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黒歴史になる予定の何か

  雨のち現想 - RainyPhantasm
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2010-03-16

#15 Cheer up

「……は? はああああぁぁぁ? いやコレおかしいでしょ、火って、ウサギが、火を吹くって、え? いや、え?」

 火を吹く二匹の白ウサギを指差して、緋露は焦りをむき出しに苦情を述べる。

「落ち着いてください、水端さん。ここでは何が起きても、不思議じゃないんですから」

「楽しめない心境も分かるけど、落ち着くべきね、まずは」

 落ち着けとアドバイスする二人と、静かに緋露の背中をさする藍霞。

 その藍霞の対応はちょいと違うんじゃないかと思いつつ、緋露は「すー、はー、すー、はー」と深呼吸する。

「どうどう? 落ち着いた落ち着いた?」

「……まあ、一応は」

 無邪気に覗き込んでくる顔に、緋露は答える。

「それでは、早速捕まえましょうか」

 ぱん、と手を叩いて、霙はそう提案した。反対意見は特に出ず、彼女の言う通り早速ウサギ捕獲大会が始まるかと思われた……が、ベンチを出たところで雫が「あ、ちょっと待って」と口を開けた。

「どしたの? また頭痛?」

「ううん、そうじゃなくて。二手に分かれて、どっちのウサギを狙うかの分担を決めない? そっちの方が効率がいいと思うのよ」

「確かにそーだね。うん、あたしは賛成!」

「俺はどっちでもいいけど」

「私も異存はありません……が、チーム分けはどうしましょうか?」

 満場一致で決定した『二手に分かれて二兎を追おうぜ作戦』。……と同時に浮上した問題に、その満場は一瞬静まる。

「……あー、何でもいいんじゃないか?」

「同じく私も。どうする? グーパーで決める?」

「あたしは、アミダくじがいいと思うなっ」

 このまま、チーム分けの方法についての議論になるのだろう。流れを汲んで、緋露はそう思った。

 ところが、その予想を裏切る言葉が、霙の口から出るのだった。


「何でもいいのなら、私は水端さんと組むことにしますね」


 球場が、静寂に包まれる。藍霞も、雫も、緋露も、ぽかん、と口を開けることしか出来なかった。今何が起こったのかを考えるのに精一杯で、反対意見も、賛成意見も考えつかない。

「ささ、早く始めましょう、水端さん」

「え、あ、ああ……」

 微笑みながら緋露の腕をとり、現在セカンドベースの奥でぴょんぴょん跳ねているウサギへ向かい、すたすたと歩き始める霙。突然のことに緋露は足をもつれさせつつ、それに着いて行く。

 残された二人はゆっくりと口を閉じてから、互いの顔を見合わせ、

「どうしちゃったんだろ、霙は」

「さあ? いつになく積極的な意見だった気がするけど……恋かしらね?」

「霙が? 緋露くんに? あはは、まっさかー」

「そうよね、まだ会ったばかりじゃない。まさかね、ふふふふ」

 軽く笑い声をあげてから、霙たちの向かわなかった方のウサギを捕まえに、二人は走り出す。

 藍霞が真面目な顔で急に立ち止まったのは、それからすぐの事だった。

「いや、でも、採掘の喜びと楽しみと血と汗と涙が恋愛感情に変わるというツルハシ効果があれば……」

「変なコト言ってないで、早く行くわよ藍霞」

 そうたしなめると、藍霞は素直に「はーい!」と返事をして、ダッシュでウサギを捕まえに行く。それに反応して一瞬びくっ、として逃げ出すウサギを見ながら、雫は呟く。

「……吊り橋効果、か。でもこの状況なら、有り得ないコトじゃ無いわよね……」

 そして真剣な面持ちで、緋露を連れて歩く霙を遠くに見つめるのだった。


 一方の二人は、雫からの視線に気付くことなく、歩きながら会話を交わす。

「どどどどうしたんだ霧霜?」

「どうしたって、何がですか?」

 腕を掴まれたまま上半身を先行させて歩く緋露の質問が持つベクトルを、霙は振り向いて問い返す。

 ちなみに、進む速度を合わせられているのか、ウサギまでの距離は殆ど変化していない。

「俺を指名した理由は何だ?」

「それは、その……と、特に深い意味はないですよ? ただ、その、お話があってですね……」

 語尾に近づくごとに、段々と小さくなる声量。それを最後までかろうじて聞き取った緋露は、その話とやらを聞く前に一つだけ、言いたいことを主張する。

「とりあえず、腕、離してくれ」

「え、あ、ああああっ、すいません!」

 霙は頬を赤らめて、緋露の腕を掴んでいた手を急いで離す。その仕草に可愛らしさを感じつつ、緋露は「それで、話って何?」と、本題を促す。

 その台詞だけ聞けば、まるで告白を受けるときみたいだ。自分で言ったことに対して緋露は心の中でそう思って、ある事に気付く。――まさか、告白?

 いやいやそれは無い落ち着け落ち着け高鳴るな心臓。と、普通の青春を送る学生が味わうものと同じようなドキドキを止めようと緋露が頑張っているとは露知らず、すーっと霙は息を吸って、今度は緋露の右手を両手で握り、笑顔で言った。


「元気出してください、水端さんっ」


「……あれ?」

 完全なる妄想によって予測されていたものとは違う言葉に、拍子抜けする緋露。

「え……あ、はい。そうです。落ち込んでいる水端さんを励ましたいと思って……、えと、何か問題ありました、……でしょうか?」

 緋露の機嫌を損ねたと思ったのか、霙はばつの悪そうな顔をして、上目遣いで尋ねる。

「い、いや、それはいいんだけど。……やっぱり、隠しても無駄か」

 雫に言われたときは慌てて否定したが、バレバレのようでは仕方ない。そう諦めて、緋露はその事実を肯定した。

「何故落ち込んでいるのかは分かりませんが……、とにかく、です。一緒に頑張りましょう」

「ああ。頑張ろう」

 少しだけ、スッキリした気持ちで緋露は答える。

 非現実を喜べない自分のことが納得出来ないなんて、今は関係ない。

 ここでウダウダしていてもしょうがない。状況は決して変わらないのだ。だから、元気を出して頑張ろう。早くウサギを捕まえよう。ただその前に一つだけ、緋露は言いたいことを主張する。

「とりあえず、手、離してくれ」

「え、あ、ああああっ、すいません!」



 そんなやり取りから、少なくとも十五分は経っただろう。

「くそっ、あのウサギ、素早い……」

「そうですね……、全く追いつけません」

 全く詰まらない距離に、緋露も霙も少しの苛立ちを覚え始める。

 時折緋露たちが立ち止まって休憩すれば、ウサギもそれを嘲笑うかのように立ち止まる。更にウサギの気分次第では、その隙に火まで吹いてくる。そしてそれを二人は慌てて避ける。

「どうします? このままではずっと捕まえられませんよ」

 追いかけていればそろそろ捕まるだろう。そんな楽観的な考え方はそろそろ捨てるのが英断だということで、新たな捕獲方法の提案を霙は緋露に求めた。

「好物で誘ってみるとか? 霧霜、ニンジン持ってるか?」

 しかし、相変わらずに平凡な上、実現不可能な可能性大の考えを述べてしまう緋露。

「私、就寝時にニンジンを携帯する女性はいないと思うんですよ」

「だよなあ」

「ちなみに、ニンジンが嫌いなウサギって結構いるらしいですよ」

「それ本当か?」

「……えーと、実は、一つの情報ソースのみを頼ったものなので、……信憑性については保証出来ません」

 と、ムダ話をしていたら、ウサギが急停止。振り返って火を吹いてきた。

「うお危なっ!」

 声を上げながら、緋露は慌てて右に、霙は比較的余裕そうに左に避ける。

 火を吹き終えると、ウサギは再び走り出す。それをまた慌てて追いかける。

「で、どうする? このままだと埒が明かない」

 危機感を覚えながら緋露が持ちかけてきた相談に、霙は不敵な笑みを浮かべて答える。

「……大丈夫です。見つかりました」

「見つかった? 何が?」

「あのウサギの、捕まえ方ですよ」


 一方、雫たちの追うウサギの行動パターンも、ほぼ同じものだ。

「あーもう、あのウサギっ! 絶対あたし達のことナメてるよーっ!」

「私も、流石にイライラしてきたわ……」

 二人が立ち止まれば、ウサギも立ち止まり、更に気分次第で火を吹く。

 雫たちの動きが遅ければ、余裕そうにぴょんぴょん飛び跳ね、動きが速ければ、追いつけないでしょと言うように素早く走る。

「藍霞、どうする? このままじゃいつまでも捕まりそうにないわよ」

 緋露たちと同じように危機感を覚えた雫が、捕獲方法の変更を発議する。

「そういえばあたし、聞いたことがあるんだけどさ――」

「なに?」

「――ウサギって、赤外線が見えるらしいよ!」

「でも、電気機器のリモコンも携帯電話も持ってないわよ」

「うん、あたしも」

 赤外線大作戦、必要機器の不足により、あっさりと廃案。

「あ、でも……」

 藍霞が希望をちらつかせる一言を放つ。

「何か役に立ちそうなもの、持ってるの?」

「そこに、サードベースが一つあるよ」

 そりゃ野球場だもの。というツッコミは飲み込んで「それをどう使うの?」という質問を代わりに導き出す雫。

「どうって……投げるに決まってるじゃーん!」

 藍霞はそう言って、たったったと三塁へ向かい、ベースを回収。すかさずウサギへと思い切り投げつけた。

 綺麗な軌跡を描きながら滑空する真っ白なサードベースは、真っ白なウサギへと迷うことなく進んで行く。

「行っけええぇぇぇぇぇっ!」

 藍霞が叫んだ瞬間。ぽふ、という音と共に、ウサギに衝突するサードベース。ウサギは、勢いで転んでしまう。

「よしっ! 今だ雫っ!」

 ガッツポーズを決める藍霞。雫は指示通り、ウサギに飛びついて――


「あのウサギ、火を吹く時には一度止まるんです」

「なるほど、その習性を上手く使えばいいのか」

 霙の解説に、緋露は納得する。思い返してみれば確かに、あのウサギは火を吹くときに止まっている。

 そもそもとして、こちらを向いて後ろ走りをしながら火を吹く事がウサギに可能なのかを考えれば、習性というよりは当然のことだと言える。

「ええ、そうです。二手に分かれて、ウサギが火を吹いている隙に、後ろから捕獲するのです」

「じゃあ、捕獲するのは霧霜に任せて、俺は囮になろう……ところで、どうやって火を吹かせればいいんだ?」

「……火を吹かせるのは、私がやります。だから、水端さんが捕獲役を務めてください」

 緋露が進んで危険な役を選んだのにも関わらず、霙はその役目を自分の物とする。その理由が緋露には気になった。力不足という訳でもないだろう。

「どうして?」

 だから当然、その理由を問う言葉が口をつく。

「……その……駄目、ですか?」

「いや、危険じゃないか」

 真面目な顔で諭す緋露に、霙はふふっと笑う。

「お気遣いありがとうございます。……でも、火を吹かせる方法は、上手く言葉で説明出来ないので……その、私がやろうかと」

「あー、分かった。無茶はするなよ?」

「ハイ!」

 霙が元気よく返事をした途端に、ウサギが火を吹いた。止まってないで早く走れ、とでも言いたいのだろう。


 それから霙の指示通りの場所で、指示通りに目を瞑り、緋露はウサギが火を吹くのを待つ。必ず所定の場所で火を吹かせますから、という絶対的な自信を孕んだ霙の言葉を信じて。

 間もなくして、霙の言葉が聞こえた。

「さん!」

 ウサギが走る音が聞こえる。

「にい!」

 霙が走る音も聞こえる。

「いち!」

 一瞬、涼しくなって。

「今です!」

 目を開く。火を吹くウサギはすぐそこに。

 緋露は作戦通り、ウサギに飛びついて――


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rekanihurekanihu 2010/03/17 18:02 更新乙。フラグ立ったのかと思ったが若干違うみたいだね。
今回は伏線の回だったのか知らんが、今んとこどうにも不明点が多いな。次回に期待。引き続き頑張ってくれ。俺のために←

katsubikatsubi 2010/03/17 20:19 フラグが立ったように見せかけて……という展開も考えたけど、やめておいた。
不明点そんなに多いっけ。今回は「火を吹かせる方法」くらいしかないような。
とりあえず頑張ります。はい。

rekanihurekanihu 2010/03/18 21:01 不明点が多いのは前回までのも加えるからだと思う。全部回収できれば君は本物だ。というかできなきゃどうにもならんけど。

katsubikatsubi 2010/03/18 21:29 なるほど前回からか。変な名前出てきたもんね。

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