漆黒のシャルノス

漆黒のシャルノス -What a beautiful tomorrow-

漆黒のシャルノス -What a beautiful tomorrow-

今ではライアーソフトのメインライン『蒼天のセレナリア』『赫炎のインガノック』に続く桜井光シナリオの今作です。率直に言って、私には少し合わなかったですね。
このスチームパンクを模したロンドンという舞台も、「史実」の人々を模したキャラクターたちも、クトゥルーを少し混ぜ込んだストーリーも、私は決して嫌いではなかったですし、むしろ設定厨の一人として大好物だと言ってもいいくらいだと思うのですが*1、それらを総合したものは、ちょっと違うかなって感じですね。
このゲームの登場人物にハインツ・ヘーガーというドイツ人がいるのですが、このキャラクターが私の『漆黒のシャルノス』に対する感想を象徴していると言ってもいいでしょう。彼は物語の冒頭から主要キャラクターと絡みつつ、思わせぶりな態度を取り続けるのですが、結果として全く物語の重要部分に絡んでこないんですね。
総じてコレです。偏差機関もシャーロック・ホームズナイアルラトホテップも、全て物語の根幹と大して関わってこない。世界観のためのギミックという意見もあるでしょうが、主人公からしアガサ・クリスティーの本名であるのに、それが物語に関係することが一度もないというのは、私には設定に弄している印象が強かったです。
定型文の利用に一工夫入れて欲しかったというのもありますね。インガノックのときは特撮もののお約束みたいで悪くはないと思いましたが、今回のような使い方をするなら、画面が毎回少しづつ変化するとか見る側にサービスしてくれないと、テキストを水増ししてるようにしか感じられない。
ゲームパートはいつも通りの嘘屋って感じですが、セレナリアのゲームパートから娯楽の面であまり進歩が見られないのは減点かな。*2まあ、セーブデータ落ちてるからいいですけどね。
今回は設定に引きずられた感もありますが、ファンタジーを構築する力量はさすがですし、ある意味では慣れてきたということかなとも思うので、次に期待ということで。以上、感想でした。

*1:ラヴクラフトとダーレスでカップルとかね。

*2:最初の予定ではマインスイーパーのようなゲームを志向したのではないかと予想していたりはするのですが。