母親である脚本家・小山内美江子(おさない・みえこ)のご機嫌を取るためにスタッフがつけたとか)。
(編:なんと小山内・利重親子の本名、笹平から取られたものなのです・笑)
・京都の梅小路機関区(うめこうじ・きかんく)やJRの工場でのロケがあったからエンドのロールを確認したら、JR西日本が協力していた。この工場、利重父さんをリストラした会社って設定だったから、うーん、無意識の意地悪を感じるなあ。
・ウエンツ瑛士(ウエンツ・えいじ)の演ずる鬼太郎。昔、夏目房之介先生が描いたアメリカンコミックス版「鬼太郎」にソックリ(ソックリ話ばかりだ)。
・今回の鬼太郎。マンガ後半のやる気の無い鬼太郎でした。
・田中麗奈(たなか・れな)の猫娘。あそこまでミニにすればいやらしくない。
・大泉洋(おおいずみ・よう)のねずみ男。ちょっと汚いかも知れない。意外にこの役、想像以上に品格と気品が必要かも知れない(二枚目で演じないと難しいかもね。このキャラを作った大塚周夫先生は偉大だ)。
・室井滋(むろい・しげる)の砂かけ婆に、間寛平(はざま・かんぺい)の子泣き爺、もうご期待の通り。
・日本映画界きっての名脇役・神戸浩(かんべ・ひろし)が妖怪・百々爺(ももんじい)を「顔出し」で演じていた。あの着ぐるみ妖怪の諸先生の中に混じって、全然遜色なし。大泉ねずみ男も「見上げ入道センセイ、百々爺センセイ」とちゃんと敬称をつけていた。
・いつもなら、時代劇を取っている松竹京都撮影所がメイン。そのため、天狗ポリスやろくろ首など、和服の着こなしが見事。山田洋次監督の時代劇の合間の毛色の変った仕事だったのかしら。
・一反木綿(いったんもめん)。「いい夢見ろよー。」って、このセリフは、柳沢慎吾だ。うーん、ホントはねずみ男先生をやりたかったに違いない。
・原作は、「妖怪大裁判」「まぼろしの汽車」「天狐(てんこ)」。すべて、いいお話ばかり。これでは文句は言いません。
・さまざまなシークレット配役があるそうで。私が気のついたのは利重父さんを捕まえた刑事さん。キャストに名は無いけど、どう見ても奥村公延(おくむら・こうえん)にしか見えない演技。でも、彼はもっと歳がいっているはず。ひょっとして、イッセー尾形かなと邪推する次第。
・CGはもう使って当然状態。何も文句なし。「どう使うか」がこれからの課題であり、「CGをなぜ、どう使わないか」今後の映画の売りになりそう。
まあ、この映画を観て、千人のうち十人くらい原作マンガに手を伸ばし、一万人のうち三人くらいは、水木しげるのディープなファンになるかもしれない。
だって、水木先生。本来なら国立国会図書館や東洋大学の図書館の奥のほうの江戸時代の和書に封じ込められ*1、誰も省みられなくなるはずだったさまざまな妖怪を、二十一世紀の今の世の中に生き延びさせ、彼らを日本中ほとんどの人の心の中に「懐かしい知り合い」として復活させた人。柳田國男(やなぎた・くにお 民俗学の創始者)より偉大だろう。
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