思ひ出したこと、忘れさうなこと

2013-02-02

[]ラリー・クラーク『タルサ』は1971年に何部出版されたか

飯沢耕太郎『Photographers』(作品社、1996)のラリー・クラークの章を読んでゐたら、こんなことが書いてあつた:

そんな時、少部数で自費出版され、写真家ラリー・クラークを一躍ヒッピー・カルチャーの旗手に祭りあげてしまったのが、彼の最初の写真集Tulsaだった。

※初出は deja-vu 11号(1993)

Larry ClarkのTulsaはLustrum Pressから発行されたのだけど、費用を自分で持つたとすると自費も間違ひではなからう。しかし、少部数とは何部なんだ。百万部に比べれば一万部は少部数で、百部に比べれば大部数だ。かう云ふ表現には苛々する。

他に誰か言つてゐないか探すと、美術手帖1996年8月号「特集ラリークラーク」中の生井英考の文章にあつた:

『タルサ』は彼の友人だったラルフ・ギブスンが設立したラストラム・プレス社から一九七一年に二千部足らずだけ出版されて評判をよんだが、(後略)

二千部足らずなら千五百部以上、二千部未満と思へばいいのか。

ところが、Photography between Covers(Light Impressions, 1979)にあるインタビューにおいて、クラークはHow many copies of Tulsa were printed ?といふ質問にかう答へてゐるのである:

There's a 10% law in California, which means they can be 10 % over or 10% under, so, of course, they're always 10% under, so there was 2700 copies, and that's all.

二千七百部、つまり二千部足らずではなくて「三千部足らず」なのだつた。

同じページでクラークは、出版の費用はDanny Seymourが出してくれたと言つてゐる。つまり『タルサ』と同時にラストラム・プレスから出版されたシーモアのA Loud Songと二冊分を出したと。同書中のラルフ・ギブソンのインタビューにも同じことが書いてある。友達が負担してくれたのも自費の一種なのか。

2012-04-24

[]森山大道がまたもやcolorとついた本

森山大道はここ数年やたらと本を出してゐる。最新作がこれ。

ところが、そのタイトルなら、かつて蒼穹舎から出た本にある、二冊も。

  • 『Color』(1993)
  • 『Color2』(1999)

その後、パワーショベルからは、こんなものを。

で、最近にはスーパーラボからも。

べつに批判することでもないが、これで平気なのだらうか。平気なんだらうな。

しかし、とくに最初の蒼穹舎は気分がよくないんぢやないかな、と思つたりもする。あれは、一般的なカラー写真とはちよつと違つてゐた。だからこそCOLORとわざわざタイトルを付けたのだらう。日頃はモノクロを中心に撮つてゐる人がカラー写真だから、とは違ふ。

こんな本もあつた:「森山大道の新刊は操上和美と同じタイトル」。本のタイトルに頓着しない人なのだ。

2011-04-30

[]ジョン・ゴセジの著作一覧

John Gossage が、今までにどんな本(または類似した形態の出版物)を出してきたのか、ひと目でわかる記事がweb上で探した限り見当らない。で、一覧にしてみた。これが全てではなく、特にグループ展のカタログなどはまだある。(随時追加)

(単独の著作、展覧会カタログ)

  • Better Neiborhoods of Greater Washington (The Corcoran Gallery of Art, 1976)
  • The Pond (Aperture, 1985)
  • LAMF (1987)
  • Stadt des Schwarz (Loosestrife Editions, 1987)
  • There and Gone (Nazraeli Press, 1997)
  • The Things that Animals Care about, and. (Nazraeli Press, 1998)
  • Empire (Nazraeli Press, 2000)
  • Hey Fuckface (Nazraeli Press, 2000)
  • Four American Photographs (Nazraeli Press, 2000)
  • The Romance Industry (Nazraeli Press, 2002)
  • Dance Card Vol.2 (Onestar Press, 2003)
  • Berlin in the Time of the Wall (Loosestrife Editions, 2004)
  • 13 Ways to Miss a Train (Linea di Confine, 2004)
  • Putting Back the Wall (Loosestrife Editions, 2007)
  • Secrets of Real Estate (The Sheldon Art Galleries, 2008)
  • A Few Years with a Telecaster (Harper's Books, 2009)
  • Here (Rochester Art Center, 2010)
  • The Thirty Two Inch Ruler (Steidl, 2010)
  • The Pond - 2nd edition (Aperture, 2010)
  • The Absolute Truth (スーパーラボ, 2011)
  • Eva's Book (スーパーラボ, 2011)
  • The Code (Harper's Books, 2012)
  • She Called Me by Name (Loosestrife Editions, 2012)
  • The Actor (Loosestrife Editions, 2012)
  • Who Do You Love (Fraenkel Gallery, 2014)

(共著)

  • Terri Weifenbach and John Gossage : Snake Eyes (Loosestrife Editions, 2002)
  • Schiermonnikoog / Eiland Insel Island Eilaun (Noorderlicht, 2005)
  • Obvious & Ordinary : America 2006 (Rocket Gallery, 2007) ※Martin Parr との共著
  • One Day: Ten Photographers (Kehrer Verlag Heidelberg, 2011)
  • John Gossage & Alec Soth : The Auckland Project (Radius Books, 2011)

(他、グループ展カタログ)

  • 現代の写真 失われた風景 (横浜美術館, 1997)
  • Identificazione di un Paesaggio (Silvana Editoriale, 2000)

2009-07-13

[]森山大道の新刊は操上和美と同じタイトル

森山大道 NORTHERN

森山大道 NORTHERN

Northernといふ題名ならば、數年前の操上和美の寫眞集にあるではないか。しかも同じ北海道。

(森山には別に『北海道』といふ本もあつて、これがマイケル・ケンナと同じなのは仕方がない)

知つた上か知らないのか、つまらないことだと思ふが、いづれにせよ本人は全く氣にしないのだらう。

2009-04-27

[]假名遣ひについてよくある誤解

平成山人の評論隨筆(自己紹介)より

今一つの拘りは日本語の傳統表記。 親しい友人らからは、「お前のパソコンは江戸時代製か」 とか、「平賀源内が作つたワープロソフトを使つてゐるのか」 なんぞと突つ込みも入るが、(後略)

かういふ反應は珍しくない。平成山人さんは眞珠灣攻撃の半年前の生れださうで御友人もそれに近いか。それでそんなものかと言ふと、そんなものなのである。ちなみに、たとへ昭和一桁生れだつて何を言ひ出すか分つたものではない。私は昭和三年生れの父に、お前の書き方は變だと詰られたことがある。さう言ふ父の書き方は「現代假名遣」にも據つてゐなかつた。

それはともかく、新潮文庫が岩波文庫が、何より學校で使はれる國語教科書が、假名遣ひを「現代仮名遣い」に書き換へてしまつてゐるのだから、正しい假名遣ひを見て「江戸時代か」は普通の反應なのである。知らず知らずのうちに鴎外や芥川の本さへも最初からさうやつて出されてゐたと錯覺させられてゐるのである。

私が高校一年のときに使つた古文の教科書には、最初に「古文の特徴は歴史的假名遣ひで書かれてゐることである」とあつた。古文なら何でも歴史的假名遣ひで書かれたといふわけではないし、古文でない文だつていくらでも歴史的假名遣ひで書かれてゐる。「特徴」だなんて言へるのか。

執筆者は文部省の差し金で意圖的に嘘をついたのか。いや、專門家さへも、子供相手で氣が緩めば(?)、うつかりこんなことを書いてしまふくらゐに強力な錯覺なのだらう。