(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
ザ☆ウルトラマン#40「怪獣を連れた少年」 ~佳編
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#41『激突!! ウルトラマン対ウルトラマン』
回転怪獣ギロス登場
(作・若槻文三 演出・関田修 絵コンテ・藤岡正宣 怪獣原案・旭靖美)
(サブタイトル表記の他、にせウルトラマンJ・宇宙兵士ギロ星人登場)
(視聴率:関東10.3% 中部11.8% 関西13.7%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
◎怪獣が出現する度に現われる謎のウルトラマンの存在に、ヒカリ隊員が悩むという作品だが、にせウルトラマンJ(ジョー)の目的が巨大戦闘艦ウルトリアを油断させて近づくためだけなら、わざわざそのようなことをしなくてもよく不自然。
◎田舎の風景や谷間の戦いなど、この番組の初期を思わせるものがあるのが懐かしく嬉しい。
※:製作No.41『激闘! ふたりのウルトラマン』
#41『激突!! ウルトラマン対ウルトラマン』
(文・T.SATO)
(2010年書き下ろし)
今ならサイレンだが、木造の高梯子(たかばしご)のてっぺんに吊るした、火事や災害の際に鳴らす「半鐘(はんしょう)」を、地元の消防団のメンバーだかが小槌(こづち)で鳴らす姿。
その高梯子越しに見る足元や風景は、舗装された真っ直ぐで平らな道路が伸びている。コンクリの電柱は点在するも、周囲はきれいな畝(うね・畑の盛り土)の列がつづき、山も見えて、瓦屋根の家屋が点在するも茅葺き屋根が主流である田舎町。
村人たちが指差す暗雲の上から竜巻が出現し、白い自転車で田舎の駐在さんも駆けつける……。
そんなひなびた(田舎めいた)風景から物語はスタートすることで、ディスカバー・ジャパン(古い!・笑・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060903/p1)な風情(ふぜい)も出せている。
一方で竜巻というと本作のファン的には、#2「光るペンダントの秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090510/p1)に登場した竜巻そのものが怪獣である竜巻怪獣スパイラルのすわ再来か!? と、1話完結の番組の性格上も、サブタイトルの登場怪獣表記からも、そんなことがあるハズもないのに、ドーしても直感的に連想もされてしまうが(笑)。
巻頭早々、竜巻は回転を徐々に止めるや、茅葺き屋根の屋敷や電柱との対比で巨大感も出しつつ、怪獣であるその正体を現す。
その腹囲の360度から刃のような羽根をヘリコプターのように高速で回転させて、竜巻を起こして空を飛んでいたとおぼしきソレを、体内にひっこめて……。
全身の過半は薄いグレーの体毛で覆われるも、その下半身はボリュームたっぷり三角体型。太くて長い地に着かんばかりの両剛腕の先には青黒い巨大なハサミ。
小さな牙も生えた開いた赤い口と赤い目玉に、ヨコに飛び出た大きな耳たぶは悪魔っぽい。しかし、無骨な黒い三日月状の飾りのようなツノが頭頂にあっても、首まわりの黄色いエリとどこかブルドッグ犬のような顔つきが、微量の愛嬌も醸すようだ。
筆者の個人的な好みとしては、特殊能力自体もさりながら、ルックス的にもけっこうスキなタイプの怪獣だ。
田舎の風景美術と山村の人々の作画も、線は少ないがナチュラルな立ちポーズの上手さと動きがあって、なかなかよい。
我らが地球防衛軍・極東ゾーンの科学警備隊が駆けつけるよりも前に、ウルトラマンが早くも出現! 激闘の末、怪獣にトドメは刺せないが撃退には成功する。
もちろんよほどの幼児でなければ、番組の予告編やサブタイトルからも、このウルトラマンが偽者であることは想像できることではある。
偽者ネタも変身ヒーローもの以前の時代劇ヒーローの時代からあるネタかと思われる。しかし、演じる役者が異なったり、ヒーローものであればドコかに本物とは異なるバレバレなデザインの異同があったりするものだが、だれの指示あるいは非指示かは不明なるも、本話に登場する偽者は珍しく本物のウルトラマンとの差異がない。
これはそれまでのウルトラシリーズに登場したウルトラマンの偽者たちの系譜の中でも珍しい。直前作『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の奇しくも本話の脚本家・若槻文三が担当した#38「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」、および後編#39「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」(脚本・田口成光)に登場した、レオの弟・アストラに化けた偽アストラの前例があるくらいだろう。
ただしウルトラマンの声のみ差別化か、いつもの伊武雅之(現・伊武雅刀(いぶ・まさとう))氏のバンク(?)掛け声には似せているものの、ちょっと野太くヤボったくて、異なる声優によるもののように思えるが。
ウルトラマン出現の報告を地球防衛軍・極東ゾーン基地の司令室で聞いた、本物のウルトラマンことヒカリ隊員は困惑する。
しかし、ウルトラの星・U40(フォーティ)の別のウルトラ戦士たち、
「ロトか、エレクだろう。きっと……。そうだ」
と、ひとり当然の連想をしてナットクするあたりは、#35「盗まれた怪獣収容星(後編)」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091227/p1)でもエレクとロトが地球上に出現した前歴もあるのだし、作品の世界観設定を活かしていてよい感じだ。
そこに早くも例の竜巻が再出現!
科学警備隊は、小型戦闘機バーディとベータミーで出撃する。しばしの哨戒飛行のあと、竜巻に遭遇して墜落。
そしてウルトラマンに変身しようとしたヒカリの眼の前に、ウルトラマンが空から出現してしまう!
「ロトか? エレクか? いやちがう!」
今度こそ眼の前に現れたウルトラマンが、いつものウルトラマンと同じ姿をしている現実を否定しきれなくなり、困惑を深めて、しかもそのことを実証的に他の隊員たちに伝えることもできないヒカリ隊員の内心の孤立をも描いていく。
このへんはドラマ的にも面白いが、極東ゾーン・科学警備隊司令室の科学警備隊の面々から、バーディとベータミーの飛行シーンの一連にも注目してみたい。
本作のシリーズ後期としては珍しく、非常に作画レベルが高いのだ。
線は多くなく、影もあまり付けていないのだが、人間キャラの何気ない立ち居姿といい、しかしチョットした動きといいある意味、本作初期編のタツノコプロ離脱組スタッフによる作画並に、やわらかい線でありながらも動くときには顔の表情も含めて身体がメリハリよく動いている。
ロング(遠景)のシーンはそれほどのクオリティでもない作画のシーンも点在するけれども。
バーディとベータミの飛行シーンや岩場の低空飛行シーン、竜巻に巻き込まれるシーンなど、バーディのスクランブル発進こそ見覚えあるバンクセル画であるものの、浮遊感とスピード感の緩急も付けつつよく動かしてみせている。
本作においては、エンディングテロップの「作画」者の筆頭に位置している御仁が、いわゆる「作画監督」の任にある者だと思われるけど(?)、本話における「作画監督」は青鉢芳信氏。
筆者としては、『機動戦士ガンダム』初作(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の各話の作画監督や、その劇場アニメ版の「原画」担当者として記憶にあった御仁だ。
本作初期編のタツノコアニメっぽい動きをよく再現しているので「もしや」と思い、経歴を調べてみたのだけど、東映動画系のロボットアニメには参加していても、タツノコアニメには参加していなかった(笑)。
もちろん登場キャラの演技付けは、絵コンテ担当者の裁量・指示の方が大きいとも思う。本話の絵コンテ担当者は、#37「ウルトラの星U40の危機!! ウルトリアの謎?」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100118/p1)も担当した藤岡正宣氏。この方もワリと近年まで活躍されてきたベテランであるようだ。
かたやウルトラマン(偽)と怪獣のバトルシーンは、他の回と同様、本話においてもアップシーンを除けば外注に出しているのか、よく動いてはいるけどデッサン的にも作画はあんまりよくはない。ちなみに偽ウルトラマンの空に帰還するシーンは2回戦ともに、本作で初期編からたまに使用されているバンクセル画2種。
偽ウルトラマンをあやつるのは、地獄の星と呼ばれる惑星ギロから来たという細身長身のギロ星人2体。またまたマニア・怪獣博士の悪いクセで、『ウルトラマンレオ』#9「宇宙にかける友情の橋」に登場した星獣ギロを条件反射的に思い出すけど、当時のスタッフのルーズさによる単なる偶然にすぎないのだろう(笑)。
予告編でも説明されていた、地底2000メートルに広大な空洞のアジトを築き、円盤と偽ウルトラマンを駐留させているという、子供が喜びそうな魅惑的で壮大な設定のイメージはよし。ただし、地底空洞自体が大胆に映像化されるワケではないし、バトルの舞台になるワケでもないのは残念だが。
とはいえ、ギロ星人も自身たちの地球占領計画に、資材を提供されるかたちでヘラー軍団のロイガー司令に頭を下げざるをえない中間管理職的なツラい立場にすぎない。地球の3分の1を支配下におさめることを、頭首のヘラー自身に確約してもらうことを申し出るものの、マトモに取り合ってもらえずに仕方なく侵攻作戦をはじめるにすぎない存在であることを描くことで、本話も最終第4クールの一編であり、終盤の宿敵・ヘラー軍団の強大さを間接的に描いてみせている。
深い地底から怪獣に都心の地下鉄を破壊させるという、『ウルトラマンエース』(72年)#5「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)でも観たような描写を契機に――地下鉄車内の乗客たちの作画&急ブレーキ時の動きもまたよい――、地震やハイウェイの高架なども倒壊させほうだいの都市破壊描写の開始をもって、30分前半のAパートは終了する。
Bパートはバトルがメイン。
三度出現した偽ウルトラマンがまたも怪獣を撃退し、心を許した巨大戦闘艦ウルトリアを駆る科学警備隊の面々に対して、ついに偽ウルトラマンは牙をむく!
上空に飛ぶやウルトリアの背後に陣取った偽ウルトラマンはパンチやキックに体当たりをかます!
艦橋の前方に偽ウルトラマンの顔のドアップが出現するシーンは、万時窮すで今にもウルトリアが撃墜されそうでチョット怖い。
ゴンドウキャップ(隊長)の許可を得て、ひとりウルトリア艦内からバーディで出撃したヒカリ隊員も撃墜されて、本物のウルトラマンに変身!
ウルトラマン対偽ウルトラマンとの激闘もついに開始された!
突きや蹴りなど、互角の戦いをくりひろげる。果ては、怪獣映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年)以来の同格キャラ同士の対決のお約束、必殺光線同士の押したり引いたりの映像!
必殺ワザ・プラニウム光線同士をブツけ合うも、最後には正義の側が勝つ!
――しかし、本物ウルトラマンの最後の一押しの掛け声に、偽ウルトラマンの声もカブっていることによって(?)、録音監督(アフレコ現場で声優にディレクションする監督)が一瞬のフェイク演出を試みようとしたようにも個人的には思えたのだが、この筆者の見解の正否はいかに?――
次は残る怪獣との激闘!
その次に現れたギロ星人の円盤に対しては、エネルギーを使い果たしたウルトラマンに代わって、巨大戦闘艦ウルトリアの主砲攻撃!
と三段構えの戦闘をもって、科学警備隊の面々によるめでたしめでたしの短いシークエンスの図で、本話も幕を閉じるのであった。
Bパートの作画は、Aパートに比すると豪快でもイマイチで雑なものだったけど、楽しく観られる娯楽活劇編だったとは思う。
◎ゴンドウキャップ「(不機嫌に)ウルトラマン、ウルトラマン、ウルトラマンか! まるで世話になりっぱなしだな! (イヤミや皮肉っぽく語尾上がりで)年賀状も暑中見舞いも忘れるな!」
#35「盗まれた怪獣収容星(後編)」につづき、ゴンドウのウルトラマンに頼ることが当たり前となりかねない隊員たちの言動に対する疑問・不快・戒めが点描される。
本話のテーマには無関係ではあるものの、脚本家が#35の点描を受けて記述した係り結び描写ではないかとも思われる。
そして、このゴンドウの心情は、本作の最終章4部作のテーマとしても見事に結実するのだ。
◎本物のウルトラマンがラストに空へと帰還するシーンの掛け声。
バンク音声ではなく伊武雅之本人による新録音であろうけど、妙にキバっていて野太くて、ある意味で偽ウルトラマンっぽい(笑)。
#ザ・ウルトラマン #ザウルトラマン #ウルトラマンジョーニアス #誰もが知ってるウルトラの戦士